56話 オレの短編

 舞台は、昭和。質素な暮らしをする五人兄弟の長男が主人公。

 黒光りする学生帽を反対向きに被り、兄弟達の給食代を稼ぐため必死に近所の手伝いをこなす日々。自分は、給食代を払えないので、クラスメイト達からバカにされ、一人ポツンと先生の前で食べさせるのが日常だった。


 俺が兄弟達に嫌なおもいをさせないためにも……頑張らない、と。

 

 どんなことでもやった。


 近所のどぶ掃除も、赤ん坊のあやかしも、お金持ちの同級生に媚び諂ってお金をもらったり、生きている時間を全てお金に注いだ。

 

 汚い、穢らわしい、臭い、目つきが不気味。


 ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせられても頭を下げて、お金を恵んでもらった。

 そんな些細な事で、兄弟達が生きれるのであれば本望だからだ。

 

 いつも通り、俺は、やんちゃな高学年に痛ぶられて口から血を流しては、水道で拭い、椅子へと座る。周りからは、冷ややかな目にさらされている。

 当然だ、だって本来なら死んでいるのだから。屍が偶々上手く生き継いでいるだけなのだから。父親は、去年俺が中学一年の時に戦争から帰国したは良いものの、寝たきりになって、そのまま息を引き取った。

 母親は、規制が強くなってはいるが、水商売に励む日々。

 体や手は、アカギレや傷で霞んでおり、三十代手前とは言えないほどに老けていた。昔の写真を見たことはあるが、結構美人だったのだろう。


 ただ……もう、母も限界かも知れない。

 ……俺は……生きるために……。


 最近越してきた、転校生が結構な家柄の者らしいという噂は広まっていた。

 そこにかけるか。


 俺は、放課後になるとふらふらと隣のクラスの転校生を見つけて立ち止まる。綺麗に整った容姿と健康的な身体に、怒りを覚えた。


 わかっている、これは、人として最低で身勝手な嫉妬だと言うことに。

 自分の妹達がより細くなっているのが堪らなく辛かった。

 肌がカサカサしているのを気にしているのが苦しかった。

 弟達が、腹一杯飯を食わせられないのが耐えられなかった。

 いじめを受けているのだろう怪我をして帰ってくる…………そう言った全部の不平不満を金持ちにぶつけている自分がいた。


 いつの間にか睨んでいたことに気づいたが遅し、その転校生と目が合うと笑みを漏らしていた。俺を小馬鹿にしているような笑み。

 俺は、その時、殺意を覚えた。


 だが、彼女は友達との話を終えるなり、俺の元へ駆け寄ってくるので逃げた。

 逃げ足だけは、自信があったのだが、その転校生は誰もいない廊下でオレの前方へくる。


「君の人生をくれない?」

「はっ?」御ちゃらけたさっきまでの雰囲気は一切なく、まっすぐな瞳でそう問いかけてくる。初対面で会話をした事すらないのだが……小馬鹿にされているのだろうか。

「君が私のしもべになるなら、その代わりとして君の家族を救ってあげるよ」噂を聞く限り、こんな庶民学校から転校してきたのではなく、東京中心部のの高等教育機関の附属校からやってきたお嬢さんらしい。だから、俺の家族を救う実現可能性はある。

 俺は今、一本の蜘蛛の糸……一縷の水すらを縋っている。

 それは一滴で十分だ。もう、恥も外聞もない……俺は、溢れてきた雨水を啜ってやる。

「…………本気か?」

「えぇ…………人生を私に捧げれるのなら」

 繰り返し使われる『人生』という言葉に覇気が宿っている。

 誰かに頭を下げてきた人生、それを捧げる?


