第21話 愚連隊、吶喊

西暦2032(令和14)年2月1日 ゾルシア共和国南部 パルタス州ラーグ市沖合


 開戦から凡そ1か月が経過したその日の夜、ガロア皇国海軍の占領地警備艦隊は港湾都市ラーグに錨を降ろしていた。


 台湾艦隊の襲撃から5か月。港湾施設そのものはすでに修理されているが、艦艇は少数の哨戒艇と支援艦艇しか残っておらず、よって目に見える程の抵抗は起きず、事実上の無血開城と相成ったのである。


 その警備艦隊を構成するのは、大型巡洋艦「ジルダー」を旗艦に、巡洋艦2隻、駆逐艦16隻の計19隻。海軍戦力が大幅に減少しているゾルシア海軍にとっては驚異的としか言いようがない。


 だが、そこに数隻の忍び寄る者達がいた。


・・・


「敵は完全に油断している!今こそ奇襲を敢行し、傲慢な鼻っ面をへし折る時だ!」


 ミサイルコルベット艦「M01」艦長のロード少佐はそう声を張り上げ、艦橋より敵艦を睨む。


 ダキア王国より建造中のものを購入したコルベット艦の1隻である本艦は、輸出前提で開発されたSSM-32艦対艦ミサイルを4発搭載している。性能は射程50キロメートル、誘導装置は民生品を多用したモンキーモデルと敢えて低性能に作られているが、それでも1発で巡洋艦を大破せしめる程の威力はある。


 8隻のコルベット艦からなる第17哨戒艦隊は、アーレンティア帝国がゾルシア救援のために派遣した援軍の一つで、果たして敵艦隊に致命的打撃を与えられるのかどうか、疑念を抱えていた。


 故に、ロード少佐は燃えていた。今こそ大戦果を挙げて、戦功で名を轟かす時だと。例えその手段がかつての敵国からもたらされたものであろうとも、貴重な手段は有効活用するべきだろうと。


「射程に入りました!目標捕捉!」


「よし…全艦取り舵一杯!横に並んだ直後に発射開始!目にもの言わせてやれ!」


「射線、確保!」


「撃てぇ!」


 命令一過、8隻より白煙が舞い上がる。1隻当たり4発、計28発の艦対艦ミサイルが放たれ、港の方へ向かっていく。数分後、水平線の向こうに複数の発光が見られた。


 この日、後に『第二次ラーグ沖海戦』と呼ばれる事になる戦闘にて、第17哨戒艦隊は巡洋艦1隻と駆逐艦5隻を撃沈、大型巡洋艦「ジルダー」を大破させる快挙を達成。本国は久方ぶりの大勝利に湧く事となった。

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