(4)
「でも、どこから出したの? たった今までこんなの持ってなかったよね?」
「さーて、どうだろうね?」
この人ったら、なんてイジワルな笑みを浮かべるのだろう。
「もうっ、変な夢」
わけのわからない場所で、うさんくさい人の相手をするなんて、やってらんないよ。
男はわたしの前から横へ移動して、『あちらへどうぞ』と高級ホテルのドアマンみたいに礼をした。その手は扉を示していて、暗に「行け」と言っているのだ。
このままこの人の相手をしていても仕方がない。何がなんだかわからないけど、行くっきゃない!
わたしはゆっくりと扉に近づいて、銀の鍵を鍵穴に差し込んでひねる。がちゃり、と音がして扉がひらくと、その隙間からまばゆい光が差し込んでくる。わたしは足を踏み出そうとして、ふと気づいた。
「ねえ、まだあなたのお名前を聞いてないよ」
「そうだったね、ワタシの名前は……Nyarlathotep」
にゃーう? なー? 聞き取れなかった。
「はは、ニンゲンにはちょっぴり発音が難しい名前なんだ。そうだね、ニャルとでも呼んでくれたまえ」
「ニャルね、なんだか猫みたい」
「やめておくれ、ワタシは猫が苦手なんだ」
それまで余裕たっぷりに笑っていたニャルが、眉をしかめるのがなんだかおかしい。謎の男の弱点がわかったことだし、そろそろ行くとしますか。
「きみの活躍を期待しているよ」という男の言葉を背中に受けながら、わたしは光の中へ飛び込むと、そのまま意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます