小心者だから評価が上がっていることも知らず
「予想通りに事が運ばなかったときのためにと、婚約解消をお考えになったのでしょうけれど」
「いや。あれは。その。それは……。かの国の王太子が羨ましかっただけで」
「そんな表向きの浅はかな言い訳が、わたくしに通用すると思いまして?殿下が貴族から恨みを買うときは、わたくしもご一緒いたします」
「それは駄目だ」
「いいえ。いいえ。わたくしがお隣におりましたら、殿下のお身体も守られましょう」
令嬢は男の背中に置いた手を動かし始めた。
胃の後ろに当たる位置を優しく撫でられ、青白かった男の顔に血の気が戻っていく。
「わたくしのいない未来など、考えなくてもよろしいのです」
「私は小心者だからね。幾重にもある選択肢のすべてを覗きたくなってしまうのだよ」
あらゆる可能性を並べ立て、そのすべての可能性に対し、問題が起こらぬようにとことを運ぶ。
そんな人間が王に不向きであるとしたら、王に向く人間とはどんな人物だと言うのだろう。
令嬢含め、この場を見守る侍従や侍女、それに王家の影なる存在たちは思っているのだが。
その心、男だけがいつまでも理解しない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます