第27話:経歴紹介2

一方ティナは、前の続きで、有り余った時間を使って隊員達の経歴を確認していた。

ヴィヴィ・ヘルナード中佐は、22歳の時に軍に入隊。

魔力適正検査時に、A級適正を検出され、海軍第六魔導師連隊に配属された。

風魔法と飛行魔法が得意なヴィヴィ中佐は、当時から高速飛行魔法を使用した

高速飛行魔導戦で戦果を挙げ、海軍第六魔導師連隊のエースとして君臨していた。

第3次ラティッカ海海戦の時に、敵の軍艦6隻をたった一人で撃沈。

大戦果を挙げたことによって、帝国聖騎士勲章を受章。

海軍魔導師の一躍有名人となった。

そして現在、王獣魔導隊の高速伝令兵として、戦場を駆け巡っている。


フィーナ・カルヴォン少佐は、19歳の時に軍に入隊。

魔力適正検査時にはB級適正と、少し優秀程度の魔力適正であったが、フィーナの得意とする魔法が

軍内部では高く評価されていた。

影魔法・・・それは得意とする者の殆どいない魔法。

この世界には多くの種類の魔法が存在するが、その中でも影魔法はかなり珍しい魔法である。

大帝国内でも、影魔導師はフィーナ含め200名弱しか確認されていない。

そしてフィーナは・・・影魔法の天才であった。

影魔導師史上最も魔法を使いこなせている魔導師と言っても過言ではない。

超高等隠密魔法である『陰影法』を用いた完全不可視の隠密兵である。

それにフィーナは観察眼に優れている。

斥候としてはこれ以上に優秀な兵士はいない。

戦果としては、フィーナのもたらした情報によって勝利した戦いが幾つかある。

3年前の連合国との戦い、2年前の王国との戦いが主にそうである。

その他にもドナード大将との協力の下、大帝国内部の反乱分子が蜂起するのを阻止したりと

軍部上層ではかなり有名な軍人の一人である。


シーシャ・メメント大佐は、19の時に士官学校に入学。

上の中の成績を維持し、態度も良好、規律も遵守し、完璧な軍人と言っても過言ではない人物だ。

しかし、王獣魔導隊の中で彼女以上に魔法の才がない者はいないだろう。

無論、他の魔導師と比べればシーシャも十二分に強力な魔導師と言える。

だが、王獣魔導隊の中では最弱。

ならなぜ、彼女が王獣魔導隊に所属しているのか。

それは、彼女の有能さにある。

古来より人間は、間違った方法で他人のことを評価する場合(こと)が多かった。

10の失敗をした者は、1の大成功で過大な評価を与えられ、10の成功を収めたものは

1の大失敗でどん底に叩き堕とされる。

だが、大帝国は違う。

10の失敗をした者は、1の大成功で10の失敗を帳消しにしたと考える。

逆も然り、10の成功を収めている者は、1の大失敗を責め立てない。

そう、その理論で行くと、幾つもの成功をおさめ続けているシーシャは

とてつもなく有能ということになる。

シーシャは殆どミスを犯さない。

王獣魔導隊の隊員は皆強力だ。

だが、力だけで天下を治めた将は未だに誰一人としていない。

故に、堅固で強力な部隊を作り上げるのに、シーシャと言う存在は必要不可欠なのだ。


アメリ・ヴィーセント大佐は、18歳の時に士官学校に入学。

魔力適正検査の時はA級適正と、元から優秀な人物であった。

そんな彼女が最も得意とするのは、重力魔法と空間魔法である。

頭も回る優秀な軍人で、当時の陸軍参謀本部総長ベルドナ・シャティウス大将に目を付けられ

卒業後は陸軍参謀本部直属の、機動重力魔導師大隊の輸送兵として配属された。

機動重力魔導師大隊は主に、迅速に物資を輸送したい時に運用される部隊だ。

戦闘力と機動力を有し、大量輸送が可能な部隊でなければならない。

時には、敵に包囲されている味方に支援物資を送ることもある。

故に、優秀な軍人しか入れぬ超精鋭部隊と言っても過言ではない。

アメリは、そんな機動重力魔導師大隊で6年間も戦い抜き、副隊長の任まで任されていた。

しかし、第3次連合国国境戦で包囲された味方第六歩兵師団に支援物資を送り届ける際に

敵の猛攻を受け、部隊は壊滅状態に。

隊長のサキエル少佐は敵魔導師の攻撃を受け戦死、残った十数名の隊員を引き連れ

アメリは撤退を決意する。

その後、敵の猛攻を受けつつも、アメリ達は何とか撤退に成功した。

しかし・・・第六歩兵師団は支援物資を受け取れず、最後の抵抗を行うために敵本陣への突撃を敢行

師団長パウル・ディレリッヒ少将を含め、誰一人として生き残った者はいない。

その後、機動重力魔導師大隊の生き残りであるアメリ達は、第二魔法師師団に配属されたが

アメリだけはその半年後に、王獣魔導隊の一員になる。


そう言えば、シーシャはガルベル提督が戦死したのは、自らの責任だと言っていたな。

無論、作戦の失敗は誰かが責任を取らねばならないが・・・軍の上層部も、こんな非常時に優秀な軍人に

罰を与えることは出来ない。

と言っていたし、戦争が終わるまでは気にしなくていいと言ったのだが、それでも彼女は気にしていた。

この大攻勢が終わる頃には、冬に突入しているはずだ。

敵の侵攻が完全になくなるわけではないだろうが、それでも我々の出番は少なくなるはず。

その時に、王獣魔導隊の皆を労う為に、我が家に呼んでパーティーでもやろうか。

(ティナの実家は、父は元陸軍元帥、母は元海軍参謀本部直属の精鋭魔導部隊隊長であり

 ティナの両親の資産は帝都の大商人クラスである。)

ティナも、両親に勝らずとも劣らぬ程の金額を稼いでいる。

ティナがそんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る