第43話 2009年、世界同時不況

2009年は、金融危機に端を発した世界同時不況が、電機や自動車など輸出企業の業績を直撃した。


需要の激減が響き、電機大手8社は合計2兆円超の純損失を計上。各社は過剰な在庫の絞り込みに加え、経費の圧縮を迫られた。多くの非正規はクビになり、急激な業績悪化の責任を取り、大手企業のトップ交代も相次いだ。


そんな年。2009年。

俺は大学3年となった。


同級生の福田を「アパレル、やってみんか?」と言って、服飾についての勉強をさせている。

人間変わるもので、「わかった。真田が言うならやってみる」と反論はない様子。

高校から、こうなら仲良くは、…やっぱり…なれなかったろうなぁ。バリバリのギャルだったもんな。うん。


ブログも好調で、なんと梨沙のブログも合わせて…月1000万円の収益に到達した。


世界の不況を予測して、それに対する注意喚起を何度も何度もブログを通して行ったせいか、一部では【救世主】と崇められている。

本当に、辞めて欲しい。


だが、非常に観覧者数が伸びたのも事実だ。某有名検索サービスで〇〇についてと調べれば、たいてい俺の傘下にあるブログが上位に位置するようになってきた。


これは福田両親を人材派遣会社で雇い。有用な人間にブログ記事作成を頼んだ為、加速度的にブログ数と記事数が増えた為である。


現状で1000万なら、…1億を次の目標としようか。そんな事を考えられる余裕も生まれてきたのであった。





そして、ようやく。


待っていたものが完成した。



待望の新居が…出来上がったのだ。






――――――真田家。



「「「「「新居、おめでと~~~~~う!!!」」」」」


「あ、いや…ありがとうございます。…あ、ども。」


近しい関係性の人間を呼んで、お祝いとなった。


佐々木両親、渡辺さん、そして福田家。


福田両親は、現在オフィスを借りて人材派遣業を行ってもらっている。

今後、非正規社員が大量にクビを切られるため、受け皿としての仕事を渡せる様にしていく。特に文章能力やパソコン能力に強い人材の情報は、いくつかピックアックしておいて貰い、今後の事業拡大の際には雇用していくことにしていく。


これは1990年から2020年までの日本は経済成長に乏しく、諸外国に比べて生活の困窮も強く見られる…未来の俺の知識から。


どうにか日本が強い産業を持ってもらおうと。2009年現在から画策を始めていた。

…10年くらいでなんとかなる…ものなんだろうか。そんな自問自答は置いておいて、出来ることから始めてみた。



「会長、本日はお日柄もよく…」


「勘弁して下さい、福田さん。…真田くんで良いですよ。新居祝いに来てくれてありがとうございます。」


「な…何をいいますか!ウチの…【e-smile】グループの会長になるお方が…そんな飄々と…。」


「いやいや、だって…俺は何にもしてないっすよ。人材派遣は福田さん達に一任してるし…アパレルブランドも娘の福田さんにお願いしてるし…」


両親は福田恵美を見つめる。

「うん?真田…多分、【もっと偉ぶってくんね?】ってことじゃね?」


「んん。…別に偉くないからなぁ。」


佐々木母も横に来る。

「…真田くんはホント変わらないね。あ、あたしもブロガーとして【e-smile】グループに入ったから、【会長】って言ったほうがいいかしら?」


「勘弁して下さいよ…。あ、どうすか?おばさん。キッチンあんな感じで?」


「うんうん。最高でしかないわね!!今度料理させてよー。」


「…待ってます。ホント。」


佐々木父も来る。

「おお、久し振りだね。真田くん!」

「お、おじさん!」


「いやぁー、助かったよ。俺も非正規だったから大手にクビ切られてよ。【e-smile】グループの配達員に選んでくれて…ホントに助かったよ。」



「いや、こっちこそ。パソコンパーツの個人売買も企業でやりたくて。…でも運搬費用が高いんスよ。…専属でドライバーが出来て…ホント助かったッス。」



佐々木妹達は…梨沙と玲奈とやいのやいの話し合っている。

時折「きゃーーーー!!すごーーーい!」と歓声が上がるが、…テンションが怖くて近寄れない。



「賑やかね。…元気そうでホッとしたわ?」


「渡辺さん…。」


「福田さんの件でお邪魔した以来ね。ホントに…スクープをくれるのは助かるけど、貴方はホントに話題に尽きない人間ね。」


「あ、ああ…そん時は助かりました。…俺、半分も全然内容分かってないまま渡辺さんに託したから…大丈夫になって良かったッス。」


「もう…。ビックリしたわよ。【悪いやつが居るみたい】って内容しか…貴方、言ってこないから。真田くん自身の危機かと思って…ホントに焦ったわよ。」



「あ、あはは…」



「真田くん…貴方は今、幸せ?」


「んん。…幸せだとは…思います。」


「そう…。覚えておいて。」


渡辺さんは、玲奈と梨沙を指差す。

「貴方を幸せにしてあげたいのは、あの2人だけじゃないの。【女性の愛】とは違うけど…貴方には本当に幸せになってもらいたい。私を含め、ここに集まった皆はそう…思っているわ。


「…嬉しい、ですね。本当に。」



「何度も言うわ、真田くん。貴方が助けて欲しいと感じたら…直ぐに言って。いつだって、どんな時でも。ここに居る人間は。貴方を助けに来るでしょう。」



「…うん。嬉しいね。」



「…なんで言ったと思う?」


「…さあ?」



「貴方は…すぐに自分を投げ出して。他の人を助けるからよ。…助けてくれて嬉しいし…福田さん達も感謝するけど。…芸能界の人間を数人は敵に回したようなものだからね?」



「…わかってる。前に周囲を探偵がうろついていたよ。…アレは滑稽だったなぁ。ちゃんと隠れてないんだ。ずっとおんなじ場所に停まってる車も…目立つよね。」



「危険な事だけは…避けてね?」

真剣な表情で、渡辺さんは告げる。


「…うん。そっちもね。」






「ああーーーーー!!!ここだ、真田くんの家。おおおーーいい。来たよぉ!」



玄関先には、大きな声で派手な化粧の女性がいた。



「あ、ちょうどいいな」


「???」




「自宅に警備保障…付けてみたんだ。どんな流れなんだろうね?」




「ちょ…どうやって開くの?この扉…!あ、チャイムあるじゃない。…私ぃ大学の友達で、【佐々木笑】って言いまぁす。真田くん、いますか?」



「ああ、伺っております。その名前が来たら、するようにと」



玄関は遠隔で近くの警備保障会社に繋がり、即時対応される。


prrrrrrrrr prrrrrrrr

「はい、もしもし。」


「真田様、例の女性が来たようです。」


「ああ、家に居るから知ってる。…対応、見ててもいい?」

「お任せ下さい。」



「ななななな、何ですか!私は友人の新居を…」

「…こちらに来てもらおう。」


5分もせずに屈強な男たちに連れ去られる、大学の友達とやら。


どうなったのか、結末も聞いてみたいものだ。


これからは安全にも…力を入れていこうかな。

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