聴足観足読足日記
君足巳足@kimiterary
エブエブとパプリカ
エブエブこと「Everything Everywhere All at Once」と、あと「パプリカ」。
なんでこの二作から、しかもまとめて書き始めたかと言えば、どっちも「そういや観ようと思いつつもなんか観てなかったわ」枠で、二日続けて見て、どっちも正直そんなに刺さらなくて話が長くならなそうだったから、でしかなく、まあ要するに肩慣らしというか書き慣らしにちょうどいいか、というのがその理由になる。
とりあえず最初に書いておくと、そんなに刺さらなかった、というのは別に作品の出来の話ではない。というかプロフェッショナルが作っている以上、当たり前だが大体の作品は出来はいい。しかし、だからこそ十中八九刺さらない。出来がいいということで差がつかないのだから、それが普通だ。
少なくとも個人的にはそういう感覚でいる。そしてこれは「こういうことは感想の覚え書きなんかやっていると何度となく書きそうになるので初めに書いておこう」という打算で書いている。なので二度と書かない。
話を作品の話に進める。
なお、あらすじについては省略する。
(これも二度と書かない)
まずエブエブについて。
観た後、正直困ったなあと思った。困ったというのは、そんなに好きになれなかったからであり、同時に「多分おれこういうの好きだと思われてる気がするなあ」と思ったからで。可能世界の自分の力を得た冴えないおばちゃんがトンチキな絵面でアクションをやって家族との絆を取り戻すSF、お前好きでしょうと言われたらたしかに嫌いそうではない。むしろ好きそうだ。
観る前まではおれもそう思っていた。
で、観ている最中の感想としては率直に言って「で、これ観せられてどうしろって?」だった。
おばちゃんは全可能世界で最弱の、全部が半端なおばちゃんだからこそあらゆる他の自分にアクセスできるらしい。しかし娘にも同じことができる。おばちゃんが娘に負けると世界がベーグルに飲み込まれてヤバいらしい。どうやって倒すのか。アクションムービーとしての筋はこうだ。
一方で、そんな娘は同性愛者ではあるのだがそれ以前に単に反抗期に見える。夫はなんだか疲れちゃって離婚を勧められているが本人はあまり乗り気ではない、くらいしか考えていることがわからない。おばちゃんは仕事に忙殺されていてそんな二人と話をする時間もやる気もない。ホームドラマとしてはこうだ。
前者だけでも後者だけでも大して面白くなりそうではない、が、足すと目新しいだろう。それはそうなのかもしれない。
「ある種文学的な実存の悩みをトンチキアクションで片付ける」的な似たような構造の作品というと国内にはウテナとかフリクリとか化物語とかあるし(なんだかわざとらしい並べ方だ)、「そういうナラティブセラピーみたいなやつ」を指して「お前好きでしょ」と言われたらまあ、強く否定はできない。
できないのだが。
なんだかあまり興味が持てなかった。
なんでかと言えば、単にキャラが弱かったからじゃないかな、と思う。要するに、変なことは起きているが変な奴がいない映画だった。変な絵面ではあるのだが、変な台詞はなかった。そういうところが面白くなかった。おそらく優先順位の問題だ。
(ここで一つだけフォローをするなら、多分これは米国人が観ると評価がガラッと変わる部分だと想像はできる。日本人の我々が観る印象より、現地において主人公一家は「マイノリティ」であるはずだ。そしてナラティブセラピー的な作風はマイノリティに対しての方が刺さりやすいだろう)
で、ここで「パプリカ」だ。
パプリカについても、個人的には全く同じ感想を持った。変なことは起きているが変な奴がいない(まあ、エブエブよりはいる気もするが)、変な絵面はあるのだが、変な台詞がない。好きなキャラクターが思いつかない。強いて言えば粉川警部かなあ。
背景美術は素晴らしかった一方で、アクションシーンはなんだかヌルッとしていて切れ味に欠ける印象がある。色彩のカラフルさ、画面の緻密さは印象的だったが、人物の顔つきなどについてはなんだか不快な印象の方が強く、疲労した。作品を通して快と不快をトータルすると実感として不快が勝ってしまった感じがある。音楽については流石にやたら耳には残ったのだが。
あと二作に共通しての印象として「トンチキではあるのだがそのトンチキさがなんか荒々しくない」というのがある。コントロールされているというか、コントロールしきれている。個人的にはコントロールしきれていないほうが好きなのでこの点も好みではない理由か。
なんだか愚痴みたいになってしまった。愚痴は愚痴でどこかに吐き出さないと不健全な感じもするしいいかとは思うのだが、初回には相応しくなかったかもしれない。次回は書いててテンション上がるようなやつにしようと思う。
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