部活一筋少女の青春革命
ヨッシー
第1話 練習試合、そして出会い
「今日は我が校の男子バドミントン部との試合形式での合同練習です。滅多にない機会ですから、一球一球を大事にしていきましょう!」
「「「「はい!!」」」」
返事と共に、部員それぞれがコートに散らばる。
今日は男子のバド部との合同練習だ。
普段は日程や場所をずらして活動しているが、ずっと同じ部員と打っていても意味がないという先生の配慮からだろう。
男子の顧問の先生もこの話を快諾してくれたそうだ。
「氷帝さん、頑張ろうね」
「うん」
私に声をかけてきた1人にそう素っ気なく返す。
私は氷帝あかり。
自分で言うのもなんだけど、県内での実力はだいぶ高い方だ。
正直、うちの男子があまり強いという噂も聞かないので、私はこの練習にあまり乗り気ではなかった。
とはいえ、いつも打ち合っているメンバー以外と試合ができるのは確かに良い経験と言えるだろう。
どんなバドを見せてくれるのか、私は大した期待は持たずにその練習に臨んだ。
――――
そして実践形式の練習が始まった。
私は1つのコートに固定され、そこに他の部員たちが挑んでくるシステムになっていた。
他のコートは誰が入ろうとフリーだというのに…
そして、やはり男子の多数は私に挑んできた。
…これ練習試合っていうの?
そんな疑問はさておき、私に挑んでくる人たちを次から次へと打ち負かしていく。
思っていた通り、大したことはない。果敢に私を動かそうとする人もいたが、ことごとく失敗していく。
しかし、休憩時間があったとはいえさすがに連戦は疲れるな…
「よろしくお願いします」
また別の人が入ってくる。
彼の後ろに列はできていない。どうやら彼で最後のようだ。
私は気を引き締め直した。足はすでに疲れきっているが、だからと言って全力を出さないのは相手への失礼にあたる。
まぁ、だからと言ってラブゲームで終わらせるのも良くないことだけれど。
「ファーストゲーム、ラブオールプレー」
審判のかけ声と共に、私のサーブから試合が始まる。
練習とは言っても実戦を想定しているので、審判は一応いる。
今さらだが、この練習試合では高校では珍しい、1ゲーム先取15点マッチだ。連戦させられるであろう(現に連戦している)私への配慮も兼ねてだろう。
今主審を務めているあの子は…誰だったか。
人にそこまで関心があるわけではないのであまり覚えていない。
そのせいからか、いつの間にかクラスでも近寄ってくる人がいなくなっていた。
…部活さえできれば交友関係など作らなくても学校生活はできるから別に気にしていないのだけれども。
「ポイント
主審の声が響く。まあこの調子なら問題ないだろう。
しかし、次のラリーで私は驚愕した。
元から前後左右に打ち分けるのが上手いな、とは思っていた。
私が高くクリアを上げると、彼は奥の方に鋭いスマッシュを打ってきた。
その球を返すと、今度はドロップでネット前ギリギリを攻めてきた。
…追いつけなかった。
足に疲労が来ているとはいえ、今のプレーは見事としか言いようがない。
その後も彼はコート上の私を動かそうと様々な球種を打ってきた。
疲労も相まって、私が追いつけない球もしばしばあった。
結局は私の勝利で終わったが、スコアは15-12。かなりの僅差だった。
「「ありがとうございました」」
お互いに礼をして、私は休憩に入る。
しかし…彼は一体何者なのだろうか。私にここまで粘ってくるとは。
なんとなく彼を目で追ってみる。
すると彼は、友達らしき人と話していた。
「海人、氷帝さんとの試合、どうだった?」
「俺としては…想像以上に善戦できた…かな」
「マジ!?どんな感じだったんだ?」
「15-12。正直自分でも信じられない。」
「3点差!? あとちょっとだったじゃねーか!」
「まあね。 でも…彼女に勝てるようになるのが、俺の目標だから。」
「…… お前、俺らみたいなのとつるんでる割に真面目だよな…」
「そう?」
「そりゃそうだろ。 ……まぁ、あと少しなんだ。頑張れよ。」
「おう!」
なるほど…彼は海人という名前らしい。
そして…私とは正反対のタイプのようだ。
とりあえずは、私に衝撃を与えた選手ということで、彼のことは覚えておこう。
そう決心した。
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