「さよなら」を言えるまで。
結花紡樹-From.nanacya-
ばいばい、最後の別れ。
毎日毎日優しい彼と話して、はや1年。私が人間界に居れる時間も、もうすぐで終わってしまう。後3日で終了式。どうしよう、話すべきなのかな。
〜修了式3日前〜
「おーい、後もうちょっとで修了式だぞ?思い出いっぱい作ったか?」
そう先生が言う。当たり前にできているのに、先生や彼はまだ足りない、とでも言うような目線を向けてくる。
「…い、おい代表委員!」
いきなり大声を出されて思わず目を見開いてしまう。はぁ…。無駄に使わないで欲しいよ。
そのあとはレクリエーションを決めたり、雑談したりした。それも楽しかったけど、でもどこかに突っかかりが残ってる気がする…。
「なぁ、今日どっか行かね?」
そうやって彼が話しかけてくる。とても嬉しい。でも、私はー。
「ごめん…今日予定があって」
そう言い繕ってしまった。だって、彼には言えない。悲しませてしまうかもしれないし、「転校」なんて言ってしまったら、住所調べて追っかけてくるかもしれない。そうしたら、私はどこにもいないのに探し続けるという無謀なことになってしまう。そうやって頭を狂わしながら回して回して考え続けている。と、
「お前さ、最近顔色悪くない?」
そういきなり言われた。
「…………は?」
あまりに突然すぎて、その一言しか出てこなかった。
「とにかく!お前なんかあるだろ。こっち来いよ」
そう言って私の片腕を掴み、走る。私は振り落とされないように必死でついていく。
握っている手は、全力で掴まずに優しく握ってくれていた。
走る足は、いつもの全力疾走じゃなくて、私がギリギリ着いてこれる速さ。
向ける背中は、いつもみたいにちょっと威圧的じゃなくて、優しさと温もりが篭って、ちょっと大きく見えた。
あぁ、私のことを思ってくれてるんだな。
そう思うと、涙が込み上げてきた。でも、今は走らなくちゃ。行く場所は、決まってるんだからー。
着いた先は、勉強したり遊んだりずぶ濡れになってしまったこともあった、思い出しかない公園。
そこにあるちょっと大きな滑り台の上で、2人座ってぼーっとする。
もう夕方だから、誰もいないし何も起こらない。そんな心地いい時間が一生続いて欲しかったな。
「なぁ、本当に話してくれないのか?」
…話せないのに。話したら気味悪がられるかもしれない。
不安を取り除くかのように、彼は顔を私の顔に近づけてきた。
「話してくれないのか?」
低音で、顎クイをしながら話してくる。
やってる時点でバレてるはずだ。だって、感触が違うから。
…話しても意味ないかもしれない。でも、話すしかない。
「あのね…」
その後の一言は、誰も知ることがなかった。その2人を除いて。
その後、彼女がどこに行ったかは誰にもわからない。
ただ、彼だけが想い続ける日々が続いていた。
病床の上で。
「さよなら」を言えるまで。 結花紡樹-From.nanacya- @nanacya_tumugi
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