タックドラスの憂鬱1

「アグル、、」エンビーが声を掛けてきた。


振り返るとエンビーが


「どうかしら?」


どうかしらって言われても、、あ、、、服か


「うん、似合ってるよ。 とても綺麗だ。」


言ってて恥ずかしいんですけど。顔が赤くなってしまった。


「ありがとう!」エンビー


「アグルったら可愛いのね!」


俺の右腕に両腕を絡ませてくるエンビー。


「アラストルにショッピングに行きたいんだけど、一緒に行かない?」


俺の顔を覗き込むようにエンビーは顔をちかずける。


「い、いいよ、」俺


一体何がいいんだ。訳も分からなくなっている状況。


エンビーさん、胸が触ってますぞ!


決して巨乳では無いが15歳の胸はそれなりに発育している。


い、いい、、それじゃないだろう。


「じゃあ、アグルも普段着に着替えてきてよ。」


エンビーはそう言うと俺を部屋に連れて行く。


部屋で着替えながら、、これはもしかしたら、、(デート)なんじゃないだろうか?


着替えた俺の服装を品定めする様に見ながら、


「フーーン、今日はアグルも服を買いましょう! 私が選んであげる。」エンビー


どうやら残念だったらしい。


そうだろうな、俺服とか全然解らないし、気にした事なかったし。


「アゴンとアポンは?」俺


「あ、私が話しといたから、大丈夫よ。」エンビー


え、そうですか、、、、ご用意のいいことで。


「ドア 開けてちょうだい」エンビー


俺はワープドアを開ける。


テスリーさんの家の中につながった。


アラストルは遠すぎるので、一度ソルトビルを経由する必要があるようだ。


失礼します、後で別のとこにドア設置し直しておこう。


テスリーさんに失礼だからな。


テスリーさんの家のに出るとタックドラスさんが神妙な顔をして座っていた。


俺に気づくと驚いたような顔をして、気まずそうな顔になった。


「アグルじゃないか。どうしたんだ?」ドラス


「これからアラストルにお買い物に行くのよ。」俺の代わりにエンビーが答えた。


俺もなんか気まずい。


テスリーさんが「貴方も行くのよ。」


「そうなのか?」タックドラス


どうやら今日は、ダブルデートのようだ。


「まずは、お掛けなさいな、お茶を入れるわ」テスリー


「ハイ、オバサマ!」エンビー


俺はタックドラス師匠の横に座る。


「ドラスさんゴーモリンに居たんじゃないんですか?」俺


「テスリーが迎えにきてな、、、(無理矢理連れてこられたんだ)(小声)」ドラス


テスリーがドラスを睨む。


「師匠とテスリーさんて、(どう言う御関係なんですか?)(小声)」俺


「、、、、、、(説明するのは難しいな)(小声)」ドラス


「、、、、(元彼女とか?元妻とか?)(小声)」俺


「、、、(よく解らんがそんな感じ、、かな?)(小声)」ドラス


なんともハッキリしないこたえだ。


「何 小声で話してるの?」エンビーが無邪気にきいてくる。


「男同士の大事な話だよ。、、そう言えばアグル、


あれはもうできるようになったのか?」ウインクしながらドラスが言った。


「あ、ああ、、あれですか?あ、あ、あれはやっとできるようになりましたよ。」俺


「なに、なに、何ができるようになっったの?アグル。」エンビーが食いついてきた。


困ったぞ、なんと言って誤魔化そう。


エンビーに見せてない魔法って何かあったっけ?


