奴隷オークション-2 (改)

 「皆様!大変お待たせいたしました!それではこれより、奴隷オークションを開始いたします!」


 こちらから見てステージ左側に現れた司会であろうスーツ姿の男がオークションの開始を宣言すると、それまで座ってくつろいでいた者や他の人間と会話をしていた者達が一人残らずステージに注目した。


 「‥‥‥奴隷オークション‥‥‥」

 「旦那様は奴隷が競りにかけられることがわかっていたのですか?」


 リリアは奴隷という言葉を特に気にすることなく俺にそう尋ね、ルルアは奴隷という言葉に僅かに顔を顰めた。


 「ああ。声をかけてきた男の言葉で分かった」

 「さすがですね旦那様」


 最近リリアは俺が何をしてもこうして褒めてくる。

 駄目人間にされそうだ。


 そんなことを考えていると、司会の男がいつの間にか話し始めていたオークションに参加する上での注意が終わっていた。

 レヴィアナに聞いた内容としては落札した場合今日中に現金で支払いを済ませる、返品は受け付けない、オークションで他人と揉めても一切の責任を負わないということだった。


 「それでは商品の競りに移らせていただきます!まず最初は男の戦闘奴隷の紹介です。名前はガル、年齢24歳、筋肉質で高身長。健康状態は良く、帝国騎士より少し劣る実力です。値段は400万ゼニス。10万ゼニス単位での開始です」


 ステージの横側から一人の男の奴隷が連れてこられると司会は奴隷の紹介を始めた。


 ちなみにだがこの世界の通貨は小銅貨、大銅貨、小銀貨、大銀貨、金貨、白金貨の6つが使われており、単位はゼニスだ。

 小銅貨 100ゼニス。

 大銅貨 1000ゼニス。

 小銀貨 1万ゼニス。

 大銀貨 10万ゼニス。

 金貨 100万ゼニス。

 白金貨 1000万ゼニス。

 それぞれの貨幣の価値はこのようになっており、1ゼニス=1円換算となっている。

 日本の会社が作ったゲームなので日本円と同じに価値設定にしたのだろう。


 司会が奴隷の値段と釣り上げ価格の単位を告げるとちらほらと手が上がり、それに伴って値段も上がっていく。


 「400万」

 「410万」

 「430万」

 「440万」

 「さあ、440万より上はいらっしゃいませんか?では、440万ゼニスで落札です!」


 最初の奴隷はそこまで値段が上がることなく落札された。

 それも当然だ。


 男の奴隷なんて労働力くらいしか使い道がないのだから。

 戦闘ができる奴隷で若いからこそあの値段だが、戦闘ができず、若くもなければ100万もいかないだろう。


 男の奴隷は出てきたのとは反対側に連れていかれ、今度は10代後半に見える見目のいい少女が連れてこられた。


 「お次は女の奴隷です。名前はラン、年齢19歳、身長は平均で胸は大きめ。健康状態は良く処女です。年齢的にまだまだ成長の可能性があるので自分好みに育てるもよし、このまま調教するのもよしの素晴らしい商品です。値段は1200万ゼニス。100万ゼニス単位での開始です。」


 今度は男の奴隷の時とは比べものにならないほどの人数が手を上げ、どんどん金額を上げていく。

 手を挙げる人間のほとんどが男であり一人残らず目をギラギラとさせている。

 ここからでも奴隷の少女が男たちの様子に怯えているのが良くわかる。


 「4100万!」

 「4300万!」

 「4400万!」

 「5000万!」

 「ここで5000万が出ましたがこれ以上はいらっしゃいませんか?いらっしゃらないので5000万ゼニスで落札です!」


 少女を落札したのは全身が汗でテカッており腹の贅肉をタプタプと揺らしている中年の男だった。

 その目は今にも少女を犯したくてしかたがないと語るようにギラついている。


 少女は自分を落札したのがその男だと分かったのだろう。

 自分のこれからを想像し顔を青くして瞳に涙を浮かべながらステージの横に連れて行かれた。


 そんな少女をルルアは悲しげでやるせなさの混じった目で最後まで見続けていた。

 少女が完全に見えなくなるとルルアは俺服の袖を引っ張り、ぼそりとつぶやくように言った。


 「ねえ、あの子はこれからどうなるの?」

 「落札した男に陵辱され、あらゆる尊厳を奪われた後で捨てられるか殺されるだろうな」

 「‥‥‥‥」


 ルルアが袖を掴む力が強くなり、服に皺ができる。

 視線が下を向いているのと周りが暗いせいで表情が見えないが、その心情はなんとなく理解する。


 何があったかは知らないが、おそらく昔あった何かしらの出来事を思い出したのだろう。

 でなければスラムで暮らし、何よりも現実というものをわかっている奴が奴隷の扱い程度でこんな顔するとは考えにくい。


 「どうしたい」

 「‥‥‥え?」

 「お前はどうしたいかと聞いている」


 突然の問いに困惑していルルアを無視してそのまま言葉を続ける。


 「お前に何があったのかは知らないが、お前は現状のままでいいのか?これから先も同じような状況になった時、何もできないままで」

  

 ルルアは黙って俺の言葉を聞いている。


 「この世界は所詮、弱肉強食。何か一つでも力がなければ生き残ることはできなず、望みを叶えることもできない」

 「‥‥‥‥」

 「もう一度聞く。お前は今のままでいいのか?」

 「よくない」


 ルルアがはっきりと口にした。

 ステージの光に照らされ、微かに見えるその瞳には光が宿っている。


 「私は今のままでいるのは嫌だ」

 「ならば、どうする」

 「強くなる。レイス様、手伝って」

 「実に傲慢だな」


 貴族である俺に対して庇護下に入ったとは言えただの平民でしかないルルアが要求をする。

 実に傲慢な態度だ。

 だがーー


 「いいだろう。生半可は許さんぞ」


 面白い。

 元々、俺はルルアのこういった部分を気に入って庇護下に入れることを決めたのだ。

 断る通りはない。




 =====




 その後もオークションは順調に進み、残す奴隷は1人のみとなったところで司会の男が先程とは打って変わり、興奮気味に話し始めた。


 「それでは次で最後となります。最後はこの先、目にすることは絶対に無いであろう最高の奴隷です!年齢18歳、輝くような銀髪に紅の瞳、まさに男が理想とする肉体を持つ絶世の美少女!健康状態は良く男を全く知らない処女!名前はーー」


 手枷についた鎖を引っ張られながら出てきたのはこれまでの奴隷とは比べ物にならないほどの存在感を放っていた。


 腰まで伸びた銀髪は奴隷とは思えないほどに艶やかであり汚れが一つもない。

 傷ひとつなく、日焼けすらもしていない真っ白な肌は神秘さすら醸し出している。

 奴隷が着るワンピースのような服の胸元を大きく盛り上げ、服の裾を短くするほどに大きな胸。

 それにアンバランスさを感じさせないハリがあり形の整った尻やその肉体。

 極め付けは見たもの全てを魅了する二つの紅眼。


 彼女はこちらを、俺を見据えてーー


 「セリーナァァァァァッ!」


 微笑んだ。


 



 

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