始め嫁ぎ先の辺境伯から王族の血を引く我が身に治癒とはいえ貴族の令嬢で治癒魔法を持つ聖女のみ触れられる事が出来る決まりから、隣国との戦期間と思われる2年間限定の仮初の妻として愛の無い夫婦関係を厳命され、従者や使用人から蔑まされるも、負傷した騎士を治癒した事で、その治癒魔力が聖女並と知られ、その後の戦場へ従軍治癒師の働きやヒロインとの語らいを通じ、辺境伯・ヒロイン共お互いに恋情を抱くも、所詮仮初の2年間限定の夫婦で、2年後には関係を解消して再び平民の治癒士に戻ると決めているヒロインにとって叶わない恋と諦める姿がいじらしく思えてなりません。その後まさか、辺境伯が王族から臣籍降下してまでヒロインの治癒を望むとは。ましてヒロインの自宅に通い妻ならぬ通い夫となり、半同棲をしでかす展開に驚きが隠せません。終には、ヒロインが望む住宅を真似た新居を用意し、往診依頼を装いその新居に訪れたヒロインを辺境伯が拉致まがいを行い、その後真の夫婦として暮らし子を成すに至る破天荒な行動に天晴です。
相思相愛とはいえ、身分を明確にしながらも常識を逸脱した婚姻譚であったと感心した次第です。