怪異記録
たまごごはん
雨宮さん
女子高生(18)からの依頼
今夜0時半に××中学校の校門前に来てください。よろしくお願いします。
0時20分、校舎が見える位置まで移動。
0時25分、校門前に依頼主の姿を確認。
「あ、どうも…」
ぺこり、と女子高生が軽く挨拶をする。
「あと5分くらいですが…」
「はい…」
言葉少なにうつむく女子高生。
「あなたが見たんですか?」
「……はい…」
以降会話はなく、そのまま3分くらい経っただろうか。
校門の正面にまっすぐ横たわっているひらけた道路。
自分たちの左側に違和感を感じてそちらを向く。
「ひ、ぃっ」
隣の女子高生が小さく悲鳴を上げた。
20メートルくらい先、街灯に照らされて黒い姿が見える。
道路の横幅に沿うようにして蜘蛛のように細長い手足が4本地面に接地している。顔だけがぼうっと白く浮かんで見える。真ん中で分けたような前髪は長く、後ろの髪は首回りにざく切りのようになっている。
人間の顔に似てはいるが口は大きく、にんまりと上に持ち上がっている。
目は真っ黒で穴が空いているように見える。
これが『雨宮さん』か。と観察していると、雨宮さんがかくん、と首を90度に曲げた。その状態のまま四つん這いで、こちらに走ってくる。
「は、ぁああ…」
女子高生が隣で気を失った。
すごい勢いで雨宮さんが接近してくる。あと1メートル、もう触れる…
…と、女子高生と私を素通りして、後ろ4、5メートルの場所にある街灯の光に向かって口を大きく開けた。
「あ゛ーーー」
街灯に手足をかけて、光に集まっている虫を食べていた。
依頼主様へ
『先日ご依頼を受けた件の対応として、
1、依頼主様へのお祓い(除霊)
2、校門前に0時半に出現する怪異の無力化
を実施致しました。
無力化したことにより人間に害を及ぼす可能性は低くなりますが、依頼主様の方でも今後この怪異に関わる事の無いようにお願い致します。』
はあ、と溜め息を吐いてノートパソコンを閉じた。
どっちも実施していないがあれは虫を0時半に食いに来るだけの怪異だ。
――2023,10,1
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