「…………それで、家族は救われるのか?」

 なんでもいい。どんな屈辱も捧げてもいい。

 妹も母も弟が笑顔になれるなら……泥水も啜ってやる。

「確約しましょう。あなたが人生を捨てる代わりに」右手で毛先を触りながら言う。


 俺の人生で……彼奴らが救われるなら…………、生きてるだけの間、彼奴らの笑顔を思い出せるなら、良いもんだ。

「……わかった。もう死んだ命だ、捨ててやるよ」

 彼女の瞳には、鋭く獰猛に光った俺の双眸が写っていた。

 目を光らせている俺へ淡白に応える。

「では、宜しくね」

「あぁ」


 差し出してきた手を握ると、やはりしっとりしており、瑞々しい。

 俺たちとはまるで別世界を生きているようだった。



 そこから暫く経つと、オレの家には黒服達と転校生_____瑠璃るりがやってきて、月に一〇万という大金を家に入れてくれると言う。

 その天からの恵みともいえる話に弟妹や母は喜んでいた。

 俺は、多分、この笑顔を見るために生きていたんだと思う。


 俺は、ヒッソリと夜中に抜け出して、瑠璃の家に来た。

 そこは、豪邸というよりも平凡な一軒家だった。

 中にいた瑠璃は何事もないように一人で家事をしていた。

 よくあるクリーム色のエプロンを着ている。

「ここが今日から君の家になるから」

「はっ?」

「死ぬまでね」

 

 そんな意味のわからない日常を淡々と暮らしていた。

 今までありつけなかった食事や身なりができるようになっていた。

 学校はこの家から近くの学校に越すことになって、瑠璃も俺と同じ学校になっていた。庶民学校ではなく、由緒正しき学校に。

 あれ程までに殺意を抱いていた相手とは、思えないほどに俺は彼女との日々をどこかで楽しんでいた。口が悪くて、自分勝手に話す口調は嫌いだが、まぁ、一緒に暮らすのは悪くなかった。おそらく、経済的余裕が生まれたためにでた弾みなのだろう。明日のことばかりを考えていた重荷が楽になったから。


 家事は俺が全般やって、家計もどこから入っているのか分からないが帳簿をつけた。学校の真面目な雰囲気とは違い、家ではラフでだらしない瑠璃は見慣れた光景で、俺がその世話をするのがお金をもらえるシステムとなっていた。