「そ、そ、それは、それは、そ、そ、空を飛ぶんだよ  空を、、、」


トンデモねー事いっちまった!しまった、そんな事、やったことねーぞ。


「ステキね! 私も空を飛びたいは!」エンビー


ですよね〜 そう言ったら こうきちゃいますよね〜


「あ、あ、後でね、うん、後で後で。」俺は冷や汗が垂れる。


ドラス師匠、、怨みますよ、、、、


「アグル、空を飛べるようになったのか、よくやった、あれは難しいからな。」


何言ってくれちゃてんだよ、できるわけねーだろ、そんな魔法、


口から出まかせが出ちまったに決まってるだろう。話そらしてくれよ。


お願いだ〜、傷に塩を塗り込むような真似はしないでくれよ〜。


そもそも俺に無茶振りするからこんなことになってるんだろ〜。


「あら、貴方が教えたの、なら貴方も飛べるのね?」テスリー


「あ、あ、、ああ、も、も、勿論飛べるさ、うん飛べる。」ドラス


やった、ドラスさんに見せて貰えば。


「私の手をとって一緒に空を飛びましょう、私くらい持って飛べるわよね。」テスリー


「ア、あ、ああ、あとでな」ドラス


ドラス師匠、、その顔は、鳩が豆鉄砲を食って心臓麻痺を起こしたようなその顔、


飛べないんべすね、俺のせいじゃないですからね、、、て、何こっち見てるんですか。


自爆でしょ、、今の完全な自爆じゃないですか。そんな顔されてもね。


俺は目をそらした。



「まあ、今日は買い物に行きたいんだろ、行こうぜ買い物に。」ドラス


「あら、珍しく積極的なのね、いつも嫌々なのに、嬉しいわ、久しぶりだからかしら」


違いますよ、テスリーさん、師匠は飛べないから話をそらしてるだけなんです。


俺も飛べねーからナイスですけどね。師匠、流石は、だてに長くは生きてませんね〜。



その場をなんとか誤魔化して、アラストラルに移動、ダブルデートで、街を歩く。


タックドラス師匠は苦虫を噛み噛みしながら無理やり笑顔という感じ。


テスリーさんはその半歩左後ろから伏し目がちに氷の微笑を絶やさない。


多分喜んでると思う。


俺は2人の後ろをついて行く。右腕にエンビーがしがみ付いている。


頭まで肩に付けてくる。いつものツンは何処に消えたのか?今日はデレデレだ。


エンビーの胸の感触がかんじられて、顔が熱くなっている俺。


周りのことなんかに注意する事もできない。


街を歩きながら、エンビーが


「テスリーオバ様、アグルの服も買いたいの。」


「そうね。貴方も服を買った方がいいわよ。師弟揃って服には無頓着なのだから。


選んであげましょうか?」テスリー


「俺は、こういう格好が楽なんだよ。」タックドラス


「変わらないのね。ウフフ。」テスリー


「あのお店、見てみましょう!」エンビーが指差した。


中に入ると流石はアラストラルの大規模店、品揃えが半端ない。


ゴーモリンだと選ぶと言っても選択肢がいくつもないが、


ここは、目移りする程で選べない。


エンビーが俺の服装をテスリーがドラス師匠のを選んで世話を焼いてくれる。


「このトップスにはこのズボンが似合いそうね!」


エンビーの言うことには、納得がいく。


やはりファッションは女性に領分なのかしら。


「そうだね、  ステキだね、  」を繰り返して3つの組み合わせを購入した。


「今日は、これに着替えちゃいなさいよ。」エンビー


「わかった。」ここはエンビーの言うとうりだ。


今の服は、かなり残念な服だったのかな、、、、と反省した。


派手な色合いではないが、ファッション的な当て布補強と刺繍がほどこされている。


エンビーのセンスの良さがうかがえる。


ドラス師匠はと見れば、やはり苦虫を噛み潰したような顔をしながら


テスリーさんの言う通りになっていた。


地味だけど痛みそうなところはしっかり当て布補強をされ、


目立たない色で細かな刺繍がされた服は、一見して安物ではない事が判る。


ドラス師匠、、カッコいい。孫にも衣裳かしら。


ドラス師匠が俺をみて、


