白銀の騎士と金色の従者①~どん底騎士はわんこな少女を従えて、不条理世界をぶっ潰す!~
狐月 耀藍
第1部 失ったものは戻らない、二度と
第XX話:彼女と共に生きるのだ、俺は!
断続的に響く
「くっ……弾切れだ! あと弾はどれくらいある?」
「ひぃ、ふぅ、みぃ……もう
「残り180発と少々か……。苦しいな、弾がなければ戦えない世の中ってのは」
俺は、彼女が差し出してきた
あまり弾を無駄にできないというのが苦しい。
この盛大な無駄遣いが生み出した「
……はずだった。
「えへへ、
「まだ終わっていない。これから終わらせるんだ。……ま、それを目論んだせいで今、自分が弾切れになりそうだってのも情けない話だが」
手にした「StG44」──
彼女の手に握られたヴァルター
……いや、自分が今後、滅ぼすことになる武具にいつまでも頼ってばかりはいられない。このまま時間を浪費しても、相手の有利になるばかり。機を作って突っ込むしかない。
「……やるしかないな。それに俺には──」
自分を鼓舞するように笑ってみせると、我が従者にして幸運の女神──金色のふかふかの髪をもつ彼女を抱き寄せる。
「ふあ──ご主人さま?」
「お前の幸運を分けてくれ。いつものことだが」
そう言って、半人半獣たる姿となっている彼女のふかふかの髪の中から伸びる、犬のような三角の耳──弾の貫通痕が痛々しい右の耳──の中の白い
「んにゅうんっ!」
びくりと肩をすくめて総毛立つ彼女の髪が、ぶわっとふくれるように逆立ち、ふかふかの髪がよりいっそうもふもふになる。これまでも数限りなくやって来たことだが、何度やっても、彼女は慣れないらしい。
いかにも犬(本人は「狼」を主張しているが)の獣人らしい彼女の、実にふわふわな髪の中に顔をうずめるようにして彼女を抱きしめると、そのにおいを胸いっぱいに吸う。
ああ、幾度となく、幾夜となく堪能してきた、彼女のにおい──その髪のにおい。
己を奮い立たせる、このにおい。
「……そんなに、
「ああ。最高だ」
「もう……。へんなご主人さま」
彼女は照れくさそうに微笑むと、俺の背に腕を回す。
「……でも、ボク、ご主人さまのこと、大好きだよ?」
「俺もだ。……愛している」
「……だからへんって言ってるんだけどね?
きゅっと、背中に回された腕に、力が入るのを感じる。
俺も、彼女を抱きしめる腕に力をこめる。
「……ご主人さま、だいじょうぶ。ご主人さまのこと、ボクが守ってみせるから」
頼もしい言葉に、俺はその髪をなでた。
……ああ。頼もしい従者にして、愛しい君がいれば。
「……そうだな、大丈夫だ」
時間にして、脈拍数十数回程度といったところか──けれどそのわずかな時間で、俺は覚悟を決める。
「──よし、行くぞ! 制圧射撃と同時に左側面! 思う存分暴れてこい! すぐに俺も突撃する!」
「まかせて!」
制圧射撃を開始した俺の背後で、彼女の
こんなところで足止めなんて食らっていられるものか!
この不条理で非情な戦いを終わらせて、彼女と共に生きるのだ、俺は!
婚約者であるミルティを奪われ、生きる意味すら見失った俺が、新たな出会いを得て再び戦いに身を投じ、人を率いて、一つの時代を終わらせようとしている。
まさか、ただのちっぽけな地方領主貴族の五男坊が、世界の運命を左右するようなことになろうとは。
『戦争くらいしか、浮かぶ瀬がない』と考えていた俺が、一人の少女のために、その戦争そのものをひっくり返すことになろうとは。
新たな出会い──彼女と出会うきっかけとなった敗北と、彼女と積み重ねてきた過程を思い出しながら、俺は
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