 俺は、気になることがあった。

 家族のことだ。

 だが、瑠璃は決して家に戻らないで、と釘を刺していた。


 だけど、俺は一年過ぎていることから、心配になった。

 あの兄弟が無事に平穏な日々を過ごせているのか、と。


 土曜日に適当な口実を作って、実家へと戻る。

 その足取りは、久々の家族へ会う事もあり浮き立っていた。

 母や兄弟があの頃よりも少しだけ裕福になっている光景を浮かべながら走っていた。

 だけど……俺の実家はそこには存在しなかった。

「ひっ、久しぶりだから、まっ間違えちったか」

 ヘラヘラ笑いながら、近くを走り回っても無い。

 家の庭に立っていた橘の木だけがそこにあり、ぼろかった家はそこに存在しなくなっていた。

 まるで、俺が生きた証の結晶がどこかに飛んでいったように心の中が、伽藍堂となった。生きる意味が突如としてなくなったのだ。


 そこにカツカツと上品なヒールの音がする。

「もう、ないわよ。あなたの戻る家は」

「…………今すぐ戻せ、俺の家族ヲッ!!」

 振り向いて、握り拳を瑠璃の顔面へ振りかぶったが、殴れなかった。

 俺を虐めてきた奴と同じ穴の狢になる事は許せなかったから。

 殴ってしまうと、弟達が悲しむと思ったから。弟達には決して人を殴るなと口すっぱく言ってきた…………俺は、空っぽになって、膝から地面へ崩れ落ちた。


「くそっくそっくそくそくそっ!!」

 手のひらを地面につけて、指先を逆立てて、一心不乱にかきむしる。

 ざらざらとした感触が指先から伝わり、すぐに硬い地面に辿り着くも、俺は掻きむしった。

 爪が欠けて、血がどぱどぱと出てくるも構わずに指に力を入れた。


」右手で毛先を触りながら言う。

「………………はっ?」瑠璃は、腰を下ろしてポケットからピンク色のハンカチを取り出して、俺の爪先を圧迫する。

「世話が焼けるわね」

「どっ、どういう意味だよっ」

「……今は、指先の方が大事よ。下手すれば化膿や壊死するわよ」

「…………」

 瑠璃の指示の元、俺は家へ帰り包帯巻きにした。


 その際に聞いた話はこうだった。

 俺は、腹違いの母親の元に生まれたようだ。

 要するに、あの母さんと血は繋がっていない。兄弟達と同じ母親から生まれていないのだ。

 なぜ、そうなったのかを、聞いたが答えてくれなかった。

 ただ、最近になってその事を知り、俺の産みの母親が家族に資金援助する代わりに、俺を引き取る事で合意したのだと言う。

 未だ俺はその生みの親の顔は見れていないのだが。

 そして、家族は皆別の村へ引っ越し、裕福では無いが、暮らしていると言う。

 俺は、本当の自分が分からなくなってしまったが、横にいた……姉である瑠璃が献身的に俺へ話しかけてくれたからだろう少しずつその日常を受け入れ始めた。


 同じ家に三年ほどすみ、瑠璃の事を姉だと思いながら接していた。感情豊かな表情をする瑠璃は同級生からかなりモテていた。特段、周りには兄弟である事を伝えていなかったが、心奥で何かが沸騰するのを感じていた。

 同じ部屋で過ごすことが日常と化していたのに、俺は瑠璃を目で追っていた。

 弟の心配心だろうと自分では思っていた。姉が誰か他の男に取られるのが、少しだけ嫌な気がしたのだと。また、家族を取られてしまうのを嫌がっているのかと。


 事態が動いたのは、俺が瑠璃の涙を見た時だった。

 

 クラスメイトの女子に誘われて、近くのゲームセンターで時間を潰して家に帰った。瑠璃は、いつもみたいに炬燵こたつで勉強しているのだと思っていた。

 帰るのも普段より遅くなったので、玄関は締められていた。だから、勝手口から忍び込んで、謝る算段だったのに、食卓の方から啜り泣く声が聞こえた。嗚咽混じりで呼吸が乱れている。

 俺は、忍足で近づくと、炬燵で顔を両手で押さえながら瑠璃が泣いていた。

 初めて泣いているところを見て、俺は咄嗟にそばへ駆け寄った。

「瑠璃……」

「えぇえっ!? いつの間に」

 俺は、堪えられなくなって瑠璃をぎゅっと抱きしめた。

 その時に湧き上がったのは、家族愛からかけ離れたものだった。

「なっ、なんで、チャイム鳴らさなかったのよ」

「今は、しゃべるなよ」

「…………」溢れ出ていく歪んだ水を俺は抑えるために背中を揺すってあげるが、止まらなかった。肩で苦しそうな瑠璃の声が俺の涙を誘う。だが、俺は堪えた。俺が今やっている事は、家族を装って自分のしたい事をやっている非道な男だから。

 瑠璃は、泣き止むと俺の体から離れていって、何事も無かったように食事の用意をしにいく。それが、俺を否定しているようで、悲しかった。

「なぁ、瑠璃。俺たち……兄弟なんだよな?」

 背を向けて食材を取り出そうとした瑠璃の動きが止まる。俺は、ゆっくりと近づいて、言葉を待つ。

「…………なに? 私に恋でもしちゃった?」

 くるりと振り返って、眉毛を下げて呆れたように笑いながら言う。

 自分の奥底を言い当てられて、俺はそこから逃げた。苦しくて堪らない心臓の音をグシャリと握られた気がした。夕暮れになった町を駆けた。初めてだった。逃げるのも……誰かを初めて知りたいと思ってしまったのも。

