他人の人生をなぞりたい！

第1話

　俺、霧原紀世にはある特殊能力がある。それは他人の生から死へのプロセスを全部知る力がある。

　そいつの顔を見ると、映像のように流れてくる。20歳までの俺の人生を語ろう。

　俺は高知県で生まれた。そこから家族で香川に引っ越して、そこで高校生まで過ごした。

　発達障がいのおそれがあり、小さい頃から、療育センターに通った。

　小学校は特別支援学級に入れてもらえた。1年生の頃は友達が遊びに来てくれたものの、だんだん不安が募っていった。

　普通ではない自分のことを何処か認識していた。

中学、高校で友達ができなくて、精神を病んで、通院するようになった。

　大学は県外へ行った。一人暮らしに憧れていたからだ。

　風邪をひき、家にこもってオカルトチャンネルを見た後に、特殊能力を持った。

　大学に気になる子がいるから、その子の人生をのぞきたい。特殊能力だから、犯罪ではない。

ただ、人様の人生を覗き見ることに背徳感がある。

　ん、待てよ。俺は能力がないかもしれない。

病気にかかっていて、特殊能力ではなく、ただの幻聴や妄想だ。いつも飲んでいる薬をやめたことによる離脱症状だった。

そして、俺にくだった診断は統合失調症だった。