第5話 コラボ配信
「どーも廃墟ダンジョン解説チャンネルでーす。たくさんの登録本当に感謝です。まだまともに解説してないのに。そして! なんと! 今回はコラボをさせていただいてます。大人気ダンジョンオーチュバーの
「おじゃましま~す!!
『おおおおおおおおおおお』
『ノ宙ちゃんあああああああああ』
『あいわらず美しい……』
『めっちゃ楽しみ』
『ちょっとよそ行きの顔やね』
『Hi』
『前回は大変だったね! 解説楽しみ』
コメントが凄いことになっている。
本当に俺のチャンネルから配信してる……。いまだに現実感がない。
「実は凸さんに、あの噂の、のじゃロリちゃんの出演もお願いしちゃってました!」
「ヒビ・レイヤじゃ。よろしく頼む。年は500歳。大人のお姉さんとして頑張るのじゃ。あと、記憶があまりないので色々と教えて欲しいのじゃ」
『くっそかわいい!!!!』
『ロリババアだったか。いいね』
『のじゃのじゃ』
『魔石の子か。のじゃのじゃ』
『幻影に見えん』
『いろいろ教えちゃう(意味深)』
『ババア!!! 結婚してくれ』
レイヤも大人気だな……。てかまた年齢サバ読んでるし。まあ、挨拶は何回も練習したこともあり上々だ。
「え~、今日は東京都東小和市に来ています。この廃墟ダンジョンは、2008年に現れたBランクの可変洋風古城型です。上の階に昇ることもできますが、地下牢から最深部を目指すルートが正規ルートです。本来の意味を持つ由緒正しい『ダンジョン』ですね。」
『解説助かる』
『思ったよりちゃんとしてた』
『今話題の廃ダンじゃん。いいね』
ノ
理由を聞いたところ、自分のチャンネル内容に興味を持ったこと、そして、始まったばかりのチャンネルの面白さを伝える手伝いをしたいということだった。
見た目の強気な感じとは裏腹に、腰は低いし気が利くしでかなりいい子だった。実際の年齢は20歳らしいがしっかりしてるなあ。俺よりもよっぽど社会人してる。
そして、レイヤをかなり気に入っているのは本当のようだった。すでにからみ過ぎて少しレイヤから警戒されている。
「何回も服の着せ替えをさせられて疲れたのじゃ……。『動画』?というのも、長々ととられたのじゃ……」
と、配信前に愚痴っていた。
今回のショート動画については、
今回配信するダンジョンの選定には苦労した。ギリギリまで空山先輩に相談していた。おかげで仕事がちょっと辛かった。
せっかくのコラボなので、ダンジョンの見栄えがよくて魔物との戦いが盛り上がりそうな場所を選んだつもりだ。
先に城に入って今回の【倍率ステータス】を確認した。いつも通りのステータス4倍を引き一安心。上振れは歓迎するが、下振れだけは嫌だった。
これで全ての能力値が40で戦うことが出来る。
ランク的にはBの能力であるが、41からAランクなので、ほぼAと言って問題ない。魔物に関しても、数値が10くらい上の魔物までは問題なく戦える。
「今日はね、最近このダンジョンで話題のメタルゴブリンをいっぱい倒していこうと思います! ダンジョン解説と一緒に楽しんでいってね!」
ノ宙さんは、腕を何回も突き上げるポーズをした。ダンジョンに入る前のお決まりのポーズだ。
「楽しんで欲しいのじゃ~」
なんやかんやでレイヤも付き合いがいい。
『はーい』
『がんばるのじゃ』
『腋が今日も叡智ですね』
『凸さんも解説がんばってー(*’ω’*)』
****
城内に入り地下牢を目指す。多くの経験値を手に入れることができるメタルゴブリンが出現するようになり、以前よりも冒険者の数が増えていた。
「現在は、地下牢までの上層フロアはとても静かです。たまに出る魔物も下位レベルの昆虫系ですかね。攻略前には中層と同じレベルの魔物がおり、たくさんの冒険者がこの上層で命を落としました。―――さて、地下牢に到着です。ここからが中層になります。メタルゴブリンが出るとしたら、ここから先ですね」
『昔は結構難しいダンジョンだったんだな』
『たまに仕事でくる。まだ魔石取れるよ、ここ』
『俺昔ここで死んだわ』
『成仏しろ』
俺は解説をし、時々出現する昆虫型の魔物はノ宙さんが楽々と倒していく。武器は大型のアックス。身長と同じくらいの斧を軽々と振り回す姿はなんとも男らしい。敵を倒すたびにコメント欄は大盛り上がりだ。
「ノ宙は強いのじゃ! お、今度はキメラおる」
レイヤは―――何も出来なかった。期待した魔法も記憶がないため何一つ使うことができない。
「捕まえたのじゃ~」
ただ、防御力に関しては物理・魔法ともにS5の能力があるため全くダメージを受けない。狩りを覚えた子猫のように、魔物を捕まえて来てはノ宙さんの前に持ってくる。
ノ宙さんもノ宙さんで、その度嬉しそうに魔物の首を落としていく。
「レイヤちゃんありがとー!」
やってることは物騒だが、幸せ空間がそこにはあった。
そんな中だった。
「コロス……コロス……」
先の通路から不気味な声が聞こえてきた。
『きたーーーーーーーー』
『こいついるからここ潜りたくないんよ』
『絶対コロスしか言わないゴブリン』
『コロシテ……コロシテ……』
「でましたね。皆さんご存じ『東小和ゴブリン』です。通称コロスゴブリン。メタルゴブリン出現前に、ここが人気のない廃ダンだった理由がこいつらです。喋れる人型の魔物は、魔物と言えどもやっぱり殺しにくいですからね」
『分かるマン』
『てか数多くない?』
15……いや20匹か。さすがに数が多い。俺も戦うか。
「私に任せて。いいとこ見せられそう」
俺とレイヤを静止し、ノ宙さんが前に出た。そうだ、ノ宙さんは―――。
「ハリケーン!!!! えいっ!!!!!」
気の抜けた掛け声と共に大型のアックスが投げられる。クルクルと回るアックスは、ブーメランのような軌道を描きながら、ゴブリンの身体を切り裂いていく。
ザクザクザクザクザクザクザっ!!!
全てのゴブリンを切り刻み、ノ宙さんの手にアックスが戻って来た。
「きゃーっち! はい、おしまい!」
『さすがやね』
『いつもよりも美しい軌道でした』
『あ~ザクザク音が気持ちええんじゃあ〜』
『¥50,000』
『アックス投げんのか……』
『初見は驚くだろうなあ』
名前:
性別:女
武器:アックス
物理攻撃力 58 S
物理防御力 51 S
魔法攻撃力 58 S
魔法防御力 51 S
スキル
1.
スキル、投擲。ノ宙さんは【ハリケーン】と呼んでいる。強力な全体攻撃だ。これこそが彼女がソロで冒険者をやれる理由だった。
コメント欄が今日一の盛り上がりをみせている。配信も探索も全てが順調だ。
このままの調子でいって欲しいと思う時は、だいたいにおいて良くないことが起きるフラグなのである。
一匹のゴブリンの首がレイヤの足もとに転がった。
「ツイニ……メガミ……ミツケタ……」
それは、絶対コロスしか言わないゴブリンが、初めて他の言葉を喋った瞬間だった。
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