「孫にも衣裳だな!」


なるほど、俺も似たようなものだったか。


男たちの服が終わったら次は女性陣の衣裳選び、


テスリーさんとエンビーがキャラキャラしながら服を選ぶ。


それを横目に俺とドラス師匠は小声で相談。


「オイ、お前、飛べるのか?」ドラス


「いえ、飛べませんよ。咄嗟に口から出まかせを言っただけですよ」俺


「ヤバイな、俺も飛ぶ魔法なんて知らんぞ」ドラス


「どうしましょう。今度は飛びに連れてけって言われますよ。」俺


「俺もそう思う。どうする?」ドラス


「なんとか飛ぶ魔法を開発するしかないんじゃないですかね。」俺


「簡単に言ってくれるがなあ、、、、」ドラス


「何かいい方法は、ありませんか?」俺


しばらく考えた後に


「お前、念動力で俺を浮かせられるか?」ドラス


「できますよ。」俺


「俺がお前を浮かせて、お前が俺を浮かせたらどうだ。」ドラス


「いい考えですね。」俺、


「よし、気づかれないように練習だ。5cmだけ浮かしてみよう。」


俺がドラス師匠を、ドラス師匠が俺を5cm念動力で浮かせてみた。


ふらつく姿勢を安定させながら、かなり高度な魔力コントロールが必要だが、できる。


これなら行ける。2人は顔を見合わせてガッツポーズ。


地に足をつけてから俺は気づいた。


「師匠、これ、自分を自分で持ち上げれないもんですかね?」俺


「成程、良いところに気が付いたな。やってみよう。」ドラス


「ゆっくり、5cmですね」俺


「む、むむ、むむむむむ、」ドラス


「む、むむむ、むむむむむ、」俺


「むむ!」ドラス


「むむむ」俺


「オットと」ドラス


「オーーーーとお」俺


2人は浮き上がるのには成功した。


「飛べそうな気がしてきたぞ」ドラス


「俺もですよ、師匠」俺


「後はバランスと高さとスピードだな、後で練習しよう」ドラス


「お願いします。師匠。」俺


「今晩迎えに来い、、、、イヤ、明日の晩にしよう。」ドラス


「、、、わかりました。」明日の晩にドラス師匠の家に行きます。


話はまとまった。新魔法の開発にドラス師匠も上機嫌になっていた。


「何2人で話してるの?」エンビーが俺の腕を取る。


テスリーさんもやってきた。ひと段落ついたのかな?


「何か美味しい物食べに行きましょう〜」エンビー


「そうだね、、、」ドラス師匠を見る俺


「そうだな、それじゃ、川を観ながら食事としようか。」ドラス


頷くテスリー。


アラストルの夕陽亭 アラストル川の際に立つこの店は、


川に沈む夕陽が美しいと評判のアストラル屈指の名店だ。


早めに夕陽のよく見える席とその時間をおさえるのが通のする事だ。


その辺のことは、ドラス師匠が良く知っていた。


食事がひと段落する頃、


大河の水平線に沈む真っ赤な太陽と黒く浮き上がる船影。


赤と黒いや藍のコントラストがなんとも言えない美しさだ。


エンビーはうっとりとしながら俺の右腕に抱きついている。


「綺麗ね、、、、」


至福の一時だ。


エンビーと俺って、もう付き合ってるって言うのかな。


こんなにひっいてきてるし、エンビーはその気だよね。


ドラス師匠とテスリーさんもなんか良い感じみたいだし、


ロケーションって不思議な力があるんだな。


俺は夕陽の沈む美しい一時を楽しんだ。


陽が沈み、食事を終えてソルトビルに帰る。


テスリーさんの家の前で、俺たち2人はゴーモリンに帰ることに、


師匠とテスリーさんは家にはいって行った。


「エンビー、、、ドア、、、」


「アグル、、、」


俺のくちびるにエンビーのくちびるが重なる、、


エンビーがキスしているのだ。


エンビーは、くちびるをはなして、伏し目がちに下を向く。


俺は今度は俺から抱き寄せてエンビーのくちびるを求めた。




2人はしばらくしてから、シェアハウスに戻った。

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