第26話:私がルークを救います。

ルークの治療方法は放射線治療がメインになるようだった。

確実に助かると言う保証もなく、助からない可能性も充分あった。


病院にいてもなにもできないので、先生と女の子ふたりには先に

帰ってもらった。

ソフィアさんとチャーリーとプリティスも病院にいたところで

何もでいきないってことで、とりあえず山の家に帰って来た。


「ルークはどうなるのかしら・・・」


「おばさん、ルークはきっと大丈夫ですよ」


チャーリーのそれは、なんの確信も説得力もない発言だった。


さあ、プリティスに嘆いている暇はなかった。


ソフィアさんは晩ご飯の支度をしたが、誰も食事が喉を通らなかった。

プリティスは、こんな時にこそ自分の魔法を役立てる時だと思った。


「私・・・私がルークを救います」


プリティスはソフィアさんにそう言った、そう誓った。


プリティスの魔法を一度見ているソフィアさんはその言葉に希望を持った。


ここはワラをもすがる気持ち。

ルークを助けられるならとソフィアさんはプリティスにすべてを託すことにした。


プリティスは夜の間に病院に潜り込んで病室で自分の魔法を使ってルークを

救うつもりでいた。


そう決心したプリティスはその夜「俺も一緒に行く」と言ってきかない、

チャーリーを引き連れて、真夜中に再び病院へ向おうとしたら、

ソフィアさんも家にいても落ち着かないから、ふたりと一緒に病院へ行くって

言うので、三人は車に乗って、再び夜の病院へ向かった。


病院へ着くと、プリティスはソフィアさんに車で待機するように告げて

チャーリーだけ連れて救急外来の夜間入り口に向かった。


病院の夜間入口の受付には電気がついていて、こっそり覗くと ガードマンが

ひとりいたが、受付の下を腰をかがめて通るとガー ドマンからは見えない。

まずそこをクリアした。

自動ドアが勝手に開いたが、ガードマンには気付かれずに運良く通れた。


問題はナースステーションだった。


手前で様子をうかがうとナースステーションには夜勤の看護師さんが三人いた。

そこもナースステーションを囲ってるカウンターに隠れて腰をかがめて

見つからないようにして素通りした。


そしてふたりは無事、ルークの病室に入ることができた。

ルークの部屋が大部屋じゃなく個室だったのも幸いした。


ルークの様子を伺うと、彼は眠っていた。

そのほうがちょうどいいとプリティスは思った。

眠っていてくれたほうがいい。


ルークの掛け布団を、そっと下にずらしたプリティスは、自分の持てる

すべてをルークに捧げるつもりだった。


「俺、看護師が来ないか入り口で見張ってるから終わったら言って」


プリティスはうなずいて、ルークの胸のあたりに両手をかざした。


するとプリティスの両手から淡い光が差し始めた。

それは徐々に大きくなってルークの全身を包みこんだ。


途中看護師が巡回して来たが、プリティスとメガネはカーテンの裏に隠れて

やりすごした。

部屋が薄暗かったこともふたりには幸いした。


それからプリティスのヒーリングは二時間以上続いた。

部屋中に溢れた光で、もし外からルークの病室を見た誰かがいたとしたら、

そこでパーティーかなにかやってるように見えただろう。


プリティスはルークを助けるため、全精力を注いだ。

それは生半可なヒーリングではなかった。

病気の根源を断つのだ・・・手練れた魔法使いでさえ自分の命を落とす

可能性があった。


(お願い、地球さん、また私に力を貸して・・・)


つづく。


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