286 強盗とコソ泥と

危機は去った。


危機?危機だったか?兵站が維持できなければ戦争は続けられない。今回は良いことを学べたと思う。

これからは定期的に帝国の食糧保管場に盗みに入らせて頂こうか。


一度ドアを設置すれば場所を移されるまで頂きたい放題じゃないか。いただくだけ男爵領の財政は豊かになるし敵も攻めてこれなくなる。帝国は経済的に疲弊する。一粒で2度美味しいというやつだ。


今回帝国軍から奪った食糧物資などは男爵領で使うなり商人に売るなりして役に立てた。人も殺さずに済んだし良いこと尽くめな対応策を見つけた気分だ。


戦争を仕掛ける奴なんてよく考えれば大規模な強盗団のようなものだ。なら俺はコソ泥で返してやったまでのこと。コソ泥の方がよほど優しいではないか。


ゴーレムマスターの前にまたしても逃げ帰った帝国軍の威信はガタ落ちになり益々離反して俺の元に帰属したがる村々が増えてゆく。帝国では徴兵の厳しさに加えて増税も行われたらしい。こちらに派兵すればするほど経済的にも疲弊しているのは明らかなことだった。


とはいえ男爵領と比べれば帝国は大きい。男爵領の周辺の村がどんどん離反しているとはいえほんの小さな区域のことでしかなかった。

だがその動き自体は帝国にとって看過出来ないものだった。その原因たる男爵領の存在も許されざるものである。10000程度の派兵では太刀打ちできないとわかった今、もっと大群で攻め寄せることを検討しているに違いなかった。


帝国が全軍をあげて攻めてくるとすればその数は数十万の規模になるのではないだろうか?

その時は男爵領の滅亡の時になるに違いない。流石にそれほどの軍勢が攻め寄せたら守り切ることはできないだろう。


この戦いの後で俺はドミトリーに感謝を伝えると共に今回俺の行った作戦 敵の兵站、特に兵糧を奪う作戦について意見を求めた。ドミトリーは非常に有効で人道的な作戦だと褒めてくれたが、それだけに帝国が今以上に大群を派兵するかもしれないとアドバイスをしてくれた。


帝国との戦場はどんどんとロゴラから離れているしその分ロゴラは安全になっているはずだが俺の索敵の範囲にも限りがあるのでロゴラからでは戦場の様子は分かりにくくなってきている。


今回ミスリルゴーレムの長城を配したあたりに土でゴーレムの形の長城を置いておく。動かないがコケ威としてはゆうこうなはずだ。普段動かなくてもゴーレムが突然動き出したらと思うと破壊しなければその先に軍を進めることはしにくい筈だ。


壊している間に時間が稼げるし敵の動きも規模も調べる時間ができるというものだ。だから例えカカシや土偶であっても防御効果は絶大なのだ、、と思いたい。


ドミトリーのアドバイスを受けて俺は帝国軍の兵糧を狙ってゲリラ攻撃を仕掛けることにした。食糧の集積所や保管所に忍び込んでいただいてくるのだ。食糧の保管所は帝国内に何箇所も存在していて何度もいただきにゆくのだった。


帝国では俺の攻撃と判断することができず盗賊による事件と捉えられていた。やっていることは盗賊と変わりはないのだからそう思うのは当たり前かもしれない。だが食糧を奪うことは軍を動かさせないためには有効な手段なのは間違いないものだった。

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