クズな妻にATMにされた俺は、18年巻き戻って富豪でFIREする

書きの助

第1話 人生って何でしょうね?

もしも。◯◯な時に戻れたら。



いつも、そんな後悔をしてきた。そんな人生だった。


普通に大学へ行き、普通に就職し。

普通に恋愛して、普通に結婚。


…したつもりだった。


大学では徹夜の麻雀やソシャゲにハマり、学んだ事と言えば点数計算しかない。

バイトも楽なモノばかり選び、何も身についていない。


そんな大学生だから、就職先は選べない。


条件の良い企業は有能な奴から選び、俺みたいな無能は選ばない。

もちろん行けたのは定時なんて形だけのブラック企業。


人気のないソシャゲを苦情の度にアップデートする、やりがいもクソもない仕事だ。


それでも、恋愛は出来た。


同僚の愛想の良い女性【佐々木 笑】。


美人とは言い難いが、目鼻立ちがくっきりしており、職場でも常に色んな人と上手く交流出来る、世渡り上手な女性だ。


ボッチ気味な俺に、よく声をかけてくれるものだから。

俺は、簡単に恋に落ちた。


給料全てを彼女に注ぎ込み、何度も告白して…ようやく。付き合って貰った。

家族もおらず、借金を抱えているとのことだったので、返済にまで可能な限り協力したよ。



副業までやった俺は、自分でもそこまでやるんだと思えたよ。

OKを貰った時は、本当に人生でも最高の瞬間だった。


数回身体を重ねると、彼女は直ぐに娘を妊娠した。

すぐにプロポーズし、結婚した。


すると彼女は、仕事を辞めて家庭に入った。

「初めての育児だから、ちゃんとしたいの。」


苦しい時代だが、大好きな彼女の希望を飲み込んだ。


今迄より残業や副業を増やし、どうにか家庭に金を入れ続けた。

慣れない仕事でもなんでもやった。


幸せにしてやりたい。

その一心で働き続けた。


…最近は【FIRE】という言葉もよく聞く。

これは「Financial Independence, Retire Early」を略した言葉であり、直訳すると「経済的自立と早期リタイア」という意味だ。


配当金等をくれる株を多く保有し、働かなくても…その配当金を受け取っていれば、生活が出来るという考えだ。


これくらいまで、貯蓄して投資もすれば…この生活から抜け出せるかもしれない。

妻を。愛する人間を、もっともっと大事にする時間が、生まれてくるかもしれない。


少額であったが、俺は投資にも勉強を始めた。

副業も様々行い、収入も増えたため少しずつリスクの無い株から投資していった。


失敗はあるが、すべて小さなモノだ。

俺は家族を幸せにするために、文字通り、命をかけたような寝食を削った生活を続けていった。…毎晩、家族が眠った後に帰宅して、起きる前に出社して。





…それがどうして、こうなった。





娘が3歳になった一週間前。


妻から離婚届を渡された。

頭が真っ白になった。


理由は家庭に帰ってこない、ワンオペ育児が辛いからとの事。

何度も改めると伝えるも、妻の意思は硬い様子だった。


一週間で迅速に準備を進める妻。

一緒に住んでいたワンルームマンションは、何にも無くなった。

殆ど会社に住んでいた様な俺は荷物も少ない。


今日。

何にも無い自宅が嫌で、俺は亡霊の様に街に出た。


いつもなら休日出勤していたが、今日は何にもやる気がおきない。


街をぶらついてると、カフェで妻と娘と元上司【大塚 大貴】がメシを食べているのを見かけた。


「やっと、そっちも別れたか」

「ホントっ、長かったわ〜」


ん?…なんで元上司と会ってるんだ?

この2人、仲…良かったっけ?


俺は妻への興味で、聞き耳をたてる。…たててしまった。


娘がケーキを美味しそうに食べているのを両者が見ており、元上司がにこやかに言う。

「俺の娘も、もう3歳か」

「貴方が別れるの待つなんて…最初の話と全然違う。詐欺よ詐欺。」


…俺の…娘?…何…言って…


「でも、楽な生活出来たじゃねぇか。」

「…そうね。育児は実家にある程度手伝って貰ったし、結構ベビーシッターも使ったし…」


嘘だろ?…そんな金あったか?


「生活費を高く伝えておけば、信じてお金を持ってくる良い男だったわ〜」

「それなら、あっちを選ぶか?」


遠目で見ても、妻の表情が邪悪に歪むのが見えた。


「嫌よ。い~や〜!」

「あんな…根暗な人間となんて、過ごしてらんないわ」


「私は…他の人が羨ましいと思うような、特別な人と結婚するのよ。」

「ははっ。それが俺か。」


元上司は仕事が出来た。

ブラック企業から優良企業に早々と転職し、その経験を笑いも交えて動画にしていた為、動画発信者としても人気だ。


聞いてらんない。

そう思った俺は、妻と元上司に詰め寄る。


「…聞こえたよ。どういうことだ?」


元上司は俺の顔にピンときていない。元々同じ職場で働いていたってのに。

妻が耳打ちで伝えて、理解を示したようだった。


「…んん?ああ、…なんだATM君か?」

「…え?何?ストーカー?」


「…こんな話が世間にバレたら、大塚さん。アンタどうなるか分かってんのか?」

「んなっ!!?」


「え?何?どういう事?」


「人気な職業でぬくぬくしている人間が、男女関係のトラブルで失脚するってのはよくある話…」


「…黙って聞いてりゃ、てめぇぇぇぇ!!!!」


混乱し、逆上した元上司が、手に持ったステーキ用のナイフを俺の首に突き立てた。


突然の凶行に驚き、何も出来なかった。

普通、立場や理性のある人間がいきなりナイフを人に突き立てるだろうか。


…え?こんな街中で?

いきなり刺すの?絶対捕まるよ?

借りにも娘を受け取る人間の行動じゃ…ない…だ…ろ…


…そんな少しズレた感想を持ちながら、俺は意識を失った。

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