 彼女の前で流さなかった涙がポタポタと流れながら俺は逃げた。自分の居場所は彼処しかなかったのに、俺はバカだ。


 許してはいけない。家族を……兄弟に恋をするなんてあってはならない。

 そんな自分が気持ち悪い。汚い。悍ましい。変態で、不気味だ。

 心底自分が憎くなった。

 俺は、その日から浮浪をし、若い女の心理に漬け込んで、下宿させてもらうことになった。汚い男だ。瞳が薄汚れていて、何も考えないで、ふらふらとすることで母性本能を擽らせてタダで泊まらせてもらっているのだ。

 そうする事で、あの家に戻らなくてもいいために、そう演じていた。

 そうやって客観的に自分の状況を俯瞰できるのだから、故意的に演じているのだろう。

 

 ある日、俺は若い女と付き合って近くの肉屋まで買い物に行った。荷物の量が多いから付いてきて欲しいのだそうだ。俺はキョロキョロと瑠璃が近くにいないかをいつも警戒した。

 この世には、存在してはいけない男だからだ。

 挙動不審な俺が可笑しかったのかくすりと笑う若い女。色白で気品があり、物腰が低く、理想の奥さんみたいな人。名を香織かおりといった。

「何がおかしいんです?」

「いえ、まるで世界に怯えたネコだったので」口元に手を添えて話す。

「…………香織さんは、怯えないのか? 得体の知れない男を下宿させて」


 据えた目つきに一瞬なるも肉屋に丁度着いたので、いつもの手際で注文をしていき、常連だから値引きしてもらっている。肉屋の主人からは、『香織ちゃん男出来たのかい? おめでたいねぇ』なんて言われた。

 何か洒落た言葉を返すと思っていたが特に言わず、お礼をいってその場を離れた。その手にぶら下がっている袋を手に取って、俺が持つ。


「……そうですね、得体の知れない殿方を匿うのは怯えもあります。最近は物騒ですからね」近くに張り出してあった指名手配犯のポスターを見ながら呟く。

「だったら___」自分の言動に明らかな矛盾があるのにそう言おうとするも、虚いだ俺の目を見つめて言葉を続けた。

「ですが……貴方の目はいつもとある人を見つけようとしているのでしょ?」

 そう問いかけられると、否が応でも一人の少女を思い浮かべてしまう。

 嫌いだったあの女。上流階級の鼻につく容姿や言葉遣いを纏った女。

 家事をすべて俺に任せて、ぐーたらし、汚い言葉を使うヤナ女。

 でも……、でも……、時折見せる幼げな笑顔や嬉しい出来事の時に喜ぶ無邪気な笑み。クダラナイ言葉の言い合いが心地良くなったあの瞬間。強がりで意地っ張りな癖に家事ができないというギャップ。

