11.俺たちも帰りましょう
心から、そう感じられた。
「ありがとう……
「なんか、ヒーローみたいだね」
「え?」
「変身して怪獣をやっつける、カッコいいヒーロー。ほら、俺がもっと強ければ……みたいな」
「あたしも
「うん……。本当に、そうだね。
「ねー、ついでに
「ゆ、
「すごい。
外野の声は無視した。いや、ありがたく
「
「まあ……ね。開いてれば、の話よね。駄目だったら、
「この際、お金は気にするなって、
「あはは!
三人が、きっと少しずつ元気を分け合いながら、歩いて行く。夕暮れまでには、まだ時間があった。
「皆さまに……特に
「そんな言い方、なしですよ」
「
口をへの字にしたまま、器用な
「昨日も今日も大変で、これからも大変そうですけど……とりあえず、俺たちも帰りましょう。
言いかけて、表情が、また違う形に
「あの、
「もちろん、
悪い予感がした。外れなかった。
「具体的には、お父さまの趣味部屋の中身を処分しまして、
「なっ? ちょっと、なにしてくれてんですか! あの部屋、たくさんあった
「最初からなかった認識になりますので、問題ありません。なぜか、お母さまもすっきりされた御様子でしたので、
「ああ、もう、なんかごめん、父さん……っ!」
********************
夜空に、満月に近い月が昇っていた。
星と月の白い光に照らされて、かすかな、本当にかすかな
「で、どーよ? 今日の、あの感じ!」
『いーね! あんなポヤっとしててもさ、いざとなったらヒーローって、やっぱりカッコいいもんだね!』
姿のない声が、ハイテンションに応じた。
「でしょー? ついつい、イジめたくなっちゃうんだよねー!」
『あたし的には、もうちょっとねばっこく引っぱっても良かったんだけど、それもなんか、空気読めないヤツ、みたいな感じだったじゃない?』
「意識高ーい!
少し、笑い合う。
『でもさ……大丈夫? イジめすぎると、本気で好きになって、
声の、微妙なトーンの変化に、
「わかった風なこと、言うじゃん」
『まあね。あたしだって、
「うっさい! あたしのくせに
『そりゃもー、あたしたちの方は
「いーね、それ。すっごい
『でしょー?』
声が、調子だけで胸を張って、鼻息を吹いたようだった。
『あたしたちは、さ。そういう存在なんだよ。宇宙のあっちこっちで、土と水にしがみつかなきゃ生きていけない有機生命体と、どっちが上か下か、残るか滅びるか……進化の正解と不正解を、くらべなきゃいけないんだよ。その血の
声が、とりなすように、でなければ
『あなたは、ほら、そんなプリプリでムッチムチの、炭素結合と水素結合の高分子を
「なにそれ。
『おっぱいとおしりはそーじゃん』
「そーじゃないですぅー。他の物質も、いろいろ複雑にありますぅー」
「物質が違っても、さ。あたしは
そのまま、ゆっくりと深呼吸する。
「さー! もっともっと、イジめるよー!
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