輝ける射手と瑠璃色の龍
@HasumiChouji
プロローグ
大惨劇
「悪いが、お前らの面倒まで見てる余裕は無い」
冷い声に厳しい表情で、そいつは、そう言った。
「ちょ……ちょっと待って……」
それに対して、慌てたような
「黙れチビ、誰のせいだと思ってる?」
「だ……誰がチビよッ‼ あ〜、判った、あなた、自分が普段、チビって言われてるから、自分より小さい相手を見付けると……」
「うるさい。他人の悪口を考え出すのは生き延びてからでも出来る。頭を使うのは同じでも、今は『どうやって逃げ出すか?』を必死で考えろ」
周囲に居るのは数十人のヤクザ者達。
味方は……こう云う状況では絶対に役に立たなそうな私の一応の許婚。
それ以上に役に立たなさそうな人間の半分ぐらいの大きさの鳳龍。
こう云う事は言いたくないけど……騒ぎの元凶である
私達一行の中で、唯一、マトモに戦えそうだけど、流石に、この人数を相手にするのは無理そうな女戦士(と言っても、体は私より小さいが)のラムバー。
そして……伝説の猛将の子孫だけど、荒事はからっきしの私。
「アンギャー、あの2人を呼べ……それとお前……」
「私?」
「判ってると思うが、あの力は使うにせよ……最小限だ……」
「わ……判ってますけど……」
「おい、相談は終ったか?」
ヤクザ者達の首領格が、そう言い終らない内に……。
ラムバーが走り出す。
まだ、剣は抜いていない。
代りに首に巻いていた
轟っ……。
「あ……」
私は
「ぐげ……」
「え……何……?」
ラムバーの
「全力で走ってッ‼」
「はいいいいッ‼」
許婚の口からは悲鳴に近い返事。
「いいか、絶対にアンギャーとはぐれるなッ‼ 助けに来る連中は、そいつとしか連絡が取れない」
「ぐぎゃぁッ‼」
ラムバーの声に思わず反応して振り返り……後悔した。
「
「何で?」
さっき、悲鳴をあげたヤクザ者は……あの傷では助かっても、マトモな一生は送れそうにない。
ただし、女の私には、酷い一生になるのだけは判るが、どこまで酷い事になるかは想像すら出来ない。
そう言う場所を蹴り潰されていた。
「あぎゃっ♪」
ラムバーがアンギャーと呼んでいる鳳龍が道の一方を指差す。
この子は……鳳龍とは言っても太った人間の子供か、後ろ足で立上った子熊のような体型だ。
腕と言えば良いのか、前足と呼べば良いのか判ならい部位には翼のようなものは有るが……飾り以上の意味は無いらしく空は飛べない。
「ちょ……ちょっと待ってくだ……」
「あんた、何、もうヘバってんの?」
「もう、こいつ、置いてこうよ」
「え……えっと……す……すこしの間だけ……走らずに済むかも……しれません……」
「なに?……あッ……」
私は、その方向を指差す。
私達が行こうとしていた方向からも、ヤクザ者達が走って来る。
「な……なんか……武器になるようなものは……?」
許婚が周囲を見回すが……この違法な賭場は民間の市場に偽装されてい上に、大概の露店は店仕舞いをしている。
背後を見る。
ランバーは……控えめに言っても吐き気がするような戦い方をしていた。
道に転がっているヤクザ者達は……ある者は口の幅が倍ほどになり、ある者は鼻が無くなり……ある者は……要は、仮に命が助かったなら、死なずに済んだ事を呪うような怪我だ。
あまりの光景に、逆に冷静になれた。感情が麻痺したとも言うが……。
彼女が、あんな戦い方をしている理由が、何となく判った。
ヤクザ者が総掛りになれば、彼女を殺せるだろう。
でも、足は繋っていてもマトモに歩けなくなり、腕は残っていても何の役にも立たない単なる飾りとなり……その他、食事・排泄・入浴・着替え・睡眠・性交などなどなど日常生活に重大な支障が出る体になるのは、自分以外の誰かであって欲しい……。
私が、あのヤクザ者達の1人だったら、そう思うに違いない。
ヤクザ者達は……たった1人の……それも体格は小さめの若い女を取り巻きながら……何も出来なくなっていた。
そして……。
「ああああ……う……うそ……」
ラムバーを取り囲んでいたヤクザ者の何人かが……より楽に、より御安全に殺せそうな私に向って走り出し……。
「うわあああ……」
そして、閃光と轟音。
炎は、突如として地面から吹き出した大量の地下水によって鎮火された。
「ところで『大都』には、この刻限に
ラムバーは、うんざりした口調で、中天に輝く満月を見ながら、そう言った。
「ない……多分」
私達の服は、あっちこっち焼け焦げた上に水びたし。
市場に偽装されていた賭場も同じく。
「あと、あんたが探してた奴は、あいつで良かったっけ?」
ラムバーが指差す先には……かろうじて本人だと判別出来る……私の実家の家令の体の半分ぐらいが焼け焦げた死体が有った。
「ふみゅ〜?」
「ふみゅふみゅ?」
その声の主は……ようやくやって来た「応援」の2匹の鳳龍だった。
話は少し前に遡る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます