アカデミー迷宮学園~転生チートスキルでいじめっ子を叩きのめしていたら闇にぶつかった

REI KATO

アカデミー入学

第1話 転生したことを思い出した

【転生したことを思い出した】


「クソっ、あいつら絶対許さん」


 俺はジョエル。

 ラ・シエル・アカデミー迷宮学園に入学まもなくで

 いじめっ子たちに殺されそうになったのだ。


 アカデミーはフローレンス王国トップクラスの名門校だ。

 ルルド、ストラス、ラ・シエルの3つの街に設置されている。


 俺は必死に勉強した。

 そしてアカデミーの中でも最も優秀とみなされる

 ラ・シエル迷宮学園に合格したのだ。


 ところが入学すると早々にイジメの対象となった。

 俺が平民でしかも補欠合格で入学してきたことが原因だ。


 補欠合格者は他にはいない。

 つまり、俺は迷宮学園では最下位合格者だ。

 それはランク付けを好む他の学生たちの

 格好のターゲットとなった。



「おい、チビデブ」


「?」


「おまえだよ。唯一の補欠合格だってな」


 おまえ、って俺のことだった。

 俺は身長160cm、体重95kgのチビデブピザだった。


「つまり、おまえは迷宮学園の底辺だ」


「しかも、こいつ、A組の女学生の通学に付き従うらしいぞ」


「底辺が?」


「護衛のわけないよな」


「多分、荷物持ちじゃないか?」


「ああ、そうか。納得だな」


「底辺の荷物持ちか」


「恥ずかしくないのかな?」


「オレだったら、入学を辞退するな。辱めには耐えられない」


「底辺中の底辺だからな。俺たちとは考え方が違うんだろう」


「単に面の皮が厚いだけだろ」


「違いねーな」



 周囲からの嘲りにグッと我慢した俺だけど、困難は続いた。


 何しろ、周りは王国のトップの才能の集まりだ。

 レベルの高さに圧倒され、俺は意気消沈してしまっていた。

 しばらく、軽く鬱状態に陥ってしまったのだ。

 

 ドベで入学してきたことに加え、

 俺は暗く感情のないような顔で入学式からの数日を送った。


「ネクラの底辺荷物持ち」


 すぐに、俺の二つ名が決定した。



 その日から俺へのイジメが定着した。

 大抵は無視するだけだったが、特定の3人のは酷かった。

 当初は言葉によるものだったのが、週が明けると手がでるようになった。


 そして入学2周めの金曜日、

 俺は数人のクラスメイトに訓練場に連れていかれた。

 俺は備品倉庫に押し込まれ、マットでぐるぐる巻きにされた。


 息ができない。

 もがいても逃れられない。

 呼吸が苦しい。

 

 そうして、俺は少しずつ意識を失っていった。



 目が冷めたときは保健室だった。

 いじめっ子たちもさすがにやり過ぎに怖くなり、

 練習中の事故として保健室に俺を担ぎ込んだのだ。


 目が覚めると、俺には驚くべきことが起こった。


 とつぜん思い出したのだ。

 前世のこと。

 管理者から授けられたスキルのこと。



 俺には前世がある。

 日本という国で平凡な市民だった。

 プログラミングエンジニアだったが、

 例に漏れず長時間労働が祟り、若くして過労死したらしい。


 気がつくと、ゆったりとした白い服を着た

 ハゲで白ひげを蓄えた老人の前にいた。


「天界にようこそ」


「天界?」


「落ち着いて聞きなされ。おまえは過労死してここに送り込まれてきたのじゃ」


「過労死?俺は死んだということですか?」


「うむ」


「いや、明日の朝イチでクライアントに」


「もうそういうのはナシじゃ」


「そんな」


「言いにくいことじゃがの。今回のできごとはイレギュラーでの」


「イレギュラー?予定にないってことですか?」


「そうじゃ。おまえはもっと長生きするはずじゃったのが、ちょっとした手違いでの」


「ちょっとした?手違い?ふざけてるんですか?」


「まあまあ。怒るのももっともじゃがの」


「というか、あなたは誰なんですか?天界って?」


「ここは次元の狭間。天界の入り口。天界はわかりやすく言えば、天国じゃの。ワシはここの管理者じゃ」


「死んだとかいってますけど、なんか騙くらかそうとしてるんですか。そんなこと、すぐには信じられるわけ無いでしょ」


「おまえ、足元を見てみよ」


「あれ?脚がかすれて見える!」


「手で胸を叩いてみよ」


「あれ?手が胸を突き抜ける!」


「実体がないのがわかるか?」


「なんなんですか」


「だから、おまえは死んで実体を失ったのじゃ」


「つまりは、俺は、まさか幽霊?」


「ちと違うが、そのようなものじゃ」


「えー、嘘でしょ」


「ただ、イレギュラーな分だけおまえの扱いに困っておる」


「そんなこと言われても。どうにかしてください」


「天国は今空きがなくての」


「まさか、地獄へ?」


「地獄はストライキ中だ。鬼が待遇改善を要求しておる」


「ああ、よかった」


「いや、このままじゃとおまえは次元の狭間に未来永劫漂うことになる」


「そんな。もとの世界に戻してください」


「それもできん。死んだ直後ならともかく、ここに至っては結果を改変できん」


「なんとかしてください」


「でな。おまえを転生させることにした」


「転生!魔法の世界で無双チートハーレムですか!」


「うーむ。魔法のあることは間違いない。役にたつスキルもつけてやろう。ハーレムはおまえ次第じゃ」


「役に立つスキルとは?」


「魔素フィールドスキルと魔石生成スキルじゃ」


「ピンとこないんですが。地味そうですね」


「地味でもなんでもないぞ。スキルの威力は転生すればわかる」


「はあ」


「あとはコミュニケーションに困らないように、最低限の言語能力もつけておこう。本はよく読めよ」


「?」


「納得してもらったかの。転生したらここや前世の記憶はなくなるからな。じゃあ、転生するぞ」


「いや、全然納得してないし、転生……」


 俺の意識はだんだんと遠のき、白い世界に吸い込まれていった。

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