神獣ケルベロス 5-2
「ダンテ! 行くわよ足引っ張らないでよね!」
ベネッタが叫ぶと同時に、ダンテはベネッタと連携を取りながらケルベロスに立ち向かった。ダンテは得意の身のこなしでケルベロスを翻弄しつつ剣で足を何度も斬りつけ、ベネッタは残りの魔力を計算しながら攻撃する。しかし、ケルベロスはその大きな頭を振りながら、容赦なく炎を吹き出し、2人を圧倒していく。
「くっ、なかなか手ごわい奴だな!」
「ていうか、あまり効果はないみたいね……」
「来るぞ!」
ダンテとベネッタは必死に炎の攻撃を回避し、反撃に転じようとする。しかし、ケルベロスの頭は次第に素早く動き、攻防が激しさを増していく。
「くそ、ダンテ、ベネッタ!」
ヒロはケルベロスを背中から攻撃するが、ケルベロスの頭は3つあり、そのうちの1つがぐるりとヒロに向けられ、強烈な後ろ脚がヒロを襲った。吹き飛ばされながらもヒロは何とか受け身を取り、膝をついた。衝撃を全て吸収することができず、さらにはベルゼルとの戦いの後、ヒロの体力も残り少なくなってきている。
「くっ、そうかケルベロスって頭が3つあるからほとんど死角はないんだった!」
「くそっ、こんな奴にどう戦えってんだよ!」
「弱音を吐かないでよ男のくせに!」
激しい戦いの中で、ダンテとベネッタは次第に疲弊していく。ケルベロスの圧倒的な力と巧妙な動きに対抗するのは容易ではなかった。
「くそっ、こんなの初めてだぜ!」
「ベネッタ、ダンテ! 大丈夫か!? 持ちこたえろ!」
ヒロが叫ぶと同時に、ケルベロスは再び口から炎を吹き出し、ベネッタとダンテを追い詰める。ベネッタは残りの魔力を使ってケルベロスの攻撃を防御しようとするが、その炎はあまりにも強烈で、ベネッタの身体を焼け焦がし始めた。
「きゃあぁ!」
ベネッタは魔力も体力を使い果たし、口から煙を出しながら膝から崩れ落ちた。
「ベネッタ! この化け犬がぁ!」
ダンテは剣を持ち直し、ケルベロスの炎を避けながら反撃に転じる。しかし、ケルベロスはダンテの動きを見逃さず、その巨大な口を開け、再び炎を吹きつける。
「そう何度も炎の攻撃はさせねぇよ!」
ダンテは炎を避け、ケルベロスの懐に入ると、強力な一撃を放った。しかし、ケルベロスの皮膚を斬ることは叶わない。太く長い毛がびっしりと生えており、ダンテの攻撃は失敗に終わった。
「何!?」
ケルベロスは巨体を生かし、前足でダンテを踏み潰した。
「ぐあぁ!」
ミシミシっと骨がきしむような音が会場を包む。豪快な土煙と共に、前足をゆっくりと上げると、ダンテの身体は地面に深くめり込んで気を失っていた。
「ダンテ! ベネッタ!」
2人はケルベロスの前に敗北し、残ったのはヒロただ一人。ヒロは翼を大きく広げ、ケルベロスの周りを猛スピードで飛び回る。飛びながら一撃を何度も加えるがケルベロスにはダメージを与えることができないでいた。
(くそっ! ダメだ! このままじゃ負ける!)
ヒロはケルベロスの猛攻を必死に避けながら、決定打を頭で探していた。ロゼはヒロの戦いを無言で眺める。
(ヒロ、お前がもし魔王の始祖と同じなら、もう一つ隠された力があるはず……)
ロゼは拳をギュッと握りしめ、大声でヒロの名を叫んだ。
「ヒロ! お前の紋章は『煉獄』だ! お前は炎を操り、炎を支配する魔王の始祖と同じ……ケルベロスの炎を逆に利用するんだ!」
「ロゼ様……?」
ロゼの言葉にヒロはハッと目が覚めたように表情が一変する。そしてケルベロスを鋭く睨む。ケルベロスの3つの頭はヒロに向けられ、地獄のような唸り声で威嚇する。
「グルルルゥ、ガァァァ!」
ケルベロスは3つの頭からそれぞれ炎を吐き出した。ヒロの体は炎に包まれた。
「ぐぅぅぅおぉぉぉ!」
ヒロはケルベロスの炎をその身に宿そうとした。次第にヒロの身体はケルベロスの獄炎を包み込み、より翼は真っ赤に染まっていく。より赤く、より猛々しく、ヒロの身体はプスプスとくすぶり始め、ヒロの額の紋章がさらに輝きを増した。ヒロはさらなる進化を遂げようとしていたのだ。ロゼはその瞬間を目の当たりにし、思わず身震いをする。
「この感じ……まさに魔王の始祖と同じ気質……ヒロ!」
ロゼが大きな声で叫ぶと、ヒロは視線をロゼに向けた。
「ヒロ! お前は今、魔法を使えるようになったはずだ! 指先に魔力を集中させろ!」
「指先……」
ヒロは指先をケルベロスに向け、魔力を集中させる。徐々に指先が熱くなり、指先に魔力が集まり始めた。
(魔法ってこんな感覚なのか? でも、なんだ? この魔法はいつ解き放てばいいのか分からない……)
ヒロの指先は熱くなる一方で、魔力が集まり続ける。
「ヒロ! お前のもう一つの力、それは『魔力調節』だ! 炎の威力を強くするも弱くするもお前の自由だ! お前の意思で煉獄を支配しろ!」
(魔力調節……? じゃあ、今の魔法を使ったら……)
ヒロは指先に集めた魔法をケルベロスに放った。指先からとてつもないほど巨大な炎、ケルベロスを一瞬で包み込むかのような煉獄の炎だった―――
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