第13話 航海と後悔


 夜になると食堂でどんちゃん騒ぎが始まる。本当にこれでいいのかと思うほどに飲んでいるな。

「本当は飲めるんだろ?」

「じゃが飲まんもんは飲まんと言うておるじゃろ」

 アリアは昨日の説教が効いたのか大人しく食べている。

 酒を嗜むのは二十歳からで十分じゃて!

“ドン”と横揺れがした。

「船長いつもの亀だ!」

「砲撃準備!打てえー!」

“ドンドンドン”と大砲の音が聞こえる。

「亀撃退成功です」

「被害は」

「今の所無しです」

「おーしオメェらやるぞー!」

 何をやるんじゃ?

「亀はいつもここで体当たりしてくんだよ!んでもっかいくるから攻撃準備だ」

「ワシも外に行くアリアは待っとくんじゃ」

「えー。私も見たいなぁ」

「見るだけなら大丈夫だぞ!」

「なら見るだけじゃな」

 甲板に出ると大きな亀がいた。

「でけえじゃねえか!この船くらいじゃ」

「きゃー!」

「『ブレストキャノン』」

 魔法で攻撃すると嫌がって潜っていった。

「おお、砲弾が無駄にならなくて済むな」

「いや、そんな問題じゃない気がするんじゃが」

 デカすぎる亀にビックリしていると今度は左に浮上して来た。

「なんなんじゃ!『ブレストキャノン』」

“ドン”

と当たると亀はひっくり返りながら沈んでいった、

「おお。やっつけちまったか?」

「ブラフを立てるんじゃない!」

 また左に浮上してきたので今回は違う魔法を使う!

『サンダーボルト』

 痺れて動けなくなった亀は沈んでいった。

「なんなんじゃあの亀は!」

「さあな?」

 まぁ、スピードも出てるし追いつけないだろ。

 ようやくカメを撃退したことで静まり返った船の中ではどんちゃん騒ぎがまた始まっていた!

「俺たちはもう寝るぞ?」

「おう好きにしろ」

 ようやく一日が終わった。

 翌日も看板の上は騒がしく、大砲なさが鳴り響くが知ったこっちゃない。

「行かないの?」

「あいつらがどうにかするだろうさ」

 と思っていたら、

「旦那!助けてくだせえ」

「えぇー!ワシ客なんじゃけど」

「いいから早く」

 看板に出ると船長が怪我しているので回復魔法をかけると。

「ダイオウイカが来やがった!」

「焼けば美味いんじゃないか?」

「そんな可愛いもんじゃねえ」

「二日目でこれじゃ疲れが取れんのう」

「すまねぇな」

 ダイオウイカの足が数本から待っているので斬ってやると離れていくがまた近づいてくる。

「『ファイヤーキャノン』」

“シュウウウ”

