小学生の義妹が、何故か俺を支配しようとしてくるんだけど!?
天春 咲良@毎週日曜お休み
プロローグ 小学生のヒミツ
「お兄ちゃん♡」
かわいい笑顔を浮かべながら、にぱっと笑う小学3年生の義妹。
艶やかな黒髪をツインテールにし、肌は健康的に焼けていて、頬はきれいなもも色。
まつ毛はクルンと長く、目は大きくパッチリしている。
にぱっと笑うとそれはもう愛らしい……誰もがこの美少女に庇護欲を掻き立てられるだろう。
「あぁ、やっぱり京ちゃんってかわいいよね〜」
「京ちゃんが妹とか羨ましすぎるんだけど!!」
周りからは羨ましいや嫉妬といった視線で目を向けられるけど、俺は気が気じゃなかった。
本来であるなら俺だって嬉しいと思っていたはずさ。ずっと妹が欲しかったから、父親から義妹が出来ると聞いた時はそれはもうよろこんださ。
「俺の名前は、リツ。よろしくな京ちゃん!」
「は、はい。よろしくお願いします。おにいちゃん」
京(きょう)が家に来てからはそれはもう適度な距離を保ちながらたくさん構ったし、神様にも感謝したさ。
「えへへ、おにいちゃんだいすきです」
こんなかわいい子と兄妹にしてくれてありがとうってな!
……でも、ある日俺は見てはいけないものを見てしまったんだ。
それは京を呼びに部屋へ行った時のことだ。
「京!夕飯できたぞ!……あれ、寝てるのかな?」
部屋に向かって呼びかけたが、京は一向に出てこなかった。いつもなら、すぐ出てくるのに。
不思議に思った俺はドアに手をかけた。
すると、キィーっと簡単に開くドア。いつも京はドアに鍵をかけてるから、簡単に開くなんて珍しかった。
この時の俺は、かなりシスコン脳になっていたと思う。
嫌なことばかりが頭の中をよぎった。
「ま、まさか、京に何かあったんじゃ……京!」
俺は慌ててドアを開けた。京のことが心配だったからだ。
ドアを開けると、部屋は真っ暗で何も見えない。手探で部屋の明かりを探しつけると、ベットの上で京がスヤスヤと眠っていた。
「なんだ、寝てただけか。よかった」
当の本人はそれはもう気持ちよさそうに眠っている。そういえば今日は委員会があって疲れたって言ってたな。
安心してふと顔を上げた時、何かがたくさん壁に貼ってあった。どうやら写真みたいだ。
興味本位で近づいてみると、壁一面に貼られた写真には"俺"が写っていた。
家でくつろぐ俺、あくびをしながら通学路を歩く俺、授業中居眠りをする俺、友だちと話す俺……とにかくたくさんの俺の写真が貼ってあったのだ。
「ど、どういうことだ?」
なんで京の部屋に、俺の写真がこんなに貼ってあるんだ!?
この状況訳が分からなかったが、大量に貼られた俺の写真を見て、背中がゾクッとしたのはたしかだった。
「(これは見ちゃいけないやつだ! 早く部屋から出よう)」
ゆっくりと部屋から出ようとした、その時だった。
「おにいちゃん、どこに行くんですか?」
「っ!?」
後ろを振り向くと、そこにはベットから起き上がった京がいた。半袖の花柄ワンピースを着た京はとても愛らしくて可愛いのだが……右手を頬に当て、左手はベットに手をつき、足を組み、大きな赤い瞳でこちらをジッと見つめている。俺はその瞳に見つめられ、動くことはできない。
その姿はまるでギリシア神話に出てくる、見たものを石に変えてしまうメドゥーサだなって頭の中で想像した。
「き、京」
「おにいちゃん、だめじゃないですか。勝手にわたしの部屋に入っちゃ。メッですよ?」
淡いピンク色の小さな唇に右手の人差し指と左手の人差し指でバッテンをつくる京。
「まぁ、でも見られちゃったみたいですし。どうしましょうか?」
「ぅっ」
「ふふふ」
なにが楽しいのか分からないが、京が楽しそうに笑っている。その姿は幼いながらめちゃくちゃ不気味だった。
こ、ここは素直に謝って許してもらうしかない!!
「ご、ごめん京!! 勝手に部屋に入って悪かった!!」
俺は土下座をして必死に謝った。とりあえず謝って許してもらおうと思ったのだ。
「あらあら」
土下座をしていると、ゆっくりと近づいてくる京の足音が聞こえてきた。ごくりと唾を飲む。
「おにいちゃん、顔をあげてください」
顔を上げるのは怖いが、恐る恐る顔を上げる。そこにはにっこりと笑った京の顔があった。
俺の目線に合わせるようにしゃがみこみ、顔を覗きこんでくる。
「わたしのヒミツ特別におしえてあげる。わたしねっおにいちゃん。おにいちゃんのことが大好きなんです」
「へっ?」
「ひとめぼれだったの。おにいちゃんを見たとき、ビビッときたんですよ?」
急に言われた告白に、俺は驚いた。なぜ、今のタイミングなんだ?って。
一目惚れした時のことを思い出しているんだろう。頬は赤く染まり、息ははぁはぁっと上がっている。うっとりとした表情をしながら、俺の頬に手を伸ばした。
ピタリと京の手が俺の頬に当てられる。小さな手の柔らかな感触が伝わる。温かくて、京の体温が高いことが分かる。
「おにいちゃんみたいなマヌケずらな人がわたし、タイプなんだ。支配したくて、ゾクゾクするの」
ペロッと舌で唇をなめながら、京は言った。
「だからおにいちゃん、わたしにたっくさん支配されてね」
新しくできた義妹。そして、義妹本心を見てしまった俺。
義妹の瞳に捕らえられてしまった俺は、果たして逃げることができるのか?
義妹に見つめながら俺は、冷や汗を流すのだった。
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