第9話 ワッフル

クリスマスが近くなると 雪の聖母ではいろいろ いつもとは違うことが起こった。子供達には特別なお菓子が出される。何月何日に何が出されるということは、直前にならないとわからないので子供たちは わくわく、そわそわしながら待っているしかない。鼻のいい子がいて 幼稚園の奥の方から臭ってくる 甘い香りをしっかり嗅ぎ分けて、今日だぞ きっと今日だなんて言うと子供達はみんな期待に胸を膨らませる。でも本当に出て欲しい お菓子はそう簡単には出してもらえない。小さなクッキーとかはよく出されるのだが、あれはそう簡単には出てこない。甘く バターの匂いが香ばしいクッキーも十分に 美味しいのだが、子供達は息を凝らして あれが出てくるのを待っている。12月になってまた 甘い匂いがしてくると 今度こそあれだ、間違いないと思うのだがワッフルは そう簡単には出てこない。初めて ワッフルを見た時は 僕は何だかわからなかった ただ いい匂いがして美味しそうだなとは思った。どうして表面があんなに四角くて凸凹しているのか知らなかったが、こんな四角い模様がついたパンをかっこいいなあと思って見ていた覚えがある。このパンなんてかっこよくて美味しいんだろう、またこのパンが出るのはいつなんだろうといつも思っていた。そのパンの名前が ワッフル だと知ったのはだいぶ後になってからだった。クッキーも好きだったけれど ワッフルを知ってから 僕が一番好きなおやつは ワッフルになった。ワッフル は 味も匂いもさることながら あの キューっと噛みしめていた時の 噛み応え 腰の強さがたまらなかった。

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