虹の表層、蒼の深奥

相宮祐紀

0. 偶像

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 頭のうしろに回された、細い腕。袖から感じる、薬草の静かな香りと、頬に触れるやわらかさと温度、その奥で跳ねる、脈打つ、音。

 どれくらい、こうしているのだろうか。身体を預けることも、引き寄せることもせず、目を閉じることもせず、ひたすらにこの、腕の中でどれほど。

 目の前で、揺れている。いびつでくすんで、うつくしい、亜麻色が視界を覆っている。救い主と、同じ色の髪、それがふいに離れ、腕の力がゆるむ。気がつけばすぐそばに、晴れた空のような蒼い、瞳があった。

 あたりまえのように、禁忌を踏み破るように。

 近づく。重なる。

 ずっとこのままでいて。

 わかった。

 約束して。

 約束する。

 その意味が、やっと浸みてくる。そうだ。知られてしまった。悟られて、しまったのだ。

 身体がうしろへ、ゆっくりと、沈み込んでいく。

 ああ、これが。これが、きっと。

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