第25話 王都


「もうすぐ王都か、どんなとこかな?」

パカラパカラとルナが気分のいい音を出している。

 ワシ達は今王都に向かって馬車を走らせている。

「ヤオキ地龍がいるけど」

「倒すよ、ちょっと待ってて」

 ワシは刀を手に地龍の首を切り上げアイテムボックスに入れるとまた荷馬車に乗る。

「相変わらず見事ですね」

「まぁね」

 ここまで盗賊も出てないし魔物ばかりで順調に王都に向かっている。

 王都に着いたら馬車を改良して、少し休もう。


 今回は何事もなく王都に着いた。

 中に入るとすごい人だかりで馬車が動けない。ようやく宿に馬車を預け、街を散策する。

「人酔いしそうじゃ」 

「多いですからね」   

「トパははぐれるなよ?」

「大丈夫」

 カフェに入りようやく一息つく。

「はぁ、生き返るようじゃ」

「こんなに混んでるとは」

 ダイヤも混んでるのは嫌らしい。

「うぃー」

 トパが一番しんどかったな。

 トパは肩車でもしてやるか。

「マリンは平気そうだね」

「王都には何回か来てますから」

「ワシは慣れんな、宿で休んでおるから買い物でもしてきたらどうだ?」

「はぁーい!」

 元気よく四人とも出て行った。

 さてと、ワシは宿で休もうかのう。


 宿に戻って冷えたエールを飲む、

「くぅー、美味いのぉ」


「ヤオキ!大変なんだ」

「どうしたトパ?」

「とにかく来て」

 ワシはトパに連れられる様にしてその場に向かった。

「だから!」

 ダイヤが大声を上げている。

「どうしたのじゃ」

「ヤオキー、こいつおかしいって!」

「なにごとじゃ?」

「お前か!私の125番目の妻に召し抱えようとしている女に手を出す不届者は!」

「125人目?124人もおったらいいじゃろ?」

「英雄色を好むだ!私はこの国で一番偉い王子なのだ!」

「ふーん。で?ワシのダイヤに手を出そうと?」

「お、王子だぞ!下々のものは声を掛けてもらえるだけで光栄なのだぞ」

「ワシは光栄ではないのでご遠慮くださいなのじゃ」

 金ピカの洋服を身に纏っているコイツはバカ王子じゃな。

 手袋が投げられる!

「決闘だ!ギルドを借りるぞ」

「は、はい」

「勝てると思えんがのう」 

「怖気付いても今更だ!」

 ギルドについて行くと観客が大勢いるではないか。

「賭けはやっとるのかのう?」

「やってますぜ旦那」

「じゃあワシが勝つに王金貨10枚で」

「大穴も大穴ですぜ?」

「ワシが負けるとでも?」

「相手が悪いんでさぁ」

「まぁ、いい、ワシに賭けるわい」

「いいんですね?」

「おう!」

 木札をもらう。

 女子達もワシに賭ける様じゃ。これじゃ負けられんな。


「ふん!お前がどんな奴でもこの国最強の団長には勝てまい!」

「王子、またですか?」

「五月蝿い、お前は王子に逆らうのか?」

「分かりました」


 闘技場の様な訓練場で両者向かい合う。

「お主も難儀じゃのう」

「私はこの国最強だ。今のうちに負けを認めたらいかがかな?」

「じゃあワシに負けたら土下座でもしてもらおうかのぉ」

「ぐぬぬ。その言葉悔やむなよ」

 相手が剣を抜いたのでワシも刀を抜く。

「どおりゃあ」

「当たらぬよ」

「どうかな」

 力で上段から横凪に変化させた。

「おぉ。すごい技じゃのう」

「おぬしもこれを避けるとはな」

「じゃが力任せで勝てる相手ではないぞ?」

「そのようだ」

「どうりゃ!」

「ふん」

“キンッ”と、言う音とともに二人とも後ろへ下がる。

「やるのぉ」

「お前こそ」

「おららららら」

「あらよっと」

 突きの連続を躱わすと、一閃。

「ぐっ!」

「おい!お前が負ければ我が負けてしまうではないか!」

「は、はい」

「難儀じゃのぉ。一思いに殺してやるか?」

「…降参する」

「なぜだ!」

「あやつは殺してきた数も違うでしょう。私には勝てる気がしません」

「くぅー、この役立たずが!忍びよ出てこい」

「「「は」」」

「コイツを殺せ」

「「「は」」」

「はぁ。難儀じゃて」

 三つの首が落ちる。

「な、な。な、なんでお前がそんな」

「まだやるかのぅ?お主の首を取ればいいのか?」

「わ、わかった!お前を雇おうではないか」

「願い下げじゃ!」

「な、なにを!この国の王子だぞ!」

「王子だからってなんでもやっていいわけあるはずなかろうが!ばかもん!」

 静かになる。

「王子なら王子らしく振る舞え!民の模範となる様にな」

「父上と同じことを言うな!私は偉いんだ!」

「それでもワシの勝ちじゃ!他に何かではあるかのぉ?」

「へ、平民の癖に王子に楯突くとどうなるか覚えておけ!帰るぞ!」


「旦那は凄いですねぇ。おかげで負けましたよ」

「いいから早く寄越せ」

「王金貨100枚です。たしかに」

「そんなもんか?」

「今回はかける人が少なかったんでさぁ。『黒の旅人』が相手ですからねぇ」

「知っておったのか?」

「もうここらでも有名ですぜ?」

「そうか」

「それではこれで」

 飄々とした男は消えるように去って行った。

「ヤオキ勝ったよ!」

「すごいです」

「儲かった」

「かっこよかったです」

「あはは、ならよかったのう」

「私のためにごめんなさい」

「なに、自分の女を守るのも男の務めじゃ」

 ダイヤが抱きついてくる。

 勝利のキスじゃ。

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