第8話 頑張った分だけ報酬を! 我慢しただけ泣けばいい。先生は受け止めよう。
仕事の合間のおやつタイム。
それは至福の時である。
学校の先生をしていた時も、昼休憩に甘いものを食べるとホッと疲れが取れた。
生徒達は色々問題を抱えていたりと大変だが、先生だって疲れる時は疲れるのだ。
そう言う時こそ、甘いものは体に優しかった――。
「今日はロールケーキにしてみました」
「おおおお!」
「「ろーるけーき?」」
そう言ってネットスーパーから買ったのはちょっと大きめのロールケーキで、それを包丁で四つに切って一人ずつの皿に乗せていくカナエ。
生クリームタップリのロールケーキに、飲み物は俺とカナエは珈琲を、子供達にはパックに入った牛乳が出された。
確かにジュースよりは牛乳の方が二人の身体に良いだろう。
是非健康的になってくれ!
「それでは、頂きます!」
「「「いただきます!」」」
そう言ってまず二人は不思議そうに牛乳パックを見つめ、俺とカナエで飲み口を作りコップに牛乳を入れてあげると、恐々とした感じで牛乳を飲んだ。
途端尻尾がピ――ンと立ち、ゴクゴクと飲んでいる。
余程美味しかったらしい。
「カエデ、冷蔵庫には二人が飲む用の牛乳を用意して上げておいてくれ」
「分かりました」
「宜しいんですか!?」
「こんなにおいしいのに!?」
「飲み過ぎは良くないが、牛乳は骨を強くする。今まで栄養不足だったんだから、うちの子になったんだからシッカリ健康的になって貰うぞ」
「「先生……」」
「ほら、ロールケーキも食べてごらん? とても美味しいから」
そう言ってロールケーキに齧り付く俺に、二人は嬉しそうに微笑んでロールケーキを食べた。途端こちらも尻尾をピ――ンと立てて美味しそうに食べている。
そんな様子を見て、子供がいるのもいいなと思ってしまった。
結婚もしてないし実の子でもないが。
「「おいしい――!!」」
「ははは! 良かったな!」
「明日の朝にはキャンピングカーに乗って出発ですか?」
「人目にはつくだろうが、人の行き交う道は走らない。ガタガタするかもしれないが、歩道の隣を走ろうと思う」
「確かに道が整備されてるのなら、その周辺は綺麗かもしれませんね」
「もし行き交う人がいなければ道を走るが、こればかりは分からないな」
「人が居ないといいですね」
「そうだなぁ……」
「キャンピングカーもレベルアップするんでしょうか?」
「項目は選べたはずだ。ポイントをドンドン溜める為にはやはり商売だが」
「次の国でも頑張って稼ぎましょう!」
「そうだな!」
こうしておやつタイムを満喫してから、夕食の時間まで各自仕事をスタートさせた。
その内自分の店を持つのもいいかもしれない。
まぁ、まずは安全に暮らせる国で拠点がないとだが……。
道のりは長いな。
そう思っても楽しいと思えるのだから、この子たちのお陰だな。
シュウとナノは人間に虐待されていただろうに、俺達に対して心を開いてくれている。
元が素直な性格の子なんだろう。
どうしてあんな所にいたのかは、多分人攫いにあったか何かだろうとしか思えなかった。
今は洗い替えの洋服も下着もあるし、靴もシッカリしたのを履かせている。
まぁ、拠点の中では裸足か靴下でと言うのが基本ではある為、出入り口付近に小さな靴が並んでいる光景はムズ痒くて幸せになる。
俺は、もうこの子たちの保護者なんだなと思えた瞬間だ。
仕事時間は夕方18時までと決め、時計が18時になった時点で仕事は終わりだ。
大分作れた二人の仕事にノートで瓶の数と仕事時間を二人分記載する。
「あの……」
「ん? どうした?」
「余り、仕事出来てなかったですか? 何分初めてなもので」
「初めてにしては上出来だ! このノートはな、二人がどれだけ頑張って、どれだけの時間仕事をしたのか記入してるんだ。この世界の給金の事は分からないが、ノスタルミア王国にいって、その国の給料を聞いたら二人に支給しようと思ってな」
「え!? 奴隷である俺達にですか?」
「当たり前だろう? 働いた分だけ報酬は受け取るべきだ」
「ですが、俺は貴方の奴隷です……」
「良いかシュウ、それにナノ」
「「はい」」
「自分たちを奴隷と思わなくていいんだ。俺達を家族と思って欲しい」
「家族……ですか?」
「もし奴隷契約から解放される方法があるなら、俺は大金を払ってでも二人を奴隷から解放するし、俺達は君たちを理不尽に殴ったり叩いたりしない。ただ、家族にするようにご飯をシッカリ食べさせて、お手伝いをして貰って、みんなで笑いあって。悪いことをしたら怒るし、良いことをしたら褒める。そんな風に過ごしたいと思ってるんだ」
そう告げるとシュウとナノは涙を零し始め、二人をギュッと抱きしめると小さな頭を撫でた。
「よく頑張って生きててくれたな……見つける事が出来て良かった」
「うっ……せんせ……」
「うわあああん!!」
泣き出した二人を抱きしめ、ヨシヨシと頭をなでてやると泣き止むまでギュッと抱きしめたまま過ごした。
そして二人はポツリポツリと、どうして奴隷になったのか教えてくれた。
同じ獣人のある男に捉えられ、奴隷として売りに出されたらしい。
同じ獣人でもそんな事をするのかと驚きを隠せなかったが、ご飯も水もマトモに与えられない2年を過ごしたのだと。
獣人と言うだけで疎まれ、何時かは処分されるんじゃないかと諦めていた運命のあの日。
俺達に助けて貰えて本当に良かったと涙を流しながら語ってくれた。
「よく頑張ったな……本当に頑張ったな」
「はいっ」
「ひっく……」
「これからは俺とカナエが居るからな。困った事があったら言うんだぞ?」
「ありがとう御座います」
「ありがとせんせ……」
そう言ってハンカチで二人の目元を拭いてやると、嬉しそうに笑い、俺も笑顔を見せてやれた。
それから晩御飯までの時間はどうしようかと思っていると、ナノはまだ文字が書けない事を教えてくれて「じゃあ後でノートと鉛筆を用意しような」と伝えると嬉しそうに微笑んでいた。
文字は俺のいた世界とは違うが、計算に関しては同じだったようで、明日から夕食前は先生として二人に勉強を教えることになった。
シュウも勉強がしたいと言う事だったので、小学生くらいまでの勉強なら教えてやろうと言う事になった。
無論、此方の世界の知識がどこまでの知識が必要な世界かは分からないが。
その後出来上がったご飯に皆で食器を用意して「ポトフは二日目が美味しんだけどね」とカナエは言いつつ、二人用の飲み物に牛乳を用意し、俺とカナエは後で食後の珈琲を飲もうと言う事で、しっかりポトフを食べて浸パンで食べる姿を見て子供たちも真似し、「フワフワのパンなんて初めて食べた!」と驚きながらも食事を堪能して、食後休憩が終わると俺とシュウ、カナエとナノとでお風呂に入り、俺の要望で入浴剤を入れて貰い芯まで温まってからお風呂から上がり、歯磨きをして寝る前の一杯の水を飲ませてから、各自眠りについた夜。
そして翌朝――。
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お越し下さり有難う御座います。
本日二回目の更新です。
最後の更新は夜8時となりますので応援よろしくお願いします!
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