第52話 前期期末テスト

【前期期末テスト】


「嘘だろ、補欠の荷物持ちが座学1番?」


「しかも、ダントツだぞ」


 前期テストは9月の終わり。

 残暑が終わり、秋を実感させる時期に行われる。


 その前期テストの結果が張り出された。

 上位30位までが名前付きで載っている。


 座学 1000点満点中

 1位 ジョエル   982

 2位 アスタシア  959

 3位 ライリー   953

 4位 ロレーヌ   947

 ……


 俺は廊下にはられた順位表を何度も見直した。

 俺が座学一番だって?

 しかも、結構飛び抜けてるじゃないか。


 驕っていると言われるかもしれないが、

 俺はあれでも何問かわざと間違えたんだ。


 だって、あまりにもテストが簡単すぎた。

 これじゃ、満点続出するだろって。


 Bクラスぐらいかな?

 と思って何問かを間違えて答案を提出したわけだ。


 俺は、身体強化スキルの向上とともに、

 多分、体力以上に頭脳が明晰になっている。


 映像記憶スキルがあるっていったことがあるけど、

 記憶力だけじゃない。


 あの古代書解析能力。

 あんな難しい暗号みたいな文章。

 前世の俺だったら解析できたか?

 今はちょっと難し目の技術書を読む程度で翻訳しているし、

 しかも平気で式を改変してるぞ。



「ジョエルは爪を隠してたの?」


「それとも、入学試験は体調が悪かったから?」


「いや、答案を盗んだんだろ」


「カンニングか」


 いろいろな噂が飛び交っている。

 あー、もうめんどくさい。


 ちなみに、実技は総合で60番ぐらいだった。

 こちらはきっちり手を抜いたからな。

 俺は力のコントロールにいまだ苦労していて、

 この程度の力の抜け具合がちょうどいい感じになるのだ。



 しかし、どうする。

 後期試験は少なくとも座学は手を抜けんぞ。

 点数が悪かったら、何かの不正を疑われそうだ。


 いや、実技もそうだ。

 俺の実力はロレーヌ襲撃事件である程度の噂が出ている。

 

「ジョエル、実技で手を抜いてるんじゃないか」


「いや、あれが実力だろ」


 などと教職員の間でも議論されているぐらいだ。



 そういえば、

 入学試験のときは俺は身長160、体重95だった。

 

 今は。

 身長170、体重80。

 随分とすっきりしてきている。


 これでも痩せているとは言えないが、

 おそらく体脂肪率がかなり低くなっている。

 がっちりしてきているのが自分でもわかるんだ。


「お兄ちゃん、昔の面影が出てきたわ」


 マノンが言う。

 昔の面影?


「小学校のころ、痩せてたでしょ?」


 ああ、そういえばそうだった。

 高等小学校に上がる頃から太り始めたんだ。

 父ちゃん飯は抜群に美味いからな。

 肥満とか全く気にせず、バクバク食べてるもんな。

 

 太っていても運動がダメってことはなかったのも大きい。

 小中の頃はクラスで一番足が速かったし。

 デブとかからかう奴はぶっとばしていたしな。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る