第3話 同居できる理由
午後三時頃。レイヤを車に乗せ、昼間市のダンジョンを後にした。
レイヤの服はスライムにかなり溶かされてしまったので、途中の洋服店で白いワンピースを買い替えた。ついでに、腹が減ったので近くの店でラーメンを食べた。
味覚は地球人と変わらないようで、のじゃのじゃ言いながらピリ辛豚骨ラーメンを美味しそうに食べていた。
「また連れてきて欲しいのじゃ!」
ラーメンを気にいったならこの日本で餓死することはないだろう。
少し話をして分かったことは、レイヤは大部分の記憶を無くしているということだ。
「なんであの部屋で閉じ込められていたんだ?」
「分からんのじゃ」
「そもそもレイヤは何者なんだ?」
「ん~年齢は覚えているのじゃが……。あはは! 何なんじゃろーなっ! わしって!」
終始そんな感じだった。
予定通りダンジョン協会に保護を頼むことにしよう。協会には連絡済みではあるが、この状況で警察から職務質問をされたら面倒くさい。
年齢が600歳(そう思うことにした)の癖に、体形が140㎝もないくらいなので勘違いを生みやすい。
傍から見たら小学生を連れまわしている危険なおじさんだ。
レイヤの白髪は肩よりちょっと長いくらいの無造作ヘアーで、残念なくらい大人の女性感がない。そして、見事なぺったん族である。
****
昼間市ダンジョン協会は、昼間市役所の建物内にある。市の組織ではなく、あくまで
「はえ~! 本当に人間みたいですねえ」
少々ふっくら体形の30代そこそこと思われる窓口女性が感嘆の声をあげた。
「電話でも確認しましたが、行方不明者を救助したという扱いになるんでしょうか?」
できればこの場でレイヤの保護をお願いしたい。身分不明では、この日本で生活するのには支障が多すぎる。
「そのつもりだったんですよ~。警察にも確認しましたし。ただですね、よくご存じだと思うんですが、入口のカメラでステータス情報を取得してるんですよ。面白いですよー。見ます?」
そう言うと女性はタブレットをこちらに見せてきた。
名前:ヒビ・レイヤ 612歳
性別:女
武器:杖
物理攻撃力 1 E
物理防御力 91 5S
魔法攻撃力 91 5S
魔法防御力 91 5S
スキル
1.魔法攻撃系 2.魔法回復系 3.魔法補助系
「つっよ! 物理攻撃よっわ! まじで!? スキルも3構成だし、ほとんど最高ランクじゃん! てか年齢ちょっとサバ読んでんじゃねえか!」
「の、のんじゃ~ハハハ」
バレちゃった、テヘって感じでかわい子ぶらないで。まあちょっと可愛いけど。
「そこじゃありません」
「あ、すいません。持ち物……聖なるパンツ(白)……?」
「そこでもありません」
レイヤがひっくり返ってるが気にしないでおこう。
しかし、持ち物と認識されるレベルのパンツとは。名前からしていかにも伝説の防具っぽい。
ああ、種族の項目を見ればいいんですね。
「種族は……………魔石………魔石!!!!? 魔石って石ですよね!? 人間にもなれるんですかっ? そんな魔石聞いたことないですよ」
「今、上司が調べてますが、確かに人間の姿を模した魔石は初めてかもしれません。まあ、魔物に擬態した魔石はありますし、能力の発現や物の収納、制御機能や様々な特殊能力を持ってますので、今更驚きはしません。今回も魔石の幻影作成能力か生体擬態に近いのかもしれません。ダンジョン外でここまで魔力を維持するのは結構珍しいケースですけどね」
魔石の超パワーはよく理解しているつもりだ。
このダンジョンがある理由でもあり、ただの人間がステータスとスキルを持って魔物と戦える理由でもある。
「では……俺はどうしたら良いのでしょうか……?」
「ダンジョン内の採取物ですからね。通常の魔石と同様に採取物の申請をしてくれれば持って帰っていいですよ。あんな寂れたダンジョンでいい魔石を見つけましたね。今すぐ窓口でやっちゃいましょうか」
「つまり……ということは……」
「家に持って帰ってください」
なんと! この小学生みたいな『のじゃロリ』を持って帰れと!
「おお、よかったの。これからもよろしくなのじゃ! またラーメンを食べに行くのが楽しみじゃの~」
レイヤがめっちゃ喜んでいる。嫌われているよりはマシであるが、とりあえず警察さんの御厄介にならないかだけが心配だ。
そもそもどうやって二人で生活していくんだ。どうみても小学生だし……。拾った猫じゃないぞ。頭が混乱する……。
と、とりあえずだ。
「この魔石の原産地証明書をください……」
「はい、かしこまりました。発行手数料500円でーす」
レイヤの本人確認書類だ。昼間市で採取した魔石の証明になる書類だ。職質されたらこれを見せようと思う。
そして、家に帰ったら自分のオーチューブチャネルを早急に確認する必要がある。
気付かない振りをしていたが、先ほどからスマホの通知がブルブルと止まらない。もちろん全てチャンネル関係だった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます