第25話:会議終了 ~両軍戦線へ~
『ですが、悲観的になるのは早いです。
これは影殿が帝国に自ら赴いて収集してくださった情報です。
帝国も、我々と似た考えを持っている様です。』
セリナ少将から渡された書類には信じがたいことが書いてあった。
『帝国も前線より兵を引かせるつもり』らしい。
何故かと言えば、これは超人戦争であり、一般兵を消費する意味もないため・・・とのこと。
恐らく、ティナ提督と同等の戦力か、それに対抗できる程度の戦力を保有しているのでしょう。
帝国のこの作戦に関する情報封鎖は完璧で、影殿でも作戦の断片的な情報しか得られていません。
引き続き情報部では帝国の作戦に関する情報を収集しております。
ですが、我々の負担も減るということに間違いはありません。
セリナ少将の一言は、本来ならば喜ぶべきことだが・・・。
敵の別の意図を警戒しなくてはならなくなった、ということでもある。
本来ならば、帝国が前線の兵と帝国7王騎士を総動員して、多少の犠牲を出してでも前線を突破したほうが
勝率は高い。
そう、帝国は非効率であまり意味のないことをしようとしている。
あるいは、帝国は何か7王騎士以外の切り札を用意していて、それさえあれば大帝国を簡単に堕とせる。
否、それならば帝国が反大帝国同盟に加入する意味がない。
だが、ならば我々も敵の作戦を根底から覆して見せる。
それだけのことだ。
作戦会議は三日に渡って続いた。
諸提督は遅滞戦闘における基本戦術の立案と、ティナの復帰後の攻勢計画まで、全てにおいて細部まで
練り上げた。
ティナ提督は病院での療養を命令された。
無論、休んでもらうのではなく書類の整理などの、事務的な部分を暫く補ってもらう。
凡そ半年ほどするとティナ提督の傷も完治する。
完治するまで療養してもらうか、復帰が可能になったら即刻復帰してもらうかは、帝国戦線や他の戦線の
状況による。
「諸君、やっと我らと対等の相手と戦うことが出来るぞ」
そう、楽しそうに言ったのは帝国7王騎士の軍王騎士シエル大将だ。
今は大帝国の緊急招集会議より2か月後のことだ。
帝国と大帝国は、お互いの動きを完全に知っており、世にも奇妙な事態が発生した。
両軍、撤退を行うのに追撃が一切ない。
講和会議を行ったわけでも、休戦協定を結んだわけでもないのに、両軍が戦線から離脱する。
中央大陸史上初めての事態である。
そして・・・両軍は、最大戦力を戦線に投入していた。
大帝国精鋭約4万3千 対 帝国精鋭約2万 である。
正確には大帝国43052 対 帝国19402(+60体)で、この60体と言うのは
幼王騎士率いる部隊、傀儡部隊の隊員のことなのだが・・・。
とりあえず、帝国の各部隊について説明しておこう。
狂王騎士オズベル大将率いる『機動遊撃戦連隊(再編)』3千名
冷王騎士ジール大将率いる『魔導師師団(再編)』1万名
戦王騎士エミシャイル大将率いる『魔導武装白兵戦大隊(再編)』5百名
軍王騎士シエル大将率いる『最新武装試行歩兵旅団』5千7百名
慈王騎士メフェリ大将『単独行動兵(新武装)』1名
残酷騎士螺良(ララ)大将率いる『火炎魔法運用魔導中隊(再編)』2百名
幼王騎士ミーシェ特例大将操る『傀儡部隊』60体
以上が、帝国の戦力である。
幼王騎士は14歳の少女だ。
軍に入れる最低年齢は16歳。
何故彼女が14歳にして、幼王騎士の座についているかと言うと・・・魔法だ。
彼女は重力魔法の神童である。
重力魔法に関しては、ティナやシェル、アメリを軽く凌駕していると言えるだろう。
そんな重力魔法の神童が行きついた戦い方が・・・人形使い{ゴーレムマスター}だ。
60体というのは、彼女が同時に扱える人形(ゴーレム)の数だ。
基本的には精密的に扱う為、20体程度で運用する。
斬っても死なない物体を相手にするのは、歩兵からすると恐怖でしかない。
それに、鉄で作られている彼女の人形(ゴーレム)は、防御力と攻撃力の両方を兼ね備えている。
以上が幼王騎士の戦いかたについてだ。
現在、7王騎士の殆どがこの戦争を楽しんでいる。
戦の天才たち、彼らを満足させられる程の存在は中々いない。
しかし今日、大帝国の英傑たちが自分たちの前に立ちはだかった。
これ程嬉しいことはそうそうないだろう。
彼らは今までに見たことない程やる気を見せていた。
なんせ、この戦場にいるのは百戦錬磨の英傑のみ、前線司令官から一兵卒まで・・・
数多の戦場を生き残った精鋭。
7王騎士たちは、情報整理から作戦の立案まで、自らが持っている能力全てを全(フル)活用して
徹底的に行った。
無論それは、8色8役聖騎士も同じこと。
だから・・・7王騎士はこの戦いをこう呼んだ。
「諸君、真戦争(トゥルーウォー)の始まりだ」
真の戦争、強者のみが集まったこの戦場だからこそ、その言葉が相応しいのだろう。
そして、この戦場にいる誰しもが・・・史上最大の戦になることを予感していた。
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