 そんな、そんなわけわからない……兄弟に俺は……。


「……逃げているだけです」

「なんで逃げるの?」

「……………望んでいないからです、俺を」

 望んでいた。心の何処かで。瑠璃もきっと俺に対して……バカな勘違いだ。

 愚かな想いは、彼女の涙で突き動かされるも、儚く散った。

 彼女の、言葉によって。

「……そう言われたの? 本当にそう言ったの?」

「…………言ったも同然ですよ」

 思い出したくもない。あの言葉は、俺を否定した言葉だ。


「人って言葉を間違うのよ。読み方を間違うのよ」

「えっ?」

「きっと、君たちは、私みたいに手遅れになる前に話し合えばきっと、君たちの答えが出るはずよ」

「………………でるでしょうか?」

「……キミだけの中で答えが出ないから、、、はなすべきなのよ。きっと、彼女もそれを望んでいるわ」

 俺は、込み上げてくる熱いものを感じながら頭を下げた。

 その熱いものが冷めないうちに彼女に伝えなければ……きっと。

 走り出した。熱が、熱さが、冷えて風化しないように。

 風化すればきっと、瘡蓋みたいにきっといつか忘れてしまうから。

 彼女がやっぱり大事だという心を。


「にっ肉は、かえしてぇえぇ!!」

「……ごめんなっささあああぃ!!」



 交番でもらった地図を頼りにしながら俺の住むべき家へと帰っていく。

 夕暮れに買い物をしたこともあり、到着した時はすっかり暗くなっていた。

 家から漏れた光は薄暗いが、瑠璃はいるのだろう。

 一呼吸して、中へ入ろうとチャイムを押そうとした時、後ろでガサっと何かが落ちた音がしたので振り返ると髪が伸び切った瑠璃が俺の顔を見つめていた。

 あれだけいい食事をしていたのに、今は少し痩せていた。俺に買い出しを全て任せていたのに近くの店で買い物をしていた袋を落としていた。服は見窄らしく洗っていないように見えた。

 だけど、変わらなかったのは、瑠璃の涙が大粒だったことぐらいだった。

「ごめんんなさいいっっ…………ごめんなさいぃぃっつ」顔に両手で隠して崩れ落ちてしまった。泣かせてしまう俺は、本当に嫌いだ。

「るり……おれこそすまない。すまない。すまない」

 瑠璃に近寄ってしゃがみ込んで彼女の涙を受け入れた。俺が涙を作っているのだ。

 すると、瑠璃が俺に抱きついてきた。

「違う、ちがうっ!! 私なの、悪いのはわたしなのっっ!」

「おれだよ。るりを泣かしてしまったから」

 お互いがお互いの涙を癒すようにぎゅっと抱きしめる。

 

 袖で涙を拭いあって、二人は中へと入った。

 久しぶりの我が家はすこし古くなって、汚くて、でも温かみがあった。

 そこから、瑠璃は告白した。自分が隠してきた嘘を。

 

 _________兄弟ではなかった。血は繋がっていないのだ。

 

 瑠璃は俺が母から捨てられて、この家で働く事を条件に自分たち家族が貧困から脱していたのだ。その事実を……真実を隠す為に瑠璃は絵を描いた。自分と瑠璃が兄弟で、俺を引き取る事を条件に家族に財産を渡したのだと。その辻褄を合わせる為についた嘘だったのだ。

 でも、瑠璃が作り上げた嘘が自分を苦しめたと瑠璃は語った。


 __________好きになってしまった俺への恋に苦しんだのだと。


 兄弟は結ばれない。その当たり前といえる常識を瑠璃は自ら作り上げてしまった。あの日、泣いていたのは、俺が他の女子と遊んでいるのが耐えられなかったのだと言う。

 あの時、俺に『…………なに? 私に恋でもしちゃった?』は自分が俺へ恋をしてなんかいないって騙す為だったと言う。だけど、俺はそのことに…………。


 何度も瑠璃は謝ったが、俺はまた瑠璃を慰めては、『すきだ』と上書きさせる。

 瑠璃が家族と会えなくさせてごめんと謝っても、『愛してる』と囁いた。

 彼女が泣きそうになっても抱きしめた。泣きやんでも、言えなかった言葉を語りかけた。

 嘘つきだよ私、と呟いてもその度にギュッと抱きしめて聴こえないふりをした。


「家族が元気に暮らしているのなら、それでいいよ。今は、瑠璃を幸せになる為なら、なんだってするから。何度でも言葉にするから。俺のために作ってくれた嘘も愛するよ。苦しかったけど、悲しかったけど、いいよそんなの。今は、こうやって『愛してる』も『好きだよ』も伝えれるんだから」

 その言葉を聞いてか、瑠璃が俺を必死に抱き寄せてくる。お互いの体温が俺の中へ入ってきて、今までの辛さを分かち合おうとした。

 耳元で瑠璃が自分の髪を触っている柔らかな音が聞こえる。


 心地よさのあまりに俺達は夜に耽っていく。


 遠回りした俺と瑠璃の微睡んだ一夜はそうして幕を閉じた。


 たとえ、彼女がまた嘘をついていたとしても_____________愛しよう。


 

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