宝石オパールは語る_10 ~似ているけれど~

色石ひかる

第1話 問題編

 私は倉木くらき彩香あやか、20歳の女性。ルースコレクター初心者の社会人。ルースは宝石の石単体で裸石ともよばれている。中でもオパールが大好きだった。


 宝石や鉱物を販売するミネラルショーにきた。最初にオーストラリア産オパール専門店へよった。店主の川畑かわばた芽衣子めいこさんを見かけた。20代後半のお姉さんだった。


「彩香ちゃん、今回も来てくれてうれしいです。思う存分ルースをみてください」

「すてきなルースとの出会いが楽しみよ。気になるところがあれば質問するね」

 展示されている手前のルースから眺めた。今日もオパールを堪能できる。


 いつもと同じく、いろいろなオパールが展示されていた。同じオーストラリア産でも見た目の異なるブラックオパールとボルダーオパールがあって、同じブラックオパールでも色合いや輝き方が異なっていた。


 展示の中には、私でも分かるくらいの高級なブラックオパールがあった。

「赤色が全面に輝いて発色もよくて、別角度では青色と緑色がすてきな感じね」

「手に取ってみますか」

 芽衣子さんが、私の返事を待たずにブラックオパールのルースを取り出した。トレーの上に出されたルースは、ルースケース越しに比べて輝きが増している。


「せっかくだから、みせてもらうね」

 指でルースをつかんで手のひらに乗せた。手のひらを傾けると、色合いや表情が移り変わる。近くにあるライトへ、ルースを寄せたり離したりして変化を楽しんだ。


「高額商品ですがお薦めのルースです。年々、ブラックオパールの産出量も減っているので、買っておいて損はないです」

「凄くすてきなルースだと、私にも分かる。でも100万円以上の価格は無理よ」

 話ながらも、今度はルースの裏側を確認した。真っ黒まではいかないけれど、それに近いくらい濃い色だった。発色がよかったのも、裏側の濃さが影響していそう。


「ふだん彩香ちゃんが購入するオパールに比べると高いですが、いつかは持っていて欲しい一品です」

「お金を貯める必要があるけれど、この金額だと本物かどうかを心配しそう。もちろん芽衣子さんのオパールは、すべて本物と思っているよ」


「信頼してくれてありがとうございます。高額品や天然か怪しい場合は、鑑別書をとってもらうのがよいと思います」

「鑑別書? テレビショッピングのダイヤモンドジュエリーでは鑑定書と言っていたと思うけれど、それとは違うの?」

 芽衣子さんの発言を待った。

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