元総理の異世界転生

紅 蓮也

第1話 元総理は転生す

 白虎龍青(しらこりゅうせい)は歴代最年少の40歳で内閣総理大臣となり、就任当初こそ年齢を理由に不安に感じる国民もおり、支持率はそれほど高くはなかった。

 だが政策や諸外国に対しても臆せず対応したりで支持率を上げていき前代未聞の支持率100%を達成すると62歳で体調を崩して辞任、議員辞職するまでの20年間それを維持し続けた。


 辞任後から病院で入院していたが自身の死期を悟り半年前から自宅療養に切り替えた。


 総理時代に内閣官房長官で現総理大臣の朱雀武玄(すざくたけとら)が見舞いに来た。


「武玄か。私はそろそろダメみたいだ。私のあとを引き継ぎ頑張ってくれている君を見続けられないのが残念だよ」


「龍青さんの次の総理としてとても苦労してますよ。

前任者がとてつもない総理でしたからなね。私も龍青さんと共に無茶してきましたから体が悲鳴を上げつつあるので私の政権はそれほど長くはないと思います」


「そうか。武玄なら大丈夫だろうよ。じゃあ先に逝って待っているよ」


 そう最後に言い残すと龍青は、静かに息を引き取った。

 64歳(享年65歳)のまだ若すぎる死だった。


「私は、異世界の神であるラファルニアという。

白虎龍青くん、君は頑張った。私の世界で新たな人生を生きてくれないかな?」


 死んだはずなのに気づくと龍青は何処かしこも真っ白な部屋の中にいて、金髪蒼眼な端正な顔立ちに真っ白な服を着た男にそう言われた。


「わかった」


「ちょっと待った」


 龍青が理由も聞かずに了承すると黒髪黒目のこちらも端正な顔立ちで白い服を着た女性が突然現れ待ったをかけた。


「なんだ。地球の女神アマテラス」


「あなた。理由も聞かずに了承するんじゃないわよ」


 地球の女神が私を指さしてそう言ってきた。


「頼まれたら理由など関係なく協力するのが私の信条なのでね。

まあ悪事や違法な場合は別だがね。今回に関してはそうではないだろうし、死んだと思ったら新たな生を与えられるとのことだから有り難い」


「あなた魔法が使える世界だから行きたいだけでしょう」


 おお!魔法が使えるのか。それは嬉しい。


「魔法が使える世界だったんですね。それは楽しみです」


「えぇ……!!ラファルニア!!あなたどんな世界かも説明してないの?」


「あぁ。龍青くんには私の世界で新たな人生をとしか言ってない。

龍青くんは、事前にするより自分で見て聞いて知っていく方が好きそうな感じだったからね」


 まったくその通りだ。有り難い配慮をしてくれた。

 まぁ、魔法が使える事はアマテラス様がバラしてくれたわけだけど


「アマテラス様。他のことは言わないでください。

死んで直ぐに異世界に転生してほしいなんて言われたのですから私には役目があったり、実は異世界で生まれるはずだったのに何かの手違いで地球に生まれてしまったとかあるのだろうなって気はしていますから」


「「何でわかったの!!」」


 ラファルニア様とアマテラス様が同時にそう言った。


 自分自身が規格外なことには気づいていた。

 何かしらの強い力が働いているのではないかとね。


「私が最年少総理だったり、超長期政権だったり、改革がスムーズに進んだり、諸外国の対処が楽になったり、大臣や自党のスキャンダルが皆無だった。

何かしらの力が働いているのではないか思う事が多かったですからね」


「マジか。私もアマテラスも気づかれないように力を行使していたのな」


 あれだけ異例尽くめのことがあって気づかれないってのは無理があるのでは……


「普通はあれだけのことがあれば気づきますよ」


「普通は、俺凄え!俺の思いのままだって自分の才能だと思って調子に乗るんだよ」


 いやいや。調子に乗って天狗になっていたら長期政権なんて無理でしょう。

 過去の方々みたいに汚職にまみれ、他人のスキャンダルに足を掬われ、短命政権で終わる。


 なんせ日本は、些細なことであっても野党が責任取って辞任しろと騒ぎ、国民を日本を豊かにするために政治を行うより、自分たちの私腹を肥やそうと足の引っ張りあいをし、ころころと国のトップが変わる国なのだからな。


「ラファルニア様。楽しみで仕方がないので、早く転生させてください。

これ以上話しているとお二人がポロっと話されて楽しみが減ってしまいそうなので」


「わかった。苦労もあるかもだけど新たな人生も楽しんでくれ」


 目の前が光に包まれ白虎龍青は、異世界に転生した。


「本当に説明しなくてよかったの?」


「仕方ないよ。龍青くんの性格もあるし、色々話して転生しないとか言い出したら私達も困るし、今まで頑張ってきた彼女が可愛そうじゃない」


「そうね。また龍青くんと居られるように何十年も頑張ってきたのだものね美琴ちゃん」


「そう。それに龍青くんにはまた武玄くんと一緒に今度は私の世界をいい方向にしていってもらわなくちゃね」


「そうね。ラファルニアの世界は人族以外の種族もいるから種族差別や人族同士だけでなく他種族との争いが絶えないものね」


「数が多いだけで力は最弱なのに人族は自分たちは神に選ばれた最高の種族と思っている者が多いからね」


「そうね。龍青なら種族関係なく導いてくれるんじゃないかしらね。

アルバドラス王国が世界初の差別のない多種族国家になったりしてね」


「そうなってくれたら嬉しいな」


 龍青の転生を見届けた2人の神は、龍青に期待しながら語り合った。

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