第9話 働いてもらって稼いで豪遊
えらい目にあった。
同級生に、延々と佐々木さんとの間に聞かれるのは辛い。
俺はとにかく、バイトとバイト先の息子ってだけだと応えた。
だが、佐々木さんは違った。
「なんにも知らない私に…一つずつ丁寧に答えてくれて…本当に頼りになって…300台をやり切れたのは、真田くんが居てくれたからで…。本当に。本当に…大切な人なんです…。」
そう答えたら。
もう付き合ってると思われてしまうのは、確実で。
「いやいや、困ってたから助けただけで。それ以上は無いじゃん。勘違いされるって。…そんな言い方したらだめだよ、佐々木さん」
しっかり否定したら、同級生にめっちゃ詰められる。
「お前、人の心無いの?」
「やばっ。こいつヤバいって。」
「流石にお前…無いって。」
皆、具体的な発言をしないことが…非常に気になる。
「…私、助けて貰っただけだしなぁ…そう…ですよねぇ…」
佐々木さんは、非常にどんよりしているし…。
どうしたら良いんだよ…。
クラスメートに、佐々木さんの仲間だけは増えているのは見て取れた。
俺の仲間はおらんのか…
ギャルの3人組だけが、上機嫌に俺の背中をバシバシしていた。
「お前、面白いな~。」
「真田、やるじゃんか~。」
その日はそれで学校は終了。
帰宅してから。佐々木さんが来るまで、少しブログを確認する。
①動画サービスの初心者への使い方 1000pv
②動画サービスでのオススメの紹介 500pv
③サッカー日本代表 25pv
④日本代表野球 25pv
⑤節約料理 25pv
⑥今後の時代予想 25pv
⑦金融ブログ 5pv
⑧検証ブログ 5pv
⑨雑記ブログ 1pv
⑩企画ブログ 1pv
こんなものだ。やはり新興の動画サービスは強い。初期で1000pvイケるのはでかい。pvは観覧数ね。
将来これがtuberになることを考えると、俺は初発で稼げているのは強い。
チャンネルとしても、同様のチャンネルを作ろうと思っている。
それぞれに出演者を決めていく形で、俺は全面には出たくない。
そう思っていると、佐々木さんが来訪する。
「…お邪魔します。…ただの。…ただのクラスメート佐々木です。」
負のオーラ全開でくる。
「と…とにかく、pcを修理していこう!」
無理に修理を勧めていくも、そういった時に限って修理依頼が少ない。
「…はぁ。」
ため息の多い佐々木さん。しょうが無いな。
「佐々木さん、街行かん?」
「へ?」
「街で美味しいの食べよう?」
「い…いや、私お金ないし、働きに来てるし…。ごめんなさい、集中してなかったから…」
「違う。」
「え?」
「俺が豪遊したい」
「へぇ????」
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街中
「かー。旨い。甘いものを気兼ねなく喰えるのも、この年齢ならではだよなー。」
「あ…あの、良いんですか?」
「あー。クレープとパンケーキ最高。どしたの?嫌い?」
「…あ、ああ。…す、好きです、大好きです。甘いの。」
「そっか。良かった。」
街中で1番人気店と言えるデザート専門店に、俺たちは来ていた。
もちろん奢りだ。
30過ぎた頃には、もう節制し始めていたから。
殆ど満腹まで食べることは無かったが…うまいものは若い内に食べるに限る。
「じゃ…じゃなくて!パソコン修理が…」
話は簡単に、現実へ戻される
「だって依頼が少なかったじゃん。もうやりきったよ?パーツ販売も入荷待ちだし…」
「そ…そうですけど…。こんな奢って貰っちゃって…」
「…俺さ。友達少ないんよ?」
「あ、ああ。はい。…でも話す人は、居ますよね?」
「ああ、多分あれは知り合いであって…友達では無いような気がする。」
「そんな…ものですかね?」
「うん。そう。…でね、佐々木さんに提案がある。」
「あ…はい。何でしょう?」
「俺は佐々木さんと、友達になりたい」
「え?」
「今までは、同級生」
「あ、はい。」
「これからは、友達。」
「何が…違うんですか?」
俺の手元のクレープとパンケーキ。
佐々木さんの手元のケーキ3種を指さして答えた。
「こんな時間を一緒に過ごさない?って提案。」
「同級生とは…行かないんですか?」
「行かないですねぇ~。」
佐々木さんはどんどんと表情を明るくしていき、最後には笑ってしまっていた。
その笑顔は、ボロボロの髪でオドオドしていた以前とは。
もはや別人であった。
「…嬉しいです。わたしで良ければ、ぜひお友達になってください。」
「私…私は…」
~~~~佐々木目線~~~~
彼女になれるかも。
パソコンの修理作業中にはそんな事を思っていた。
女性への関わり方に全くと言っていいほど慣れていない様子を伺い、その誠実な姿にどんどん惹かれていった。
同級生から聞かれた時には…つい本音をポロポロと話してしまっていた。
それを真正面から否定されるのは…ちょっと辛いものがあった。
でも、分かった。
今日は少ないパソコン修理。
それでも、時間があればブログをやる真田くんは…私がまだわからない修理方法があると時間を割いて、丁寧に何度も教えてくれる。
ああ…やっぱりこの人は安心する。
借金の借り主の息子とは大きな違いがある。
あの人に身を委ねていたら。きっと今は…。考えるだけでも恐ろしい。
真田くん…。
この人に深く関わるようになってから、私の人生は好転した。
大学を諦め、就職を考えていた私も。
これなら大学に通いながら、家にお金を入れることが出来るのでは無いだろうか。
この選択肢を与えてくれたのは、同級生の真田くん。
彼は根暗ではない。静かに物事を考えるだけだ。
一緒にデザート専門店に向かう時、私はデートみたいだと感じてしまった。
振られたようなものだと言うのに、私は現金だな。
彼は言った。
「友だちになって」…と。
この人は他者への壁が非常に高い人だと、その時初めて知った。
今まで色んな事を質問した。
パソコンの事、家庭のことから始まって。
クラスに好きな人は居ないのか?どんな人が好きか?
決まって答えた。
「あんまり興味ないかな」
その言葉に何度も心が折れそうになった。…というか、しっかり折れていた。
でもね、もう大丈夫。
ああ、まだ私は真田くんの事を理解できていなかったんだなと。そう思った。
私の目指す最初の目標は決まった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「…私、真田くんの。1番信用できるような…そんな友達になりたい…です。」
「おう。それは…頼もしいな。もっと喰ってくれ、友達。」
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