027 不穏な空気

「なんだこいつら? 冒険者か?」

「ガキが堂々と女二人を連れて歩きやがって」


 次の国まで歩いている途中、盗賊みたいな奴らに絡まれていた。

 ベクトル・ファンタジーは豊富なサイドストーリーが売りだ。


 おかげでイベントが絶えない。


「おいゴラァ、聞いてるのかァ?」

「ああ、聞いてるよ。その馬、三頭ほど借りるぞ」

「あァん?」


 ――――

 ――

 ―


「早いです、この馬!」

「楽しい」

「ああ、これですぐ着きそうだな」


 パカラパカラと馬に乗っている笑顔のライフとベルディ。

 頬には返り血が付いていた。

 うーん、やっぱり世に放つべきではないのか?


 いや、でも悪党ばかりだから逆か。

 とはいえたづなは必要だが。


「次は海の国、ストリアだ。街の中に湖があるらしいぞ」

「楽しみですねえ。いつか六封凶みんなでこうやって冒険したいです!」

「したい」


 魔王御一行の旅はそれはそれで面白そうだが、不安も凄い。

 見知らぬ勇者を討伐するたびになりそうだ。


「いつかはありだな。魔物の国が完成して、何もかも落ち着いたら、少しぐらい旅行しようか」

「はい! 楽しみだねえ、ベルディちゃんっ」

「楽しみ」


 たしかに、良いかもしれない――。


   ◇



 とある会議室。

 四つの大国の主要騎士団長、宮廷魔法使い、幹部たちが、円卓を囲んでいた。


 無骨な男たちが、鋭い目をしながら議論を交わしている。


「確かに驚異的な面子だが、問題はないのだろう?」

今のところ・・・・・はな。いつ矛先が人間に向くのかはわからない」

「魔物にデルス街などと名乗らせてるなんて既に恥でしかない。今すぐにでも叩き潰そう」

「落ち着けリエール国の代表よ。戦争において先手は大事だが、それは脅威があるとわかってからだ」

「宣戦布告してきただろう。それに各地で魔族が大暴れしている」

「人を助けていると噂だ。共存を望んでいると、俺は思うがな」

「決を採ろう。協定を結んだとはいえ、あまりにも状況が特殊すぎる。ヴィルト国は様子見するべきだと思う。他の国は?」


 話し合いは頓挫していたが、一人の国の代表が手を挙げたことを皮切りに次々と手をあげる。

 だが一国だけは、頑なに手をあげなかった。


「リーエル国、納得してくれ」

「……我が国は協定を破棄し、単独で行動する」

「なんだと!?」

「魔族と人間が交われるわけがない」


 白髪の老兵、リーエル国の代表者は、怒りをあらわにしながら扉を勢いよく開け、外に出る。

 後ろから部下たちが急いで駆けよる。


「良いのですか? せっかく結んだ協定を反故するなど。恐れながら私にもそれだけの脅威にも――」

「お前はバカか? 国ですらない街ができたんだぞ。噂によると完全回復薬フルポーションもあるらしい。――わかるな?」

「! なるほど。確かにおいしい・・・・ですね」

「ああ、魔物など、我が国の魔法でなんとでもなる。他国を出し抜くチャンスだ」

「浅はかでした。今すぐに聖騎士を集めます」

「ああ、蹂躙の時間だ」


 



 

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