第23話:ヤギの出産。

山の崩落事故から2ヶ月・・・ルークもプリティスも特になにもなく毎日を

仲良く過ごしていた。

崩落した道路は一部通行可能になりルークはすでに学校へでかけていた。


その朝、早くソフィアさんは忙しくしていた。

一番遅く起きたプリティスは階段を降りると、ソフィアさんが忙しくして

いたので声をかけた。


「生まれるんですかソフィアさん・・・?」


「あ、おはようプリス」

「そうよ・・・とうとう赤ちゃんが産まれそうなの」


「ああ・・・夕べ、パンちゃんが赤ちゃん産みそうって言ってましたね?」

「なにかお手伝いすることないですか?」


「今ね、獣医さんに連絡取ってるんだけど、留守電になってて出ないのよ」


「獣医さんはもう間に合わないかもしれないわね」

「そうなったら、うちで取り上げるしかないわ・・・」


「パンもベビーの出産ははじめてだからね・・・だからパンには自力で

がんばってもらうしかないわね」


「あなたは家にいていいわよ」

「いてもらってもすることないと思うから」


「でも・・・私もじっとしていられません」

「じゃ〜一緒に来て・・・ベンジャミンの様子を見ててくれる?」


「はい、分かりました」


そう言ってプリティスはヤギのいる小屋に急いだ。

ソフィアさんはバケツにお湯を注ぐと、あとからヤギ小屋に来た。


見るとパンが苦しそうにしていた。


「まだみたいだけど・・・いつ破水するか分からないからね」

「無事に赤ちゃんが生まれるといいんだけど・・・」


プリティスはベンジャミンを落ち着かせようと撫でたり話しかけたりして

面倒を見ていた。

なんとなくこの雰囲気を感じとるのか、ベンジャミンは落ち着かなかった。


「ごめん、もう一度獣医さんに連絡してみるから・・・」

そう言って真由美さんは携帯から獣医さんへ連絡を入れた。


どうやら獣医さんと繋がったみたいだったけど、どこかの牛が出産まじかで、

そっちで忙しいらしかった。


ヤギより一家の生活がかかってる牛のほうが優先らしかった。


「もう獣医さんはあてにはできないわね」

「私たちで、がんばるしかなさそうね」

「お昼までに産んでくれると助かるわね・・・じゃないと何もできないからね」


「パンちゃん大丈夫でしょうか?、ずいぶん息が荒いですけど」


「そうね、ヤギの出産なんて初めての経験だからね」

「・・・私はヤギじゃないから・・・ヤギの気持ちはヤギにしか分かんないわよね」


プリティスはクスッと笑った。


パンは昼を過ぎても出産しなかった。


「そのうちルークが帰ってくるわね」

「プリス・・・ルークを迎えに行っていいわよ」


「でも、パンのことも気になるし・・・どうしよう」


「そうね、私もひとりじゃ心細いからプリティスがいてくれたほうが

助かるんだけど・・・」

「ルークには悪いけど連絡してひとりで帰ってもらいましょ」


「ルークはずっと私が帰り道を補佐して帰ってたから久しぶりにひとりで

帰るって・・・倍以上キツいんじゃないかな・・・」


「たまには自力で帰って来たらいいのよ・・・プリスに甘えっぱなしでしょ」


ソフィアさんはルークに連絡して、今日はひとりで帰るよう言った。


「あ、ルーク、今日プリスは学校へ迎えに行けないから、ひとりで帰って来て」


「え?なんでって?」


「いいえ、プリスは元気よ」

「そうじゃなくてパンが今日、赤ちゃん産みそうなのよ」


「そうそう・・・夕べから怪しかったでしょ」

「そういうことだから・・・」

「じゃ〜お願いね」


つづく。



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