第7話 分れ道



アイツが仕事に行って、5日も帰って来ない。


まさか蟲人にヤられてしまったなんてこと、、、


そんなことあるはずがない。


探しにいこうか、でもアイツは俺が外に出るのを殊の外嫌がるからなぁ。


あの蟲人はアイツしか倒せない、アイツのメシの俺が死んだら、アイツはこの星を出ていく、そうなったら??


ん?俺が死んだ後ならいいのか?


だめだな、うん、ダメだ、だめということにしよう。


よし、アイツを探しに行こうか。


そういえばこの建物から出るのはどの位ぶりだろう?半年?半年か?


逆によく出なかったよなぁ。


でもオレの最長室内記録は2年だ、まだ行けるな。


山小屋のあの病気のおっさんがデパートの社長で、俺に警備員の仕事を頼まなかったら、きっと今も最長記録を更新してたはずだ。


そういえば社長は無事だろうか。


それにしても、この建物内はなんでも揃っているから、外に出なくても気にならなかったなぁ。


スーパーに服屋、理容室、本屋、ビデオ屋、コンビニとかもある。


それとジムに温水プール、屋上は公園になっていて、犬、猫やインコまでいる。


まぁ犬や猫は、ここら辺一体に避難勧告が出た時取り残された動物たちなんだって飼育してた自衛隊員さんが言ってたな。


それに、ここは特区内だし。蟲人が襲ってきてもおかしくない、ただ目眩しの処置を施していて気が付かれにくくしているだけらしい。


だから危険かどうかと言えば、間違ったら蟲人が侵入してくるくらいの確率らしい。


それってどれくらいの確率だって話しだよな。


俺が立ち上がって玄関まで行くと、俺がドアノブに手をかける前にガチャッと玄関の扉が開いた。


アイツが自衛隊員に両脇を支えられて帰ってきた。


「なにがあったんですか」


慌てて自衛隊員に聞く。


「はい、大型の蟲人が現れまして、倒すのに時間が掛かってしまったんです」


自衛隊員が困り顔で答えた。


「大型?コイツ怪我したんですか?」


「いいえ、ディアロプスさんはお強いので怪我はしていません、我々自衛隊員に怪我人が出ましたけど、今回は特別です、大型の倒し方も分かりましたので、次は大丈夫だと思いますよ」


「そうですか、なんでコイツ動けないんですか」


ディアロプスを指差した。


「それは、」


ぎゅるぎゅるぎゅるディアロプスの腹の音が鳴る。


「あっ、はい、5日間も絶食してたらこうなりますよね、預かります」


自衛隊員からディアロプスを渡された。


「では、失礼します」


2人の自衛隊員は帰った。


ディアロプスをソファーまで連れて行って寝かせた。

ベッドにある肌掛けを持ってくるためとソファから離れようと1歩踏み出す。


手を強く引かれて、手に痛みと共に熱が体中に広がった。


ガツガツと指から食う。


いつもと違う。今までは食いちぎって、再生の余地を与えるのに、今は再生しているところから食ってくる。


痛みと相まって恐怖が込み上げてくる。ドクドクと心臓が不安を押し上げる。


俺を食い遊ぶ時はもっと言葉で虐めて来るのに、今はちがう、目が俺を見てない。


捕食者だ。怖い。


アイツが5日分食い終わるまでそれは続いた。


そのまま寝て、起きたのは2日後。


何かに気がついて起き上がる。


「おい」


俺が声をかけても気が付かない。


そのまま素早く身支度だけ済ませて、俺に齧り付いて食事をして、出かけた。


終始、窓の外を気にしていた。


部屋に一人取り残された俺は、

ただただ不安だった。

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