帰還と双子-1 (改)
予定通りに視察を終え、俺は公爵邸に戻ってきた。
「わあ‥‥‥‥」
「大きい‥‥‥‥」
公爵邸に着き馬車から降りたリリアとルルアの第一声がこれだった。
まあ、無理もない。
公爵邸は見上げるほどの高さがあり、横幅もそれなりに目を凝らさないと見えないくらいだからな。
今までスラムの小さな小屋に2人で暮らしていたのだし、それ以前にもこれほど大きな建物を見ることもなかったのだろう。
公爵邸を見上げて放心している2人に対してセリーナは随分と落ち着いている。
まるで今までに同じような大きさの建物を見たことがあるかのようだ。
「セリーナ、お前は奴隷になる以前にこのレベルの建物を見たことがあるのか?」
「はい。以前の住まいは今は亡き国の廃城でしたので」
「そうか」
その今は亡き国というのがかつてセリーナが滅ぼしたという国なのだろうか。
‥‥‥考えても答えに辿り着くことはないな。
俺は思考を放棄し、未だ放心状態のリリアとルルアに声をかける。
「リリア、ルルアそろそろ戻ってこい。いつまで外にいるつもりだ。中に入るぞ」
「は、はい!」
「あ、待ってよ!」
静かについてくるセリーナとレヴィアナに対してわたわたとした様子で追いついたリリアとルルアを伴って公爵邸の扉を開く。
『おかえりなさいませ、レイス様』
扉を開いた先で屋敷に勤める使用人の3割ほどが左右に分かれて並び、俺を出迎えた。
その光景にリリアとルルアがまた放心している。
そして今回は俺も少し驚いている。
ヒーヴィル公爵家には他の貴族家に比べて遥かに多くの数の使用人が勤めているので、その3割であってもかなりの人数になるのだ。
久しぶりに帰ってくるのでそれなりの出迎えがあるとは思っていたがこれほどとは。
それでも13年も公爵家の人間として生きているので耐性はある。
すぐに意識を切り替え、近くにいたメイドに尋ねる。
「父上はいるか?」
「はい、執務室で書類仕事をされております」
「ならば父上に俺が帰ってきたことと視察の報告をしたいと伝えてくれ」
「そのことについてですが、ご当主様より報告の時間を確保しているのでそれまで体を休めるようにと言伝を預かっております」
「そうか、ならば自室で休むことにする。それと後ろの彼女らについてだが、全員俺の専属使用人にする。俺の自室の近くに部屋を用意しておけ」
「かしこまりました」
視察の報告についての確認とリリア達の待遇と部屋の手配を終え、後ろの4人を連れて自室に向かおうとしたところで俺を呼ぶ声が耳に入った。
「お兄様!おかえりなさい!」
その声の方向に視線を向けると、1人の少女が笑顔を振り撒き、こちらに駆け寄ってきていた。
その少女の名はシャルミリナ・ヒーヴィル。
母親譲りの綺麗な金色の髪をハーフアップにした美少女であり、今世の俺の妹だ。
突撃するような勢いで突っ込んできたシャルミリナは俺の胸に顔を埋めるように抱きついてくる。
「もごもごもごもごっ」
「顔を上げて話せ、聞き取れん」
俺の胸に顔を埋めたまま話そうとするので何を言っているのかわからないため顔を上げさせる。
「ぷはっ。おかえりなさいお兄様、お久しぶりです」
「ああ」
先ほどよりも5割り増しの笑顔を浮かべるシャルミリナに応えつつ周りを確認する。
シャルミリナがいると言うことはーーいた。
シャルミリナが来たのと同じ方向からゆっくりとこちらに歩いてくるのは1人の少年。
「おかえりなさい、兄上」
朗らかな笑みを浮かべ、シャルミリナと同じ金色の髪を短く切り揃えた俺の弟ーークライン・ヒーヴィル。
「お変わりないようで安心しました」
原作にて、俺を殺す男だ。
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