といい匂いをさせて遠ざかっていく。

「よし!あのダイオウイカの撃退に成功したぞ!」


『オオオオオオオオオオオオオオオオ』


 へばりついてるダイオウイカの足を焼いて食ってみるが不味いな。

「よくそんなもの食う気になれるな」

「不味い!こりゃダメじゃな」

「そりゃそうだ、あははは」


 三日目ともなると外にいるのが普通になってしもた。こいつらは魔法が使えると知ると、いい様に使ってくるな。あとで請求するかのぅ。

「おーい、きてるぞー」

「金とるからなぁ」

「安く頼むぜ」

「『ファイヤーキャノン』」

 魔法が当たって逃げていく。

「流石旦那だ」

「媚び売っても変わらねーよ」

「チッ!」

「舌打ちしてんじゃねーよ。ワシ客じゃぞ!」

「船乗りに」

「ならん」

「チッ!」

 ほんとに人使いの荒い船長だ。三日目も終わりを迎え四日目、白の国にようやく到着する。長かった。やたらとこき使われててドッとつかれが出てきた。

「金貨千枚はもらうぞ!」

「高すぎる!800枚」

「いーや、弾薬なんかを考えたら妥当な値段だ」

「にしても金貨千枚は」

「払えないならガルシアに言うぞ」

「クッそれ卑怯な、ってガルシア様が載ってたじゃねーか」

「わたしは金貨10000枚でも安いと思ったけど」

「金貨千枚払いやす」

 交渉に時間かけやがって!弾数どんだけ残ってんじゃよ!こっちはこれからなんだぞ。

 ようやく船旅も終わり、船から降りると。

「ようやくきたさね」

「メルル!久しぶりじゃのぅ!」

「黒の魔女様お久しぶりでございます」

「アリアもごくろうさね」

「はい!」

「おーい!金貨千枚だ!受け取れ」

 船の上から俺めがけてなげつけてくるが、アイテムボックスにいれて、確かに!と言うと機嫌が悪そうにその場を去っていく。


「なにさね、あれ?」

「あぁ、まあ儲からなかったってだけの話じゃよ」

「それより行かなくていいの?」

「そうさね、行こうかね」

「で?結局はなにやるんじゃ?」

「魂の送りの儀さね。これは毎年やらなきゃリッチなんかの負のモンスターが湧いてくるさね」

 街に入ると白い建物ばかりだ。

 白い建物と海と空のコントラストが綺麗だ。街の中に入ると赤や黄色などの色鮮やかな服の人が多い。

「白の服を着れるのはメイフィだけさね」

「そうなんだ?他の人は?みんな色が違うけど」

「他の人はそれぞれ個性を出すために色んな色の服を着るさね。だからここは賑やかさね」

 はぁ、メイフィさんだけが特別なんだなぁ。

 大通りを抜けると大聖堂がある。

「さぁ着いたさね。メスティアも揃ってるさね」

 真ん中には大きなツボがあって中は見たくないな。中はわりかししっかりとした作りの大聖堂だ。

「メルルにアリア、今日はありがとう」

「いえ。若輩者ですがよろしくお願いします」

「うちのヤオキも一緒さね」

「ヤオキもご苦労様」

「はい!」

「メスティアさまもお久しぶりです」

「ヤオキか。解呪はできたみたいだね」

「はい!おかげさまで」

「あら本当さね」

「なんで気付かなかたっんじゃよ」

「あんたが言わないからさね」

「では始めましょうか」 

 四人がツボを一周回って呪文を唱え終えると魔力を、送り込む。

「ヤオキ、アリアを頼む」

「はい」

 アリアの元に行くと黒い怨念が纏わりついている。聖魔法の魔力をアリアに送り込むと離れていく。

「そのままさね」 

 いや、結構厳しいぞ!

 五人とも汗をかいて、怨念を壺まで入れ込んで浄化している。

 人の怨念とはこうも難しく儚いものなのか。解放された魂は天に昇っていく。

 ようやく儀式が終わりを迎えそうになった時に気を抜いたのかアリアの方に怨念の塊がへばりつく。

「アリア!この馬鹿タレが」

「ウオオオオォォォォ」

 聖の魔力を全放出じゃ。

 へばりついた怨念は剥がれていき浄化していく。アリアも無事だ。

 最後まで気を抜けない儀式じゃな!

「皆様お疲れ様でした」

 ようやく終わりを告げるメイフィ。

「ドッと疲れた」

「よくやったねあんたら」

「アリアが、気を抜くから」

「ごめんなさい」

「まぁ、初めてにしては上出来じゃないか」

「いえ。これからも精進していきます」

「わしはもう懲り懲りじゃ」


「終わったみたいだね」

 ライラが現れた。

「ほら報酬の金貨だよ」

 どんと置かれたそれにビックリした。

「一万でいいというたのに」

「アリアを守ってくれてありがとうさん」

「それももう懲り懲りじゃ」

「まぁ。ひどいですわ!」

 ポカポカと叩かれるがようやく全てが終わった気がする。

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