奴隷オークション-1 (改)
馬車での移動を終え最後の街に到着した。
宿で部屋をとり、準備をしてから視察をするために市場に向かう。
今回はリリアとルルア、レヴィアナの全員が視察に同行してきた。
最後の街とは言ってもやることは他の街と変わらず品物の値段や品質の確認だ。
どの店も並べている商品は違えども客側から見やすい配置になっているので一つの店にそこまでの時間はかからない。
だが、例外というものはあるのだ。
「旦那様、その野菜よりもこちらの野菜の方が鮮度がいいですからこちらにしましょう」
「旦那様、そちらよりもこちらの方が光沢があって見栄えがいいです」
「旦那様、こちらよりもあちらにある服の方が肌触りがいいですよ」
「旦那様、これ、どうですか?似合いますか?」
店側に怪しまれないように適当な商品を買おうとするとリリアが口を出し、可愛らしく髪飾りや服が似合っているかも聞いてくる。
それにいちいち付き合って買う商品を変えたり、感想を言ったりする俺も悪いとは思う。
視察のペースに影響を与えていることはわかっているのだが、リリアの様子を見ていると無視するわけにもいかなくなる。
「ねえ、レヴィアナさん。レイス様って女の人には甘いの?」
「いえ、自分の懐に入れた女性だけに甘いのです」
「ふーん。私もレイス様のものになったら甘えさせてくれるのかな?」
「おそらく」
店の商品を物色する俺たちの後ろでルルアとレヴィアナがそんな話をしているのが耳に入る。
自分の欠点のようなものを知ってしまった。
少し、気をつけよう。
=====
市場の視察を終えたところでちょうど日が傾き始めたので宿に戻ることにする。
宿への道を歩いていると横にある小さな脇道で座り込んでいた男と目があった。
俺はすぐに目を逸らしたのだが、男が立ち上がり声をかけてきた。
「なあ、そこのあんた。黒髪で別嬪さんを侍らせてるあんただよ」
「‥‥‥俺に何の用だ」
無視しても良かったのだが、なんとなく返事をしないとついて来そうな気がしたので仕方なく返事をする。
男は胡散臭そうな笑みを浮かべながらこちらに近づいてきた。
「今から近くでオークションをやるんだが見ていかないかい?」
「興味がないな」
「まあそう言うなって。あんた、それなりに金を持っているんだろ?これからやるオークションは競り合うならかなりの金が必要になるが、
それだけの価値がある商品ばかりだぞ」
「‥‥‥商品は何がある?」
俺が商品のラインナップについて聞くと男は嬉しそうにしながら答えた。
「そりゃあ行ってからのお楽しみだ。自分の目で確かめてみるといい」
「そうか。案内しろ」
おそらく、オークションで競りにかけられる商品は奴隷だ。
わざわざ声をかけてきたのに商品が何か答えないと言うことは、声をかけた相手がハズレだった場合何かしらのリスクを負う可能性があるからだ。
そしてオークションにかけられるもので、相手によってリスクを負う商品は奴隷しかない。
奴隷はルヴィア帝国では認められているが、近年になって奴隷をなくすべきと言う考えが帝国内で広まっており、表立って奴隷を売買することが難しくなった。
表立って奴隷を売買しているのは影響力のある昔からの大店くらいだ。
そのためこうした誘い方をしたのだろう。
男について行くと入り組んだ路地の中にある一軒の小屋の前に着いた。
男が扉を4回、リズムをつけて叩くと内側から扉が開いた。
そこには人相の悪い男が二人ほどおり、いかにも門番という雰囲気を出していた。
「もうすぐ始まる。急げ」
二人の男のうち一人がそう言いながら地下へ続く扉を開いた。
オークションの会場は地下にあるのだろう。
下からひんやりとした空気が出てきている。
声をかけてきた男について行く形で階段を降りていき、階段を降り切ったところにある扉を開くとそれなりに開けた薄暗い場所に出た。
薄暗くてはっきりとわからないが、内装はそれなりに綺麗で貴族の屋敷のような雰囲気がある。
そこでは数十人の人々が席に座ってくつろいだり、複数人で会話をしてオークションの開始を待っていた。
「すぐに始まる。まあ、楽しんでけ」
男はそう言って人の間に消えていった。
男の姿が見えなくなるとリリアが俺の服の袖を引っ張ってきた。
「旦那様、結局ここで競りにかけられるものは何なのですか?」
「見ていれば分かる」
しばらくするとあたりが真っ暗になり、代わりに前のステージのようになっている部分が照らし出された。
「皆様!大変お待たせいたしました!それではこれより、奴隷オークションを開始いたします!」
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