第7話 連合軍上陸
西暦2031(令和13)年8月15日 ダキア王国北部沿岸部
「提督、敵は全く抵抗せずに内陸へ撤退した模様です。上陸予定地点の機雷掃海も完了し、船団は上陸を開始しました」
ダキア侵攻艦隊の旗艦を務める戦艦「マグヌス・カザン」の艦橋にて、艦長のアベルニ大佐は報告を上げ、指揮官のデイダー中将は指揮官席でふんぞり返る。
「うむ…呆気ないものだな。所詮は辺境の劣等民族。我が侵攻軍の偉大さに震え上がって逃げおおせたか。艦砲射撃はいらぬ、空母に陸の御守を押し付けよ」
対艦巨砲主義者たるデイダーはそう言い、無数の上陸用舟艇が群がる浜辺を見つめる。海面に浮かべられた後にクレーンで火砲や物資を積み込み、港湾設備の存在しない浜辺に揚陸する任務を担う上陸用舟艇は、2個歩兵小隊に相当する60名の将兵を乗せ、着岸と同時に艇首を構成するハッチを開放。物資を円滑に降ろしていく。
また、魔導工兵部隊は土操作魔法で長大な桟橋を浮上させ、貨物船は大型クレーンで総重量20トンはする軽戦車を降ろしていく。一方で北東の港湾都市であるモルドの港湾部への侵攻も順調に進んでおり、そちらでは第2鉄騎兵師団が揚陸を進めていた。
此度の戦争では、陸軍は2個軍団規模、4個歩兵師団と2個機甲師団、2個砲兵旅団が動員されている。それに海軍や空軍の戦力も加えれば、総兵力は10万を超えるだろう。ゾルジア共和国も1個軍団規模の陸軍戦力を派遣してきているし、弱小国たるダキアを滅ぼす事など造作もないだろう。
帝国軍と共和国軍はその後、1週間かけてモルド含む王国北部地域の占領を実施。この時もさしたる抵抗は無く、まさに連合軍は気軽に侵攻を続けたのである。
・・・
西暦2031年8月22日 ダキア王国北部 ピアトラ平原
戦争の幕開けを告げてから1週間が経過し、帝国大陸軍のいち歩兵連隊は隊列を組んで街道を進んでいた。
「連中は随分とひ弱なもんだ。こうしてみすみす侵攻を許す程なのだからな」
歩兵の一人はそう言いながら、トラックの荷台より外を見やる。空には空母より発艦した戦闘機が展開し、航空支援に徹している。時々偵察機らしき大型機がちょっかいを仕掛けてきているが、それでも航空優勢である事に変わりはなかった。
「まぁ、所詮は辺境の獣ども。我が偉大なるヒト種の軍に勝つ事など出来ぬだろうよ」
同乗する小隊長が誇らしげに言い、他の兵士も笑顔で頷く。そうして空を見上げたその時。
突如として、複数機が爆発とともに火球に包まれる。そして真上を幾つもの黒く巨大な物体が飛び回り、そして何かを落とす。
それが何か、直ぐに理解できる者は殆どいなかった。第8飛行隊のF-15EJ〈ストライクイーグル〉戦闘爆撃機が隊列に向けて227キロ航空爆弾をばらまき、トラックの群れを一網打尽にしたからである。さらに上空にはF-35A〈ライトニングⅡ〉戦闘機が舞い上がり、敵のレシプロ戦闘機を空対空ミサイルで一方的に撃墜していた。
そして陸戦でも、先行して突撃している戦車連隊は地獄を目の当たりにしていた。
「全車、撃て」
広大な平野を駆ける16式機動戦闘車の車列は、砲身を真横に向け、発砲。105ミリ砲弾は重量40トンはある中戦車の真横を貫き、爆散させていく。対する中戦車も90ミリライフル砲で反撃を放つが、時速100キロメートルで駆ける装甲車に当てるのは至難の業であり、悉く回避されていく。
「全車、突っ込め。技術力の差を教えてやるのだ」
命令一過、今度は24式装甲戦闘車が突入を開始。ハーフトラックを30ミリ機関砲で破壊していき、攪乱を起こしていく。
斯くして、この日の戦闘において帝国大陸軍は先行して突撃した連隊規模の部隊が壊滅。この想定外の損害は現地指揮官を混乱せしめ、直ちに本国へ増援の派遣を要請する。
しかしその時には、海上自衛隊は本命たるアーレンティア帝国海軍の侵攻艦隊を殲滅するべく、東部の港湾都市セレディアにて艦隊を集結。そして作戦遂行のために出撃していた。
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