地獄から転生した俺が、48日間で人間界を滅ぼす話

@seinyan

0日目

--人間、死ぬ気になれば何でもできる


僕は何もできなかった。

だからこうして、高層ビルの屋上から身を投げ出そうとしてる。

死ぬ勇気はあっても、今を変える勇気は無いのだ。


「普通の人生を送りたかったな」


まさに、人生を終わらせる一歩を踏み出したその時。世界の時が止まった。

僕の思考だけは動いている。

でも、身体が動かない。


「なんだ、これ」


どうやら言葉を発する事はできるようだ。

すると目の前に黒い球のようなモヤが現れた。


「日本、自殺する人多すぎるだろ」


その球体が急に喋り出した。

僕は恐る恐る球体に話しかけてみる。


「あ、あなたは女神様ですか」


「いや、私は悪魔だ」


「あくま?」


「そうだ」


正直、期待はしていた。

でも、少し予想とは違う。

女神様が現れて異世界に転生されて、人生をやり直せるみたいな、そんな展開を予想していた。


「僕はどうなりますか」


「このまま地獄に連れて行く」


「!?」


地獄のような日々から抜け出す為に死を選んだのに、今度は本当に地獄に連れて行かれるなんて。酷すぎる。

悪魔は淡々と喋る。


「自殺した人間は例外なく地獄行き。どんな理由があってもだ」


僕は悪魔へ質問する。


「地獄とは、どんなところですか」


悪魔は動かない僕の身体の周りを、フワフワと浮遊しながら質問に答えた。


「平たく言えば、死ねない拷問だ。

基本、一つの拷問をローテーション。

人間界単位で48時間ずつ行なう。

どの拷問にも痛みを伴う。

身体的な痛みと精神的な痛みだ。

到底、人間では考えられないような悍ましい事がメインとなる」


悪魔は話を続けているが、僕はもう聞いてはいなかった。


まさに、絶望。


死ぬ事に希望を持っていたのに、結局死んで更に絶望するなんて。


すると、話をしていた悪魔がピタリと会話と動きを止めて、僕の目の前まで距離を詰める。


「いい感情だね。悪魔はその負の感情を動力源にしてるんだ。」


僕はもう、どうにでもなれという感情だった。

こんな事になるんなら


「自殺なんかしなければよかった」


そして僕は真っ逆さまに絶望の更に絶望へと堕ちていった。


-


--


---


----僕が死んで、地獄で過ごした経過時間。

人間界単位で48秒。

地獄単位で48年。


僕は蘇った。

幸い僕は人気の少ない場所へ飛び降りていたおかげで、まだ騒ぎにはなっていなかった。


「・・リムル」


僕はリムルを呼び出した。

僕が死ぬ瞬間に現れ、僕を地獄に連行したあの悪魔だ。


「はい!サクヤ様!」


頭の悪い奴だ。


「リムル、ここは人間界だ。

人間の姿になれと言ってあっただろう馬鹿が」


リムルはアタフタした動きをしながら怯えた様子をみせた。


「すみません!すみません!!えと、えとー!ど、どんな姿がお好みで?」


僕はリムルをひと睨みした。


「ひ、ひえぇえ!ご勘弁をー!

お!あれは人間界の雑誌ですね!

では、この女を真似てみましょーーいよっと!」


リムルは新垣結衣奈と瓜二つに返信した。

・・・馬鹿が逆に目立つだろうが。

まあいい。

僕は路地裏から大通りに向かう。


「さて、リムル。

それじゃあ始めようか。


人間界を滅ぼすぞ」


リムルは目を輝かせピョンピョンと飛び跳ねる。


「はい!サクヤ様!!」


僕が絶望したのは、勿論僕のせいじゃない。

追いやった人達が悪い訳でもない。

この世界が悪いのだ。


だから、僕は全てを壊す事にした。

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