第17話 メディレア海戦争、勃発

西暦2031(令和13)年11月21日 大陸東部 ガロア皇国軍基地


 ENAとアーレンティアの講和から2か月が経ち、ガロア皇国は多くの予想通り、敵を完全に屈服させるべく、中央の大陸東部に兵力を大量に集結。そしてゾルシア共和国への大規模侵攻を開始していた。


 そしてこの日、皇国大陸軍の基地の一つでは、皇太子を主催者とする閲兵式が執り行われていた。


「諸君、これより我が偉大なる皇国軍は、忌々しきゾルシアの侵略者どもに対して復讐を果たす。宗教の布教の名の下に、我らが国土を侵した輩に、十二大神の聖なる裁きをもたらすのだ!」


 これまでゾルシア共和国は、中央世界の大国でさえ復讐を躊躇わざるを得ない程の軍事力を持ち、いざとなれば経済的つながりの強いアーレンティア帝国と手を組んで迎撃する事も可能であった。しかし、他国との戦争で貴重な海上戦力を減らし、陸軍や空軍も相応の損耗を抱えている。故に、皇国の今の兵力で押し勝てる公算が高かった。


「これまで我が国は、東のゾルシアのみならず西の国々とも矛を交える用意をしなければならなかった。だが、今は違う。忌々しいゾルシアを地図から消し去り、高慢なアーレンティアを屈服させるは今なり!」


 閲兵式に参加した皇太子は、目前に整列する大軍に向けてそう言う。彼らの後方には何百何千もの装甲車両やらトラックが並んでおり、非常に巨大な兵力が揃っている事を視覚に訴えかけていた。


 港湾部でも同様に、100隻以上の軍艦が舳先を並べ、出撃準備を進めている。将兵の多くは、余裕で東方の劣等国を捻り潰す事が出来るだろうと考えていた。


・・・


アーレンティア帝国西部 帝国空軍飛行場


「これが、新型の戦闘機か」


 帝国軍総司令官のアルデウス大将軍は、目前に置かれた1機の戦闘機を見やる。それはドイツのMe-262〈シュワルベ〉ジェット戦闘機に似ており、しかし塗装は白かった。


「ゾルシアが開発を進めていた、新型戦闘機の試作機です。その一つを設計図ごと我が国に供与してくれました。またニホンからも、性能向上につながるとして幾つかの技術供与をしてくれるそうです」

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