続・歯医者の話
仁城 琳
続・歯医者の話
初めに、「続」と付けてはいるが、これ単体でも読めるので良かったら読んでいってほしい。そしてもしこの話が気に入ってくださったら、『歯医者の話』も読んでもらえるととても嬉しい。具体的にどのように嬉しいかと言うと、喜びの舞を踊るくらい嬉しい。『歯医者の話』は簡単に言うと、私が歯医者が怖いという話だ。そして何故そんな話を書いたかと言うと、私はあの時、正に歯が痛かったのだ。正確には虫歯では無かったのだが、その後歯医者に行き、治療してきたので、私は大変えらい人間だということで今現在の話をしたいと思う。
『歯医者の話』を書く直前、私は歯が痛かった。私は虫歯などはの不調時だけでなく、肩凝りが酷い場合にも歯痛に悩まされることがある。ここ数年は大抵後者であり、「行くか…歯医者…」と思っているうちに何とも無くなり、やはり肩凝りだったかと解決するのが常である。今回も例に漏れず何となく肩も凝っているような…?という感じなのでまぁ虫歯では無いだろうと思っていた。しかし、食事をしている時に歯が浮くような感覚を感じるようになったのだ。私は焦った。この歯は治療済みの歯だ。治療してもらい、詰め物だけでは間に合わないとのことで「被せ」と言う治療を施されていたはずだ。(「被せ」と言っているのを聞いただけで正確にはどのようになっているか不明だが、恐らく歯の代わりの土台を作った上からなにか被せられているのだろう。)それが外れかけているのでは。こうなると嫌でも歯医者に行かなければならない。さすがに食事に支障が出る。マジか…歯医者か…となりながら書いたのが『歯医者の話』である。
翌日、私は歯医者に予約の電話を入れた。私がお世話になっている歯医者には先生が二人いる。一人はおじいちゃん、もう一人はおじさんだ。よく知らないがおそらく親子である。そして何故かおじいちゃん先生の方は、率直に申し上げて人気がない。個人的にはおじいちゃん先生の方が良いので、私としては首を傾げるところである。一方、おじさん先生の方は中々に人気があるらしく、おじさん先生が良いです、となると予約を取れるのはかなり先になることも少なくない。二人の先生がいるので、予約の電話を入れるとまずは「どちらの先生をご希望ですか。」と尋ねられる。ここはどちらでも良いと答える。稀におじさん先生の方が先に予約を取れる時もあるので限定しない方が予約を取りやすいのだ。などと考えていたが、結局おじいちゃん先生になった。
当日、かなり緊張しながら歯医者に向かう。今回は痛いことはされないので大丈夫。…多分。と思いながら歯医者に入り受付を済ませる。平日の朝ということもあり、そこまで人はいない。それでも数人の人が待合室におり、治療を受けに来たのか付き添いなのかは判別できないが、ちょっと待たないといけないのかな、などと思ってると爆速で呼ばれた。「先生が違うので順番前後致します。」などと言われながら爆速で呼ばれた。待ってまだ心の準備が!と思いながらも、大人なので笑顔で「おはようございます。よろしくお願いします。」と先生や助手のお姉さんに挨拶をする。内心恐怖で死にそうだった。
エプロンを付けられ、しばらく待っているとおじいちゃん先生がやって来た。「よろしくお願いしますねぇ。」と言われて改めて挨拶をする。
「今日は右上でしたかなぁ。」
問診票を見ながら先生が聞く。
「そうです。奥歯の銀歯の所です。なんか食事してると浮く感じがあって、それにグラグラしてる気もするんです。」
「はぁ。なるほど。見てみましょうね。」
椅子が倒されライトを当てられる。あのライトも眩しいから嫌いだ。口を開ける。
「はぁ。あぁー。はいはい。」
おじいちゃん先生はこちらに話しかけるでもなく呟きながら、私の口の中を見ている。何が?何が分かったの?はいはいって何?何が?となりながらも我慢して口を開けたままにする。
「この歯ですね。」
と器具でつんつんされたので
「あい。」
と口を開けたまま答える。
「外れそうなのでね、外して付け直せるかやってみましょうねぇ。」
