第12話 覚醒
~10分前~
夏芽が、その手紙を開くと弱々しい字が羅列されていた。
そして、その手紙の中には、どうやらフリーニャの行方と葉っぱの意味が書かれているようだった。
夏芽は、アキホが時間を稼いでいる間にその手紙の内容を読んだ。
***
ローリア、あなたが生きていることを信じてこの手紙とささやかなプレゼントを差し上げます。
あなたが、おそらく手にしてあるであろうその葉っぱは、人を30分間だけ覚醒させることができる麻薬のようなものです。
ここぞのピンチの時に食べて下さい。
その葉っぱは、必ず二枚一気に口に含んで下さい。
一枚だけや、三枚以上口に含んでしまうと、大変なことが起こります。
また、その葉っぱは、とある神域のみ限定で採取できるとても貴重な植物です。
むやみに摂取をするのは、やめたほうがよいです。
ここで、私がどこに行ったかについて記しておきます。
私は、その後邪帝に襲われ、なんとか結界が完成する前に逃げ出すことが出来ました。
そして、私は、一刻も早く邪鬼を撲滅できるよう、雲母の秘境を目指して旅に出ます。
もし、この手紙を読んだのならば、ローリアも雲母の秘境に来てください。
邪鬼にやられないよう、お体にはお気をつけて。
親愛なるローリア
***
と綴られていた。
その手紙を読み終わった瞬間、目の前が赤紫のオーラに襲われた。
すると、邪帝が高速でアキホの方に向かっている光景が目に入った。
「ま、まずい。助けないと!」
そして、夏芽は、迷うこと無くその葉っぱ二枚を口の中に放り込んだ。
それを口に入れた瞬間、その葉っぱは、口の中で一瞬で溶けた。
飲み込む前に口腔内で葉っぱのエキスが吸収されているのを感じた。
次の瞬間、夏芽の胸が一瞬にして大きく膨れ上がり、太もも、腕も強くなっていることを実感した。
「す、すごい…」
そうして、覚醒した夏芽は、自分の剣を掴んでアキホの方に走り、剣を一振した。
剣が振られると、黄金の波動が、赤紫のオーラを消し去り、邪帝の体を吹き飛ばした。
アキホが、腰を抜かしながら、上目遣いに夏芽を見た。
「遅くなっちゃって、ごめんね」
夏芽は、ウインクすると、横で邪帝が夏芽の方を睨んでいるのが見えた。
「お、お前は、全盛期のローリア、、、。どうして、ここに、私が、私が殺したというのに、力も全て闇に葬ったつもりだったのに……。くそ、本当の力を隠していたな…。」
邪帝は、苦しみながら声を振り絞ると、すぐに起き上がり、夏芽届かないくらい高くに浮いた。
「ま、まあいい、私がもう一度、いや、もう二度と復活できないようにしてやる」
邪帝は、杖を掲げて黒の玉を作り出した。
その黒の玉は、部屋に倒れている剣士の体から吸収した魂を固めて作り出している「邪の真髄」の技だった。
「これで、死ねぇぇぇ!!!!」
邪帝は、杖の先端を地面に叩きつけると、真っ黒な人の手が地面から生え、アキホと夏芽を襲い、二人の体は手の渦に巻き込まれた。
「きゃああああっ」
アキホはそう叫んでいたが、夏芽は、そんな状況でも、冷静を保っていた。
それは、夏芽の耳に、またローリアの声が聞こえていたからだった。
「いい、目の前にフリーニャのレイピアがあるでしょ?それを地面に突き刺すの。そしたら、その黒い手は光とともに溶けていくから、そしたら、あなたの持っている剣で刺しておしまいよっ♪」
その声の言う通りに、夏芽は、レイピアを掴み、そのレイピアに精神を集中させた。
そして、気を貯めたあと、地面にそれを突き刺した。
たちまち黒い手は、痙攣した後に、地面の中に溶け込んでいき、二人は開放された状態になった。
「何いっ?あなたたち、私の邪玉が、効かない、、、だとっ?」
邪帝が、驚いていると、夏芽は邪帝に対して笑顔でこう言った。
「さよなら、邪帝さん」
そして、夏芽は、片手剣を両手で握って邪帝の体に突っ込んだ。
バァァァン…………という音とともに紫色の煙が周りに立ち込めた。
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