第22話 屋外授業1

【屋外授業1】


 魔石回復薬の件でごたごたしていた時、

 アカデミー入学後初めての屋外授業が始まった。

 ダンジョンに降り立ち、3階までを踏破する。


 まあ、なんてことはない。

 ほとんどの学生にとっては、すでに何度も経験している。


 ダンジョン攻略は4階から本格的になる。

 その前に、特に角兎を相手に、

 ダンジョン攻略の基礎固めを確認しようというのだ。


 で、俺たちはアカデミーの校庭に集合する。



「おお、やっぱりお美しい」


 俺は密かにこの屋外授業を楽しみにしていた。

 というのは、これは迷宮学園1年合同授業なのだ。


「オーラが眩しすぎる」


 1年の首席合格者。

 アスタシア。

 もうね、類まれなる美少女。

 百花繚乱、千紫万紅、背景に花が咲き乱れている。


 系統はロレーヌと似ている。

 前世でいうと、クリスティーナ・ピメノヴァ。

 小顔8~9等身で手足が長い。

 目はバイオレット、髪は儚げな薄いパープルシルバー。


 ロレーヌには親しみを感じるが、

 こちらは神々しさが加わる。


 いや、ひょっとしたら美形度は同じぐらいかもしれない。

 でも、ロレーヌは小さい頃からの幼馴染で、

 家族のようにつきあってきた。

 だから、美貌にときめかないのだ。


 ま、チビピザデブの俺が勝手なこと言ってるだけなんだが。


 周りを見ると、アスタシアとロレーヌに注がれる

 目線が二分されている。


 

 もう一つの驚きがある。

 アスタシアの属するA組。

 通常は王族・貴族とかの上流国民の子弟で埋まる。


 ところが、首席アスタシアはかなり田舎の子で、

 実家は農家だ。

 まあ、それなりの大規模農家らしいが。


 3位のロレーヌは両親は優秀な人物だけど、庶民出身だ。

 ラ・シエル街の市議会の役人である。

 市議会とは政府のことだ。

 役人と呼ぶよりも官僚と呼んだほうがいいかもしれない。


 ちなみに、ラ・シエル街には貴族はいない。

 庶民からなりたっている。

 まあ、中核をなすのは庶民というか、

 富裕層などのいわゆる新貴族と呼ばれる階層なんだが。


 そして、2位はライリー。

 貴族の出だが、

 いわゆる新興貴族。

 主に冒険者として功績をあげたり、

 魔石に関するビジネスで名をあげ、

 貴族の称号を授かった、あるいは買った人たちをいう。


 もちろん、古くからの保守的な貴族とは折り合いが悪い。

 旧来勢力は新興勢力を成り上がりを蔑むし、

 新興勢力は旧来勢力を時代遅れと思っている。


 ライリーはこの国の貴族らしく、長身のイケメンだ。

 女学生の目の多くが彼に注がれる。


 個人的にはやっかみもあって、

 いけ好かない野郎ではある。


 特に、女神アスタシアと馴れ馴れしく談笑しているのは、

 まったくもって許せない。


 そう思っているのは、俺だけではないはずだ。

 つまりこれは義憤であるのだ。


 え、何?

 ロレーヌと仲のいい俺もそうだって?

 いや、ロレーヌと俺は幼馴染だし、

 そもそも全く釣り合いがとれないだろ。

 彼女の荷物持ちだなんて言われてるんだし。


 ともかく、A組は新興勢力の子弟が上位を占めているのだ。



 俺は女神のお姿を堪能して、

 E組の元へ戻っていった。


「いよいよ、この日がきたわね」


 エマとジャンヌは軽く頬を上気させている。

 いやー、よくぞここまで頑張ったよ。

 最初の日なんか、どうしようかと思ったもんね。


 三人のふくよかボディの陰キャがパーティを組んで、

 E組から浮きまくっていたもの。


 ただ、二人共身長160cm台で体重は60kg程度に

 締まってきている。


 だから、今は太い、というほどではない。

 今後はさらに痩せてバランスが整ってくるだろう。


 というのは、普通、真面目にダンジョン攻略をすれば、

 痩せて当然なんだという。


 ダンジョン活動はかなりのカロリーを使うからだ。


 逆に言えば、肥満体系はまともなダンジョン活動をしていない、

 といえる。


 迷宮学園に入学してくるような人は、

 そこそこダンジョン活動を進めていて、

 体型は引き締まっている人ばかりだ。


 そのことは俺にも言えるはずなんだが、

 俺はエマやジャンヌと比べれば場数を踏んできたつもりだ。

 それでも、チビデブ。

 まあ、個人差ということなんだろうか。


 なお、何度も言うようだが、この世界で少なくとも

 身長に関しては庶民間では誰も気にしていない。

 ドワーフという短躯な種族もいるし。


 しかし、これが貴族となると途端に問題になる。

 貴族は長身を好むのだ。

 命令をするときに見栄えがする、という1点だけの理由で。


 あと、デブに関しては、

 父ちゃんの飯が旨すぎるということもある。

 毎日、大量に食べてしまうからな。

 それに比べ、寮の食事は虐待レベルでマズい。

 明らかに食べる量が減った。


 もっとも、昼食・夕食はほとんど家でこっそり食べてるんだが。


 ※肥満の原因は、転生に気づかなかったためスキルが開放されず、

 それが成長を圧迫していた模様。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る