やっぱり外れそうなのか。そして付け直せるかもしれないのか。これは早く終わりそう、と思いながら
「あい。」
と答える。その直後すごい勢いで外れかけの歯を引っ張られる。そんなに!?と驚愕しつつもされるがままに歯を引っこ抜かれた。めちゃくちゃ怖かった。この時点でその日の体力を使い果たした。怖すぎて。そのまま何故か歯を削られる。私は「どうして!」と叫びたかった。付け直すって言ったじゃないですか!何故削るんですか!!よくよく考えると残っていたセメントなどを削っていたのだろうが、その時の私はそこまで考えが及ばなかったので、気持ち的には車に乗って遠出だ!とワクワクしてたら行先が動物病院だった時の犬猫と同じだった。
ここで、おじいちゃん先生とおじさん先生の違いについて話しておこう。おじいちゃん先生は職人気質だ。多くを語らない。治療中、何をしているのか、むしろ治療前にどのような治療をするのかも最低限しか教えてくれない。怖い。何が起こってるか分からないので治療中ずっと怖い。一方、おじさん先生。こちらはものすごく丁寧に説明してくれる。でも正直分からない。使う器具なども見せてくれて
「こちらの○○を使って△△を□□して行きますので…。」と解説してくれるが、なんか怖いし聞いてる振りをしているが思考は宇宙に飛んでいる。怖い。そんなよく分からない器具見せないでほしい怖い。つまり結論を言うとどちらも怖いのだ。だからどっちの先生でもいい。どちらも怖いのだから同じだ。しかし先生たちの名誉のために言っておくと、おそらく腕はかなり良い。だから予約が取りづらいのだ。近隣住民はもちろん、遠方からも患者が来る。近所に腕の良い歯医者があってかなりありがたいと思う。なるべくお世話にはなりたくないが。
怖い早く帰りたい。と思ってるうちに治療が終わった。
「その歯、差し歯になってたのでね、土台が緩んできてグラグラしてたみたいですね。削って形を合わせてもう一度付け直したので大丈夫でしょう。もし次外れることがあったら土台から作り直しましょうねぇ。」(というような事を言っていた気がする。)
ほーん、なるほどそんな事をしてたのか。よく分からないけど。と思いながら、ありがとうございましたとお礼を言って治療終了だ。受付で今回で終わりですよ、と言われて一回で終わったことに対し神に感謝しながらお金を払って歯医者を出た。治療費もそれほどかからなかった。ありがたいです。
そんなこんなで数年ぶりの歯医者での治療が終わった。前日までグラついてた歯がしっかりと固定されているのは理解しつつも警戒しながら食事を摂る。はぁ、しっかりご飯を食べられるって最高だな。健康な歯って大事だよ、うん。と思いながらもぐもぐしてたら治療してきた歯と逆の歯の詰め物が外れた。驚きと怒りで結構な大声で「はぁ?」って声が出た。取れてもいいけど昨日にしてくれよ…今日一緒に見てもらえたじゃんよ…と私は落胆した。短期間に歯医者に行くのはなんとなく恥ずかしい。でも行かないといけないので電話を掛けた。今、おじいちゃん先生は、あれ、もう取れちゃったかな、と思っていることと思います。違います別の歯です。なんかごめんなさい。
そんな訳で来週また歯医者に行かなければならない。おじいちゃん先生ならすぐに予約が取れると言ったがそれでも電話をかけてから一週間以上後になる。痛くてたまらない!という状態なら飛び入りも歓迎してくれるが、今回は痛みもないので大人しく予約の日を待っている。今度は恐らく大掛かりな治療になるだろう。死刑囚の気分で待っている。まぁでも運命の日がいつか分かっているだけ死刑囚よりマシかもしれない。あと数日か…と思うと憂鬱である。しかしまぁ悪いのは虫歯を放置した過去の自分である。過去に戻れたら昔の自分に伝えたいことがある。
「怖いとか言ってる間に歯医者行ってください。お願いします。」
続・歯医者の話 仁城 琳 @2jyourin
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