19-終幕
当初の計画通り部屋の中に雪を詰め込んだ。
人数も多く、手はずを何度も直接話し合って決めていたから予定通りの時間だった。それより少し短いくらいの時間で終わった。まだ吹雪いており、帰るのも苦労するが停電していることをありがたいと思いながら全員で元来た道を引き返していった。朝早い時間でもしかしたら起きている職員がいるかもしれないから音は立てないように。雪は出来る限り落として。用意していた靴に履き替えてからの移動は素早く。
いつ停電が復旧するか分からなかったがもし、復旧してもおかしくないように先に部屋に戻るグループと寄り道をするグループに計画通り別れた。郡上と六波羅以外は急いで客室に戻った。その二人は履き替えていない靴でエントランスを歩き回る。警察に告げる予定の散歩をしてきた、風に見せかけるための行動だった。
他の全員が客室に戻った頃合いを見計らって自販機ブースに向かう。持っていた小銭で缶のジュースを買った。
「ぬるいね、まだ」
「確かにそうだな。でも監視カメラはライト点いてるっぽいな」
カメラを背にした郡上を見るふりをしてカメラを確認する六波羅。
「ついさっき復旧したとか?」
「かもな。それか電源入れ直したりしなきゃいけないのかな。俺ら映ってるのかな」
「分かんね。このまま戻るろうぜ」
「ん、そうしよう」
二つの缶を手で弄びながらブースを抜ける。どこに監視カメラがあって、どういう動きをすれば怪しくないのか。何度も念入りに話し合った。万に一つも失敗が起きることはない。
その慢心が油断を引き起こす。蟻しか通れないほどの穴から堤を崩していく。
「監視カメラにはいくつかおかしいところがあったんですよ。六波羅さんと郡上さんを覗いた方々が一斉に部屋に戻ってkるはずじゃないですか。お二人が散歩から戻って来た、としましょう。そのくらいの時間に犯行が終わっているので大体時刻としては午前四時すぎ。その時の防犯カメラの映像です」
何も動いていなかった。扉も開く様子がなく、誰かが歩いている様子もなかった。
「何がおかしいんですか?」
「気づきませんか?他のシーンは点滅しているんですよ。空気清浄機のランプが」
横に並んだ通常の映像と比べて見る。すると萬の言った通り確かに二日目までの映像はランプが点滅していた。
「要するにここは停電復旧後映っているか映っていないか分からなかったが確認したところ映っていたので画像を張り付けただけ、ってことになるんです。この時間の皆さんのアリバイはもう証明されません」
台本通り。全員はここでとある動画を見せたら自分たちは無罪にならずとも情状酌量が認められると思っていた。スマホをちらりと確認するが何もなかった。萬の方を見ると視線に気が付いた萬はにやりと笑った。
「これにて暴露終了」
【続く】
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