奏でるかなで
齋藤輪廻
第1話
彼女は幼少期から感性が他の誰よりも飛び抜けていた。
故に人の感情に敏感であった。
彼女が疑問に思うことはすべて世の中の人々には気づかれなかった。
この世の全ての神秘。
生き物、自然、空、何もかもが彼女は美しく見えた。
しかし、その彼女だけが持つ才能を誰も。彼女すら気づけなかった。
神ノ木 かなで。
彼女は保育士をめざしていた。
純粋で、純白の子どもたちが彼女と似ていたのだろうか。彼女は子どもたちを全力で愛している。
彼女は社会に適応しようとしていた。
彼女自身の心を殺して。
この世には美しいことだらけなのに、どうして大人は気づけないのか不思議で仕方なかったが、彼女自身が大人になりこの世はその美しさに気づけないほど、大人達が疲れ切っていることを知ったのだ。
彼女は苦痛だった。
それを共有できないこと。自分だけの世界は作れないこと。だからせめて、子どもたちには教えてあげたかった。そして、一緒に同じ心を通わせるのが唯一の生きる意味だった
そんな彼女に運命的な出会いが訪れた。
ピアノを弾くことになった。その際、ピアノのコンサートへ行くことになった。
ピアノ。それは。
自分だけの世界を表現できる。
この美しい世界を、全力で出せる。
彼女は、心が震えるのを感じた。
奏でるかなで 齋藤輪廻 @rene3132232
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