第5話 教えてアンナ先生!
夢を見た。この世界に転生する前のあの光景。ただ横断歩道を渡ろうと待っていただけなのに。
スーツ、制服、体操服。その他諸々の格好をした集団に自分は紛れ込んでいた。自分を押し出した腕も、そのうちの一つ。
どうして俺なんだ?なんで俺だけが死ぬ羽目に?
恨まれる理由なんてない...はずだ。それとも自分はここで死ぬ運命だというのか?そんな運命クソ喰らえ!
そんなことを思ってもここは夢の中。時は進み、目の前には赤いトラックが迫ってきていた。
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「目が覚めた?」
そこには赤いトラックではなくツンデレ魔女がいた。夜の森の中、俺とツンデレ魔女は焚き火を囲んで野宿していた。
「ずいぶんとうなされてたね」
「まあ、少し嫌な夢で...」
「足がビクゥ!ってなってたよ」
焚き火越しに見える彼女の顔はニヤついていた。何気に初めて無表情以外の顔を見た気がする。
「...そういえばさ」
「なに?」
このまま寝れる気もしないので、気になることを聞いてみた。決していじられるのが嫌だからとかじゃない。
「今こうして野宿しているけど、危険な魔物とか襲って来ないの?」
アニメとか漫画とかで主人公一行が野宿しているのはみたことあるけど、いざこうして現実になると、急に襲われないか不安になる。
「周りに札を貼って結界魔法をかけたから大丈夫よ」
「そう、その魔法っていうのについてなんだけど」
体を持ち上げ、彼女の顔に向き直る。
「魔法ってそもそもどういうものなの?」
これが彼女を悩ませたようで、眼をパチパチさせて、泳がせ、しばらくすると納得したような顔になった。
「そっか、あなたの前の世界は魔法がなかったのね」
すると彼女は立ち上がり、近くに落ちていた木の枝を拾って、図解を始めた。
「魔法学校で習ったけどうろ覚えなのよね」
ホ◯ワーツみたいな感じなのか?って言っても、通じやしないか。彼女は簡素な人型の輪郭を描いた。
「人間には必ず血が通っているでしょ?この世界はそれと一緒に魔法の素となるエネルギーが流れているの。この血とエネルギーは相関関係にあってね、血が高貴で尊いものほど魔法の効果も高いと言われているの。そうはいっても、6割くらいは努力でなんとかなるけどね、ここまでは理解できる?」
人間の血と一緒に魔法のエネルギーが流れ、血が良質なものほど魔法も良質なものになりやすい。努力でなんとかなる。
「先生、質問があります。」
「なんでしょう、アサミくん」
手を挙げた俺に、彼女は威張るように応える。
「高貴で尊い血って具体的にどういうものなんですか?」
「簡単に言えば、この世界を創造したとされる神の血が混じっているものを指します。血が濃ければ濃いほど、高貴で尊いということですね」
創造した神といえば、あの転生させてくれた人だろうか?名前は確か........?
「アーシア、という神が創ったと言われ、アーシケル教の信仰者は皆、この神を信仰しています」
「先生、アーシケル教ってなんですか?」
「え?....ああ、そっか、まあ主要宗教の一つみたいに思ってくれたら良いよ、説明するの面倒だし」
まあ、今の話と関係ないからいいか。
「話を戻すと、魔法というのは誰でも使えはするけど、手段がさまざまだし、人によっては負担がかかるものなのよ。」
その後も魔法について教えてもらった。魔法を使う手段というものは大きく分けて3つあるということ。
魔法陣やお札などの媒体を使った設置型。
杖や腕輪などの媒体を使って魔法を飛ばす発射型。
自分の魔法を味方や自分に纏わせ強化する強化型。
そしてそのどれもに予備動作として詠唱が必要であること、設置型は一部例外ありらしいが。確かに転生した時もアーシアが詠唱していた。面白いな魔法。
「はい、ツンデレ先生!」
そう言って手を挙げた俺を睨むツンデレ先生。しょうがないじゃない、名前知らないんだもの。それに勝手にどうぞと言ったのそっちじゃないか。
「...アンナです」
「え?」
「だからアンナです!わたしの名前!」
半ば逆ギレ気味のツンデレもといアンナはそのままこっちを睨み続けた。
「......えっと、ごめん......な......さい?」
こういうどうすればわからないシチュエーションはとりあえず謝っておけば良いと心の中の自分が言っている。
これが吉と出たのか凶と出たのかわからないが、アンナは顔をプイッと背けてしまった。
子供じゃないんだから早いところ機嫌を直して欲しいのだけど......気まずいこの空気を変えたのは俺でもアンナでもなく......ガサという茂みの発した音だった。
俺とアンナは茂みの方向を向き、同時に聞きたかった質問をした。
「設置型の効果ってどれくらい続くの......?」
「......基本的に......永続...」
もう小声で話しても意味ないとは思うが、また機嫌を悪くしちゃ敵わない。合わせよう。
「じゃあ......この音は?」
「その前に......一つ謝らせて欲しいの......」
「......あそこ......札貼るの忘れてた......」
茂みから飛び出してきた幾匹かのオオカミのような魔物が涎を垂らし、飢えた目つきでこちらへ飛びついてきた。
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