ガキだから全部ゆるされる

@okogeman

痛かったら泣く

 ゴリラみたいなやつに殴られた。低反発のゴムみたいな感触がした。

「痛い!」

「うるせえ!」

 前にもこんなことがあった気がする。父親に殴られたときだ。俺は泣いた。

「男が泣くな!」

「・・・なんで?」

「口答えするな!」

 口答えは駄目らしい。なので母親に訊いてみた。

「あんたが強く生きるために言ってくれたんだと思うよ」

 ということらしい。

 ゴリラを目の前にして、俺は号泣した。

「ああああぁぁああぁ」

「気持ちわりぃな!」

「ああああぁぁああああああぁあぁ・・・っ!ああああ!」

「おい!」

「ああああああ!ああ!ああ!ああ!」

「おい」

「あああああああああああああああ!!!!!」

「大丈夫か!?」

 俺は介抱された。ゴリラは背中をさすってくれた。ゴリラの何人かの舎弟は、笑っていたが、なぜか引いていた。「引くわ・・・」とも言っていた。

「そこまでしてねぇだろ」

「痛かったもん!」

「そんなんでそこまで泣くなよ・・・」

 その日、初めて目をつけられて殴られて介抱された。普段はマッシュルームみたいな髪型のやつが虐められている。

 別の日、俺は教室の窓からマッシュが虐められている光景を眺める。なんか囲まれて、財布から金を出している。そうするとゴリラたちはどこかに行った。金を渡したら許してくれるシステムだ。マッシュはしばらくうなだれて、どこかに行った。

 別の日、学校に着くと、人だかりができていて騒いでいた。屋上を見ると、マッシュが落ちそうなところに立っていた。

「おい!待て!悪かった!金、返すから!」

 ゴリラは焦っていた。

「もういい!もう!ッグァエワエファ」

 マッシュは泣きながら何かを言っていた。聞き取れなかった。

 ゴリラの舎弟の何人かは笑っていた。ゴリラが屋上に行こうとすると、

「来たら落ちる!」

 と言われてゴリラが困る。それを何回か繰り返した。俺は目立たないところにいたので、こっそり屋上に向かった。音がしないように屋上の扉を開けた。マッシュは下を見ながら高揚していた。ゆっくり近づいて、マッシュの背中を蹴った。

 下のほうから悲鳴が上がる。多分これで次に進む。落ちると言って落ちないマッシュ。屋上に行くと言って行かないゴリラ。ヘラヘラ舎弟。騒ぐその他。長すぎると気分が悪いし意味が分からないので蹴ったほうが良い。そしたら話が次に進むと思う。

 別の日、俺は職員室に行って、教師に、ゴリラたちがマッシュを虐めている様子を撮った動画を見せた。

 教室で関係のない生徒を含めての話し合いが設けられた。ゴリラは潔く認めていた。舎弟は文句を言っている。

「先生!彼らは大麻を吸っています!今日もカバンの中から出しているところを見ました!」と俺が言った。

 ゴリラの家に友達のフリをして入り、大麻をくすねて、今日、ゴリラたちのカバンに入れておいた。ついでに、クラスメートのゴリラの彼女のカバンにも入れておいた。彼女がやっていたかは知らない。気分が乗れば、ゴリラ関係の他の人にもやろうと思うけど、そこまで興味が持てるかどうかは分からない。あと、説教が長い教師のカバンにも入れておいた。俺はカバンと大麻が好きなのかもしれない。

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